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対談:高齢者のためのパソコンUI幻想

対談人物(F:俺、A:安部ちゃん)

F:この間さあ、実家の爺さんが、「パソコンが壊れた!」とか言うんで、見に行ったんよ。

A:それ、定期的にやってますね。

F:君んちはない?そんなこと。

A:うちは漁村なんで、爺さんは元からパソコンなんか使わないっすね。

F:漁村は関係ないだろ(笑)。まあ良いや。「んな簡単に壊れねえから、今のパソコンは」と思いつつ行ったわけよ。で、Winマシンなんだけどさあ、何て言うんだっけ?あのタブレットモードみたいなのになってんだ、いつの間にか。多分、姉貴の子供が来た時にいじって、そのままになってるみたいでさ。で、画面の色味が変、フォントもがたついてて、「なんだこの汚いデスクトップは?」って、許せん状態になってたんよ。まあ、全部が姪のせいではないだろうが。

A:病みますねえ、他人のデスクトップ。

F:ちょい時間かかりそうなんで、重たい筐体を担いで帰ったんだわ。で、OSチェックすると、もうセキュリティアップデートが出ないバージョンで、ログ見ると、最新のアップデートにも失敗してる状態。

A:時間かかりそうっすねえ。

F:そうそう、そこからだよ、最新のOSイメージをダウンロードして、更新して、フォントとかディスプレイの調整とかやって、「まあWinマシンなんだから、どーせこのレベルだろう」くらいの綺麗さになるのに、5時間くらいかかったか。

A:お疲れ様です。そんな調整、高齢者には対処できないっすよね。

F:うちの爺さんも90歳だからねえ。もうパソコンじゃなくて、タブレットでも良いんじゃねえの?とかは思うんだが、ちょっとしたプライドみたいなのもあるみたいでね。

A:我々だって十数年たったら、その状態ですって。新しいものには手を出したくないでしょうし。

F:だろうなあ。で、次の日に実家に持って行ってセッティングして、「ほら、元の状態になったから、ここをこうしてね」みたいに教えるんだけど、爺さんだからさあ、ダブルクリックができないわけよ。マウスを操作する手が微妙にブレてね、二回目のクリックまでに時間がかかる、かつポインターがずれるって感じで。「ん?おかしいな」って言い出すんだ。

A:シングルクリックにしたら、どうです?

F:とも思ったんだけどさあ、シングルクリックにしたらしたで、デスクトップに貼ってるアイコンを無闇に触っちゃって、要らないソフトの起動祭りになるわけよ。今回だってなんか大量のChromeが起動してた。

A:収拾つかないっすね、それ。

F:結局、メインに使う奴をタスクバーに登録して、「これを押して」ってしたんだけどね。で、思ったのが、この高齢化社会ですよ。日本の高齢化率、調べてみ?

A:私がですかあ?………2021年に、29.1%ってなってますね。ちなみに65歳以上か。

F:その比率の上昇はしばらくは収まらんよな。

A:でしょうねえ。いずれ50%近くになったりして。

F:で、思ったわけだ。パソコンを触り切れないご老人たちが、「これ、壊れちゃった。もう知らん!」って言って、机とか押し入れの奥とかにほったらかしているマシンが、今、日本国中でどのくらいあるんだろう?ってな。下手すると、買って一年もたたないようなマシンもあるかも?だよ。高齢者人口が、3640万人で、そのうちパソコンを買うのが1%として、36.4万人。本人がダブルクリックできないとか、アップデートでのUI変更とか、孫の仕業とか、猫がケーブルを引っこ抜いたとかで、壊れてないのに壊れた、って思われているマシンが、3%として、1.1万台だよ。

A:買いたたきますか(笑)?

F:馬鹿者っ!俺は社会正義に目覚めてんだよ。

A:今頃更生しても、遅い気がしますが。

F:で、俺みたいに親切かつできる子供や孫が、皆にいるわけでもないだろうから、そのマシンは永久にゴミ化して、高齢者自身「パソコンなんてすぐ壊れるもの」とか「自分はパソコン使えない」とか「あのSNSで会話して良い雰囲気になっていた、お婆さんにアクセスできなくなった」とかってことになると、なんか切ないじゃん。パソコンだってもったいないし。おかしな業者に騙されてほしくもない。

A:で、やっと今日のお題になるわけっすね。

F:そうそう、高齢者のためのパソコンUIは、いかにあるべきか?だよ。俺もちょい調べてみたんだよ。どっかがそんなモノとか情報出してないか?ってね。で、総務省が「高齢者のユーザビリティに配慮したパソコンの利活用環境に関する指針」てな文書(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/pdf/usability_3_05.pdf)を公開してんだけどさあ。

A:おお、進歩ですね!

F:何が?

