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入国警備官が思う詐病とは?

元入国管理局職員のヨーキです。

名古屋入管におけるウィシュマさんの死亡事故について、
当時「詐病」というワードがニュースに出ていました。

また、維新の梅村みずほ議員が同様に「ハンスト」や
「詐病」だったのではないか、という発言を行い、
法務委員から更迭されたニュースも記憶に新しいところです。

「詐病」とは病気であると装うこと。

なぜ、入国警備官がそう思ってしまうのか?
働いていた私としても、理解できる部分があります。
今回は「詐病」について書いていきます。

私の勤務していた入管では、送還忌避のない被収容者は、
平均すると30~60日前後で出国していきました。

一方で、送還忌避する被収容者は、
6か月から最長2年ほど、収容され続けていました。

送還忌避者が外に出る手段は、

①在留特別許可が出る(裁判に勝つ)
②帰国する
③仮放免される

上記3つしかありません。
①が出ることは99%ありません。

②も、言わずもがな。

最後に③です。

仮放免とは、「健康上の理由」などを背景に、
一時的に収容を解く措置のことをいいます。

また、仮放免は申請によって行われます。
入管が自主的に出すものではありません。

一方で庁内には、医療体制が用意されており、
診療申出により定期の診療及び投薬を受けることが可能となっています。

実際、被収容者のうち約9割が診療を希望し、
体調不良を訴えていました。

仮放免をもらうためには、何か体調不良をアピールしたほうがいい。

これは、送還忌避者の中での共通認識でした。
といっても、ハンストに走ったり、
急に体調不良を装うといった話ではありません。

成年であれば、何かしら不調はあります。
コレストロール値が高い、とか血圧が高い、とか
そういう類をアピールしない手はないということです。

かといって、入国警備官がそれを邪険に扱うこともなく、
淡々と診療申出を受け付け、庁内診療の手続きを行っていました。

もちろん、大丈夫?といった声掛けも当たり前のように行っていました。
報道からすれば血も涙もない極悪非道の入管職員ですが、
私のいたころは少なくとも、関係性は悪くなかったと考えています。

より症状が重い場合は、庁外診療も用意されており、
入国警備官の連行により外部の病院で診察を受けることもできました。

問題は、入国警備官は医者ではないということです。

本当に症状が重いかどうかは、本人の申し出による
庁内診療を通じて、医者の判断を仰ぐしかありません。

今回、ウィシュマさんのケースでは、

仮放免するのが本人のためにも一番いいが、どうしたものだろうか?

という医師の記述が報道されていました。

医師に仮放免の決定権はない。

しかし、入国警備官は、
仮放免の積極的事由となる病気の程度の判断がつかない。

問題はここです。

本当に重病なのか?仮放免を狙っているのではないか?
どうしても、この感覚に陥ってしまうのです。

そもそも、病気なら早く国に帰って、治療受けたらいい。

これが入管の考えです。

ウィシュマさんの動画では、
病状を軽く考えてあしらっている入国警備官が映っていましたし、
国会でも動画を流せ流せとやんややんやの大騒ぎです。

「ベッドからわざと落ちてるんじゃないか」
「わざと食べていないんじゃないか」
「大げさに言ってるんじゃないか」

きっとこうした考えが現場にあったと思います。
まさか、死ぬとは、と思っていなかったことでしょう。

入国警備官にはその判断はつきません。
医者に判断してもらうしかないと思います。

その医者が、役所の予算では確保できないという問題が、
根っこにあります。

かといって、それこそ不法滞在で日本に潜伏し、
保険適用もないため、病院に行くことをためらっていた方が、
捕まった途端に税金で潤沢な治療を受けられるもの、おかしな話です。

本格的な治療は自分の国で、受けてほしいですが、
問題は難しいですね。




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