夕焼けビール🍻(ツノがある東館)
「今日の一杯はきっと最高のものに違いない」
俺はそう確信すると定時きっかりに会社を後にした。
クラフトビール店『空層(くうそう)』の東館の入り口には既に数人が列を成しており、暑い中入店まで小一時間程待たされた。
その間に夕間暮れの空は漆黒を纏っていく。
(はたして間に合うかな……)
入店し顔馴染みのマスターと目を合わせると彼はうんと頷いた。
『本日の夕陽の美しさは近日観ない程でしたから、それはもう濃くて澄んだオレンジ色をしていますよ』
そう言いながらいくつか並んでいるビールサーバーからジョッキに丁寧にビールを注ぎはじめた。
一層めは濃いオレンジ、二層めはそれよりも少し薄いオレンジ色をしており、それはグラスのなかで見事なグラデーションとなっていった。
「今日のビールは格別に美しい……」
マスターはふふっと笑うと八分目まで淹れたビールの上にレードルで優しく仕上げの泡を乗せた。
『昼間獲れたフワフワの入道雲です』
(了)
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