私は月に一度、瀬戸内町が主催する公民館講座の絵画教室で講師を務めている。今日はその絵画教室の日だった。

皆さん思い思いのモチーフを前に、熱心に描かれている。あまり横から口を出し過ぎても邪魔になるだろうから、少し離れてクロッキーなどしながら様子を見ていた。

描く人を描く、というのはなかなか面白い。絵を描いている人というのは、画面の中だけに全ての意識を集中しているから、「自分が今どんな姿で描いているか」などということは当然全く考えていない。その、本人が全く意識していない姿に、他人の私が意識を集中させている。

そうだ。今度、皆でぐるりと輪になり、全員で一斉に右を向いて右隣の人を描く、それが終わったら全員で左をむいて左隣の人を描く、というクロッキー会をしてみるのはどうだろう。モデルを用意しなくても、参加者全員が2枚のクロッキーを描ける。と同時に、自分を描いた2枚のクロッキーを見ることができる。面白いんじゃないかな。

そんなことを考えながら描いていた。

ふやよみ　青木薫