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31. 震災とグリーフと


 今から2年前、『グリーフ専門士』のオンライン講座を受けた。

【グリーフとは】
喪失体験による、さまざまな身体的・心理的・社会的な反応のことをグリーフ(悲嘆=ひたん)といいます。
大切な人(家族・友人)を亡くす死別はもちろんですが、その人にとって大切なものを喪失した体験によって起こる反応です。
離別や子どもの自立、病気、怪我、災害により住む場所を失う…など、その体験は様々です。

グリーフとは |『ことのは』

受講者は、確か私含め5名。皆女性だった。
ご兄弟を亡くされた方、親を亡くされた方、配偶者を亡くした方、恋人を亡くした同僚の役に立ちたいと受講を望んだ方。そして、婚約者を亡くした私。
その思いも喪失も、皆それぞれだった。ただそのなかに、震災により大切な方を失った人はいなかったと思う。

何回目かの講義中、講師の方からこんな質問をされた。

「東日本大震災の後、崩壊した自宅では家主の方の多くが同じ物を探していたらしいです。それが何だったか、皆さん分かりますか?」

誰も何も答えなかった。私も、何も言わなかった。

数秒経って、「それは、アルバムです」と、講師の方は言った。

住まいも、何もかもを失った時。手元にあるお金が意味を成さなくなった時。電波という通信手段すら奪われた時。人は誰でも、思い出にすがりつきたくなるのかもしれない。
震災を経験したことのない私が、分かったようなことは何一つ言えない。だけど、その人たちは‟せめても”の気持ちで、崩れた瓦礫の中から思い出を探っていたのではないか。大切な人たちとの、大切な記憶。それが形となって唯一残るのは写真や映像だけだ。悲痛な現状のなかで、せめて写真だけは手元に残したい。そんな気持ちの人が大勢いたのかもしれない。

 一瞬の出来事がきっかけで、当たり前の日常はいとも簡単に崩れ去る。震災や災害は、日常を大きく変えてしまう要因のひとつだろう。

理不尽だなと感じる。人生は選択の連続なのに、自分では選択できないことよる弊害もまた大きい。人も、人生も、まったく平等ではない。

ただ、『思い出』は日常の積み重ねの上で手に入る、その人だけの宝物であり、その人の生き方そのものだ。だからこそ、どうか日々の日常を大切に生きてほしい。大切な人を大切にしてほしい。自分を大切にしてほしい。愛情も感謝も、惜しみなく伝えてほしい。

お前ごときが偉そうにと思われそうだが、立ち直れないほどの出来事に見舞われたとき、過去や記憶、思い出だけが心の拠り所となることを、私は知っている。その時に振り返った光景が後悔だらけだったら。
そんな悲しい思いを、誰にもしてほしくない。

人生は、何があるか分からない。起きて欲しくないことが起こる可能性もある。自分ではどうにもできないくらい、悲しい出来事に直面することもある。災害や天災は、その最も大きな出来事の一つだろう。

そういった大きな出来事に見舞われた時、振り返った先にある記憶が、せめて優しい景色で溢れていることを願いたい。他人にも、自分に対しても、心の底からそう感じる。


と、本当なら、今回のnoteはここでやめようと思っていた。でも、もう一つだけ書かせて欲しい。

震災が起きて、被災地等に関わる情報を見ていたとき。
こんな注意喚起をいくつか見た。

それは『女性・子供への性被害について』。

悲しいことに、避難場所でも女性や子供に対して“そういうこと”をする人間はいるらしい。
3.11の時の体験談として、実際に被害に遭われた方、そういった被害状況を目撃したというポストも見た。

震災にあい、ただでさえ辛い状況のなかで、なぜそのような被害に遭わなければいけないのか。考えただけで腸が煮えくり返る。

ただ、そういう状況のなかでも、そういうことをする人はいる。どんな状況だろうが、どんな場所だろうが存在する。

まさかと思う人もいるかもしれない。身近にそんな被害を受けた人はいないよという人が多数かもしれない。
でもそれは、被害を受けた人が言わない、または言えないだけだ。

 忘れもしない。
私が小学生だった頃。

塾の帰りに、道でしゃがみこんで花をいじったり蟻を見たりしていた。すると突然、「おい」と呼ばれ顔をあげた。

見上げるとそこには、知らない男子が立っていた。地元の中学ジャージを着ていたから、恐らく中学生だろう。

誰だろう、何だろう。
そう思って口を開きかけた瞬間、突然顔を鷲掴みにされキスをされた。

必死に押し退けた後、左手を掴まれたがそれも振りほどいて走って逃げた。だから幸いと言っては何だが、それ以上は何もされなかった。

ただ、記憶力が乏しい私でも、この出来事は鮮明に覚えている。そして他人にはあまり話していない。

また、これもあまり詳しくは書けないが、私が今勤めている病院(小児科)にも、性被害を受けた子はやってくる。被害者のなかには、10歳にも満たない子もいる。

初めてそういった状況の診察についた時は、正直驚いた。未成年への性被害なんて、ドラマや漫画、そしてニュースで見る世界だった。だけど、実際は違った。

こんな身近(地元)で、こんな幼い子が被害を受けている。

それが現実だった。

もちろん、男性が皆そういうことをするだなんて微塵も思っていない。だからこのnoteを見て不快に感じる男性がいれば、申し訳なく思う。

だけどやっぱり、女性や子供は、力で男性には敵わない。だから、少しでも危機的状況や場面に身を置かなければならない時は、細心の注意を払ってほしい。
現に、Xではそのような投稿を何件かリポストさせていただいた。なかには、「男性全員を犯罪者扱いするな!」という投稿も見たが、避難所のようなやむ負えない共同生活の場において、女性や子供は身の回りにいる男性全員を警戒するくらいでちょうどいいと私は思う。男であろうが女であろうが、結局自分を守れるのは自分しかいないのだ。

 今回はいろいろと勝手なことばかり書いてしまいました。なかには批判を受けても仕方がない内容もあったと思います。だけど、一語一句すべて本心です。
男女問わず、どんな時も大切な人と自分を、一番に守って過ごして欲しい。私が伝えたかったことは、それだけです。

そして最後に、震災に見舞われた地域の1日も早い復興を願うと共に、被害に遭われた方々の安全を心よりお祈り申し上げます。

上記は石川県が公式に行っている義援金募集です。こちらからですと、寄付金が直接石川県の被災地に届きます。

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