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ダメさの塩梅

なかなかのモテ男が知り合いに、居る。

なかなかの年齢でもある。
そのせいか最近は、そのモテ数値も下降気味。
本人も感じているらしく、しみじみとぼやいていた。
それでもやはり色気といったものはまだまだ健在だ。

もうすっかり大人… いや場によってはもうジジイと言ってもいいだろうその男は、なかなかのダメ男でもある。
いい歳をして、すぐムキになる。
時間にルーズで周りに甘える。
会話を一方的に進め、キャチボールが出来ない。
まあ、上げればダメなところがそこそこ出てくるのだ。

しかし、何だか男のおれから見ても放っておけない可愛らしさがある。
何度、いかりや長介ばりに「ダメだこりゃ」と思ったことか。それでも、声が掛かれば飲みにも行くし、なんなら、こちらからも時々会いたくなったりする始末だ。我ながら呆れる。

いい男、モテる男とはいったい如何なる男なのか。
芸能界などでは、初老に近い年齢であるにもかかわらず、ストイックに身体を鍛え抜き、シュッとした佇まいの御仁も多く見受ける。
それは同性から見ても、やはりなかなかの男前に見える。
しかし、実際に異性からもモテるとなると、何かしらの脇の甘さと言うか、スキがある方がモテるものなのかもしれない。

異性にモテるということに限らず、人としての魅力は、そのダメさの塩梅が絶妙な人のような気もするのだ。
ダメが行き過ぎると、人は離れて行くだろう。
立派過ぎると、少し構えて肩がこってしまう。
そう考えると、魅力とは、人より優れたところにあるのではなく、ダメさの中にこそあるものかもしれない。

上にあげた男は、自分がダメなことを十二分に分かっている。
ダメで上等と思っているふしすらある。
だからなのか、落ち込んでいる人、弱っている人に対しても、分け隔てなくワガママを通す。
そうすると不思議に、そうした人達がむしろ近づいて来たりする。
そして元気になったりするのだ。
ただそこにはしっかりと、不器用な優しさがあることを皆が感じているのだと思う。

多分、これから一生この男のダメさに振り回されることだろう。
それでも離れようとは思わない。
それでいいと思っている。

#エッセイ #日記 #コラム #モテる #魅力

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