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対談:ケツの穴論

対談人物(F:俺、A:安部ちゃん)

F:いやあ、久しぶり。

A:はい、お久しぶりです。テレワークになってから本当に事務所とかで会いませんね。

F:まあ、良いけどね、俺は。人類と一緒に過ごすのがあんまし好きでもないんで。

A:またそういう憎まれ口を(呆)。で、久々の対談ですか?

F:うん、結構重いお題なんだけど、良いかなあ。政治的と言うか社会派と言うか、何て言うか。

A:ほう。何です?

F:「ケツの穴が小さい」とか言うじゃん?

A:………。

F:何でケツの穴なんだろうなあ、って思ってね。

A:久々に招集をかけたと思ったら、そんなお題ですか?

F:(笑)まあ、慣らしだよ、慣らし。車だって暖機運転って必要だろ?

A:今日日、暖機が必要な車なんかないんじゃないですか?コンピュータ制御とかで。

F:まあ、車のことは置いといて、「あいつは本当にケツの穴が小せえな」みたいな言いかたするじゃん。

A:まあねえ。私自身はそんな古い言い回ししませんけどね。

F:やっぱ言うでしょ?でさ、その意味するところってのは、「度量が狭い」とか「セコイ」とか「気が小さい」とか「ケチ」とかだよなあ。でもさ、こういう傾向というか性格と、ケツの穴に何の因果関係があるのか?ってとこだよな。

A:あんまり無さそうな気はしますが。

F:でしょ?大体さあ、「お尻の穴が大きい人」と「お尻の穴が小さい人」って、実物を比較したことある?

A:ないですよ。人のお尻の穴なんか。自分のだって意識していない。

F:お、思い出したけどさ、中学校の頃、変わった理科教師がいてさ、「俺は子供の頃、自分の尻の穴がどーなっているのか知りたくて、鏡をこうやって覗いていたら、親に驚かれた。君たちもやってごらん」とか言ってたなあ。やんなかったけど。

A:変わった先生ですね。

F:うん、博士号か何か持っていたはずだが、行く先々の学校で校長と喧嘩して、みたいな人だったと思う。

A:面倒な人っぽいですね。

F:まあ、それは良いけどさ、何で「ケツの穴のサイズ」と「性格的な度量」が比例するというような推測というか物語というか、そんなものが成立したんだろう?ぶっちゃけ、他人のケツの穴なんか見ることないんで、これは因果を逆転させてんだよな。本当は「度量が大きい人」が先にあって、「この人、ケツの穴が大きそうだ」は、そこから推測された話でしかない。

A:逆だと、しっくり来ないからじゃないですか?「お尻の穴が小さい人は、度量が大きい」って言っちゃうと。

F:おっと、逆方面から責めてきたか。でもそれ、何かを言ったようで、何も言ってないからね。良くいるんだよなー、「逆に言うと」って返してくる奴。で、言ってること自体、逆でも何でもなかったりする。あー、やだやだ(笑)。

A:何かムカつくなあ(怒)。

F:ここはひとつ、「ケツの穴」の機能からアプローチするか。

A:まあ、通常、排便でしょうね。

F:うん、そこだよな。俺たち一般人としては。他の業界の人だと、何か入れたりするらしいけど、ちょっと考えたくないから、常識の範囲内で対談を進めよう。

A:口から食物を入れて、消化後に尻から出すってことですよね。

F:生物はチューブ構造をしてる、って奴だよな。抽象化しちゃうと、INとOUTだな。たぶん、「お尻の穴が大きい」=「OUTが(比較的)大きい」という図式が、発話者の頭にはあるんだろうな。実際には「お尻の穴の大きい人は、排便の量も多い」なんてのは一概に言えないだろうけど。

A:何か、この対談、下品なほうに暴走していませんか?

F:いや君、そこでストップしているようでは、知的向上はないよ。勝手に自粛する人々のように。

A:そんなもんですかね。

F:で、発話者が、「お尻の穴と排便量の比例研究」なんて論文を書いた上で、他人のケツの穴云々を批評しているのでない限り、ここはもう抽象的なイメージの世界に突入するわけだ。

A:結局、「お尻の穴の大きな人は、OUTも大きそうだよね」論ですね。

F:そうそう、そこのOUTって、本来的というか人体の機能的には、「大便」に他ならないんだが、ここでは「精神的なOUT量」に紐づいてイメージされる。セコイとかケチとかね。つまり「大便の量」が「その人間からのOUTである、他者への精神的な配慮、金銭の譲渡の量など」に置き換えられているわけだ。

A:まあ、イメージの世界としては分からなくもないですが………。でも、物理的には「大便」なんでしょ?

F:おっと(苦)。大便かあ。大便もらって喜ぶ人って、その業界の中でも結構、振り切っている人だよなあ。大便に直結した状態で、度量なんて言って欲しくないって気もしてきちゃうなあ。………あっ、今思ったけど、何か昔話とかに、大便が金に変わるとか、その逆とかなかったっけ?ちょっとググってみてよ。

A:私がですか?そんな履歴がブラウザに残ると嫌だな。………ああ、何かありますね。金の糞をする童子とか、犬とか、馬とか。これって何ですかね?

F:昔と今じゃあ「大便感」が違うってところもあるのかもしれんね。昔は肥料だったんだよねえ。江戸じゃあ大家が長屋の皆さんの便を売って稼いでいたとかいう話を読んだこともある。色とかも関係するかもしれないが、真逆の存在であるようでいて、「大便」と「金」っていうのは、案外近かったのかもしれんね。大便と金のイメージは、どこか文化人類学的なところでつながっているんだよ、多分。

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A:だから、ケツの穴の小さい奴という言い回しが成立する、と。

F:金をOUTできるかできないか、ってことだからね。資産を抱え込まないとか、ポトラッチすべきという意識とも関係してくるのか。そこまで言うと、話が拡散しちゃうけどね。

A:でも実体は「大便」なんですよね。

F:しつこいね、君も。まあ大らかな人に「ケツの穴が大きいですね」って言っても喜ばれる気がしない。

A:怒るでしょうね。

F:いや大らかだと思ってんだから怒らないで欲しい。

A:そこが残念。

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