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序章〜母、餞別で格好つける

夫が外国へ旅立つ前に、母の家に私たちが72日間滞在する用の僅かな荷物を置きに行きました。

すると「アンタ達が来ると狭くなるし、これとかあれとか2階に運んでくれない?」と男手が来たついでにと言わんばかり明らかに関係無い物も含めたあれこれ重いものを運ばされました。

そうしてバタバタしている中、母はさり気なく私の近くまで来てひそひそ声で言いました「餞別1万だと少ないかや?2万あればいいかや」と。
あぁ、一応そういうことは気にして娘婿にお金を渡してくれるのね、と私は少し感心しました。

一仕事終えた夫に、母は勿体ぶったようにピンクの封筒を懐から出しました。夫は餞別だと気付いて恐縮すると、母は言いました。

これから大変だろうけど、これで少しでも良いもの食べて、元気に過ごすんだよ。みんなにとって◯◯君が健康で無事に帰ってくるのが一番大事なことだからね

うーん、あまりに母の口から普段出るとは思えない台詞のオンパレードで、台本を用意していたかのように聞こえてしまった私。

帰りの車の中で、夫が封筒の中身を見せてくれました。

すると、入っていたのはなんと3万。

予め私に耳打ちしていた額より多かったので驚きました。「何か裏があるんじゃ…」という気もしましたが、もしかしたら本気で↑の台詞のように思い、気持ち増しで渡してくれたのかもしれない…と頭の隅で思いました。


ところが後日、一応確認も含めて「◯◯君に結局3万も渡してくれたんだね」と言うと、

母「はあ?! 3万?!?!

私「えっ…」

母「そんなに入れた覚えないよ?!

私「そういえばピン札だったし綺麗に重なってたかも…」

母「マジ〜〜〜?!超超ショックーーーー!!!間違ったーーー!! お前一万返せ!!!

私「えぇ……(困惑及びやっぱりかという気持ち)」

すったもんだの挙句、結局、生活費という名目で私から1万を取り返した母なのでした。なんとかそれで手打ちにしてくれたので私的にはまだ良いスタートのように思いました。


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