見出し画像

第4話:薔薇窓

📚幻冬舎ゴールドオンライン 話題の本.com
モガの葬列』毎週月曜日に更新中

連載4話目についての感想と補足。
麗しきステンドグラスの世界、没設定の経緯、そして恋文の返事あれこれ。


薔薇窓とマリア様

小夜をして朴念仁と言わしめる恭ですが教会のステンドグラス、特に薔薇窓には珍しく執心していました。これは彼が烏丸家に来る前、生後間もなく教会に捨てられていたためです。
教会の営む孤児院で育ち、歳七つで小夜の父に外国語の素質を見込まれ引き取られますが、それは今で言う養子縁組ではありませんでした。
親の愛を知らずに育った恭にとっては、薔薇窓から注ぐ光とマリア像の微笑みこそが朧げな母の記憶の全てなのでした。

ステンドグラスの魅力

大正時代の作品を見るに、絵画的なアール・ヌーヴォー、シンプルでスタイリッシュなアール・デコ、そして独特な味わいのある大正ステンドグラスと種類も豊富です。
国内最古のステンドグラスといえば大浦天主堂(長崎県)が有名ですが、東京に限り調べてみるとなかなかイメージに合致する教会が見つからず…震災の影響もあってか、昭和に入り建築されたものが多い印象を受けました。

第4話のキーワード『薔薇窓』は名前の通り中心から外側に向かい、放射線状に花弁が開く(どちらかと言えばダリアのような)円形のステンドグラスです。
国内では明治村にある聖ザビエル天主堂のものがダイナミックで一見の価値ありだと個人的に思います。ただこれも昭和に移築されたもののため『大正時代の東京にある薔薇窓を持つ教会』はやむなくフィクションとなりました。
クールな恭のイメージに合わせ、ノートルダム大聖堂のような青・紫系統を想像して書きました。また教会ではありませんが、東京ならば旧岩崎邸や鳩山会館のものも荘厳で参考になりました。素敵ですよね…!

竜さんは元々シスターだった

恭に叶わぬ恋をした竜さん…実はプロットの段階ではシスター(女性)でした。ただあの恭が相手ではあまりに可哀想な展開になってしまうため、本作初のコメディリリーフ竜さんが誕生しました。
男が男に惚れる世界に生きる彼ですが、恭については性格以前に完全に一目惚れでした。笑
恭は髪や瞳が栗色のややエキゾチックな男前で、背も高く人目を惹きつけやすいタイプですから自然と目で追ってしまったのかもしれません。

「やくざ者の、それも同性の自分が急に迫れば驚かせてしまう。しかも相手はまだ学生の身なりをしているのだからどうもこうも…とりあえず気持ちを伝えてすっきりしよう!」という短絡的な動機で恋文をしたためました。
当然学はなく、めちゃくちゃな文章をぐちゃぐちゃの字で書いた一世一代のラブレターを恭は根性で解読したそうです。
余談ですが竜さんの台詞は声に出して読みたいほど、書いていて面白かったです。

恋文の返事について

これはいつか4.5話にしたいと思っているのですが、恭は本当に水銀先生に相談しています。ただ「僕は医学部卒の理系だから専門外だ。作文ならば文系のお前の方が得意だろう」とあっさり振られてしまいました。
こんなことを真面目に相談する恭を弟のように可愛く思う反面、トリッキーな色恋沙汰に巻き込まれまいと先生も必死です。笑
二人の攻防などつゆ知らず、竜さんは乙女のようにときめきにあふれた一週間を過ごしたのでありました──

『モガの葬列』はチャレンジ作

第1話では『リライト』、第2話では『詩的表現』、第3話では『天気と明暗の表現』というように毎回ひそかに自分なりのチャレンジテーマを設けています。
今回は複数の要素がありまして、『登場人物(恭)の掘り下げ』『音の表現』『大衆文学風』を意識し執筆しました。
幸運にも感想を頂く機会がちらほらありまして、しばしば絵画的というご評価を頂くことが嬉しくも不思議でありました。そこで「実験的に音を意識して書いてみよう」となったわけです。

また恭の人物像は1話目であまりに無愛想になってしまったので、竜さんというカワイイおじさんを置いて意外な一面(?)を引き出そうという狙いがありました。結果は上々で、恭という人物をぐっと動かしやすくでき満足しています。
ちなみにあの長台詞は「変に期待させては互いに苦しむので完璧に振らなくては」という使命感と、「女みたいに扱われた」というショックから出たものでした。小さい頃から可愛いなりの苦労があったのかもしれませんね…

さて次回5話目の課題は『食べ物の表現』です。
飯テロと字数制限の戦いをお楽しみに。
ご精読ありがとうございました!


▼過去のまとめはコチラ

https://note.com/fybys1_ayu/n/n952e20315ea7

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?