創造が頭の中にしていること

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2. 仕事

2-7. 創造が頭の中にしていること

競争の檻から脱獄する鍵は、持続的創造だといった。そういうわけで、創造について考えてみよう。

創造ってのは、「なにか新しいものごとをつくる」ってことだ。ポイントは「新しい」ということだろう。けど、「新しい」ってどういうことだろう。

新しいという言葉は、初めて見聞きしたように感じたものごとに対して使われている。つまり、そのものごとは今までになかったということだ。今までにないってことは、今までの(既存の)ものごとと違いがあると認められたということだ。

ちょっと寄り道をしよう。人間、というか生物の脳のしくみをみてみよう。

生物の脳の実体は、無数の神経細胞だ。それらがワイヤーを伸ばして、クモの巣のような網目をつくってるんだ。それで5感と呼ばれる感覚をキャッチする。眼(視覚)や鼻(嗅覚)、耳(聴覚)、舌(味覚)、皮膚(触覚)、から得た情報はそのワイヤーを伝って脳を駆け巡る。

創造を考えるときに重要なのは脳のつながりだ。脳神経のつながりは、よく出会う情報の組み合わせを反映してる。例えば、わんちゃんは飼い主さんがキッチンにいくと喜んで付いていって、いい子にお座りしたりする。これは、わんちゃんの脳の中で、キッチン、飼い主、エサ、という情報がつながっているから起きる行動と考えられる。大好きなエサをもらう前にはいつも、飼い主さんがキッチンに行き、エサを取り出す。その習慣がわんちゃんの脳神経のつながりに反映されるんだ。

少し話が難しくなっちゃったけど、君はもう創造の正体がわかる。「創造だ」と呼ばれるものごと、「新しい」と言われるものごとは、人間の脳でなにをしているか。

「新しい」という言葉が使われるものごとは、君の脳神経には存在しなかったつながりを生み出したということなんだ。人々の脳神経にはまだ存在していないつながりをつくること、それが創造だ。

具体的な例で考えてみよう。コペンハーゲンに、創造的な料理を次々とつくりだすnomaというレストランがある。そこのメニューの1つに、ヨーグルトに蟻を乗っけた料理がある。俺は食べたわけじゃないけど、映像で初めて観ただけでも衝撃的だった。なんでだろう。

さっきの脳の仕組みで考えてみよう。レストランというのは食事をする場所だ。そして、そこでは清潔さが求められる。レストランでは昆虫がとても嫌われる。ふつう多くの人々の頭の中で、レストランの食事と虫は相容れない。つまり、つながっていないんだ。nomaがやったのは、そのレストランでの食事と虫である蟻をつなげたことだ。だから驚きが大きい。これが創造だ。

この脳の話は科学的に、厳密に正しいとは言えないかもしれないけれど、創造を考えるための理解としては、十分なイメージなんじゃないかな。



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