A:自分で調べたのがっすよ。大抵、「君、調べて」じゃないですか、今まで。

F:だって面倒くさいじゃん(笑)。

A:それこそ、老化ですね。

F:で、ちょっとイラっとしたんだな、俺は。この資料、51ページかけて何を言ってるか、っていうと「ナニナニすること」って、本当に指針に過ぎないことを延々繰り返してんのよ。お上が、「下々は、こうしなさい」っていうお触れなんだな(怒)。何だ、この役所仕事は!ってな。

A:まあ、指針なんてそんなもんでしょう。

F:この51ページをだらだら書くっていうか、どこかの誰かに素案を作らせたのか知らないけど、その金があったら、高齢者が使いやすいようなパソコンUIのモックでも開発してみろよ、って思うじゃん。トライ&エラーだろ、そんなもの。

A:無理でしょうねえ。大体、パソコンである必要あります?タブレットとかスマホとかでも良い気がしてきました。段々。

F:まあ、俺もそう思う部分あるんだけどね(弱)。うちの爺さんもタブレットにしたら、ここまで世話に手がかからないんじゃないか?ってね。でもアレなんだよな、これまでどうにかパソコン使ってきた爺さんに、タブレットにしなさいってのもプライド傷つけるでしょ?大体、タブレットの操作とか文字入力とかを学びなおすのも、ひと苦労だしな。一応、キーボードは使えるわけだし。

A:デバイスの移行期でもあるんでしょうか?前途多難っすね。

F:まあ、とにかく、今あるパソコンも有効活用したいって上での、UI検討なんよ。さあ、良い案、ない?

A:えっ、いきなりっすね。でもまあ、OS入れ替えるわけじゃないでしょ?

F:しねえなあ、そんなこと。

A:じゃあ、Winマシン?

F:世の中、そんなもんじゃねえの?俺はプライベートでは、お似合いのお洒落なMacだけどさあ(笑)。

A:はいはい(飽)。Linuxベースだと色々カスタマイズできそうですけど、駄目でしょうねえ。

F:対応してるハードとかの幅があるからなあ、別の泥沼に足を踏み入れそうだ。ChromebookはUIとか価格とかで悪くないとは思うけど、ネット前提かつ買いなおしになるんで、却下。

A:じゃあ、我々はWinマシンの上で、どーにか戦うしかない、と?

F:困ったねえ。うちの爺さんを例に前提条件をあげると、「1. マウス操作はブレるんで最小限」「2. ミスタッチへの耐性がある」「3. キーボードでの入力が可能」「4. OSとしてタフ」「5. セキュリティ確保は当たり前」てな感じか?

A:全部は無理でしょうけどね。4, 5は Microsoftさんにがんばってもらうしかないし。やっぱWinのタブレットモードじゃあ駄目すか?

F:俺は仕事で嫌々Winマシンを使ってるけど、デスクトップモードなんで、タブレットモードってあんまり分からないんよ実際。どこまでカスタマイズできるかもとかも。でもさあ、基本、タッチ操作に最適化したモードだよね?アプリも全画面表示だろうし。タッチ操作に対応してないディスプレイだと、かえって使い勝手悪そうじゃん。

A:じゃあ、デスクトップモードの上に、なんか上かぶせするとかですか?

F:勝手に想像すると、アプリのアイコンをマトリックス状に出して、その選択はマウスじゃなく、矢印ボタンのキー操作でできると良いかなあ。実行は、Enterキー。言ったら、元々のデスクトップの上に、バーチャルかつ自由度の低いデスクトップを作って、そこにあるアプリの選択はキー操作で可能にする、って感じかなあ。

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A:今でも、デスクトップで何かのアイコン選んだら、後はキー操作で移動とか実行とか可能っすよね。

F:うーむ。ここに来て、なんかその辺にヒントがありそうな気がしてきたなあ。上かぶせのアプリを開発とかじゃなく、引き算なのか。その「引く対象」が、マウスなのか?段差なく動くマウスではなく、オンかオフかで動くキー操作で確実に「選択、実行」って方式。

A:マウスかったるいから、基本、キー操作でマシンを使う人っていますよね。

F:そこに、逆方向から到達したわけか、この対談。

A:Microsoftが公開してる、Winのキー操作ってのはありますけどね、大量なパターンの。

F:いやいや、こんな量、爺さんが覚えられるわけないじゃん。てか、俺だって一部しか覚えてないわ。

A:私、けっこう使ってますねえ。

F:ここに来て、マウンティングか?でも、この中から取捨選択して、もう一段、単純なパターンにマッピングするってのはありかなあ。爺さんがコマンドプロンプトとか仮想デスクトップとかを開く場面なんて皆無だろうし。

A:一度、マウスを外した状態で、「どこまでできて、何ができれば大体OKか?」ってのを実験したほうが良さそうっすね。

F:爺さんが使わないようなアイコンとかは、デスクトップから削除しといてね。

A:もう夜も更けました。これ、継続協議っすか?

F:積極的なオープン・ダイアローグって奴だよ。Microsoftさんからのご意見も待とうじゃないか。

A:ないない。散々罵倒しておいて(笑)。

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