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I am deaf, but not mute.

どの業界にもレジェンドと呼ばれる存在がいて業界をリードしたり強い影響を与えてくれますが、スケートボード界 にとってそれはTony Hawkであると言って過言ではないでしょう。そんな彼から今までの慣例を覆す驚きの発信があったので、その背景にある美しいストーリーをぜひ紹介させていただきたいと思います。

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Grab:グラブとは何か?

予備知識として、ここで話題に挙がっているのは"Grab: グラブ"です。これはその名の通り「板を掴むこと」です。ただ掴むのでは無く「板をどう掴むかでスタイルを表現する」ことだと思ってください。これにはいくつか種類があり、「どの手」「どこ」を掴むかで分類されています。
これをエアートリックの中に織り交ぜることで様々なスタイルが表現されることになります。後にスノーボードでも同様の呼び名が適用されています。

代表的なものを少し紹介します。左足を前にして板に乗る(レギュラースタンス)場合、左手が「前手」、右手が「後ろ手」になります。掴む位置は基本的には両足の間で、爪先側(トゥ)とかかと側(ヒール)の2種類です。

- Indy: インディ
 
--> 「後ろ手」でトゥ側のデッキを掴む
- Mute:ミュート
--> 「前手」でトゥ側のデッキを掴む
- Stalefish: ステールフィッシュ
--> 「後ろ手」でヒール側のデッキを掴む
- Melancholy/ Melon: メランコリー/ メロン
--> 「前手」でヒール側のデッキを掴む

Muteグラブはやめて、Weddleグラブにしよう

さて、本題です。先ほど紹介した2つのグラブ:Muteグラブについて、Tony Hawkはこんな提言をしているのです。実際に彼のインスタグラムに何て書いてあるのか見ていきましょう。

For nearly 40 years, we’ve shamelessly referred to this trick as the “mute” air/grab. Here is the backstory: around 1981, a deaf skater and Colton skatepark local named Chris Weddle was a prominent amateur on the competition circuit. 

約40年もの間、恥知らずにも僕たちはこのトリックを"mute" エアーだとか"mute"グラブと呼んできました。ここにはこんな背景があります。1981年ごろ、聴覚障害を持ったスケーターで、Colton skateparkのローカルであったChris Weddleは、有名なアマチュアコンペティター(競技者)でした。

The “Indy” air had just been created & named so somebody proposed that grabbing with the front hand should be known as the “Tracker” air. Others countered that Chris was the first to do, so it should be named after him. They referred to him as the “quiet, mute guy.” So it became known as the mute air, and we all went along with it in our naive youth. 

"Indy"エアーはちょうど名前が付けられたところだったから、誰かが前の手でグラブするのは"Tracker"エアーにしようと提案した。でも他の人たちはChrisが最初にやったから彼に因んだ名前にするべきだと反対した。Chrisは「物静かで何も言わない男」だと思われていたので、この技は"mute" エアーとして知られるようになり、僕らはそれと共に若く純真な時期を過ごしてきた。

In recent years a few people have reached out to Chris (who still skates) about this trick and the name it was given. He has been very gracious in his response but it is obvious that a different name would have honored his legacy, as he is deaf but not lacking speech. 

最近になって、いまだにスケートを楽しんでいるChrisに接触してこのトリックやネーミングについて連絡をとった人たちがいた。彼はとても親切に対応してくれた、でもそこで分かったのは別のネーミングの方が明らかに彼の軌跡を称えることができたということ、なぜなら彼は聴覚障害を持っているけれど、話せないわけではないからだ。

I asked him last year as I was diving into trick origins and he said he would have rather named it the “deaf” or “Weddle” grab if given the choice. His exact quote to me was “I am deaf, not mute.” 

昨年トリックのルーツについて深く調べていたときに彼に尋ねたとき、彼はもし選ぶ権利があるなら"deaf"もしくは"Weddle"グラブにする方がいいと答えてくれた。彼は明確に示してくれました、「私は聴覚障害者だ、でもmuteじゃない」。

So as we embark on the upcoming @tonyhawkthegame demo release, some of you might notice a trick name change: The Weddle Grab. It’s going to be challenging to break the habit of saying the old name but I think Chris deserves the recognition. Thanks to @darrick_delao for being a great advocate to the deaf community in action sports, and for being the catalyst in this renaming process. I told Chris tecently and his reply was “I’m so stoked!” And then he shot this photo in celebration yesterday.

だから、僕たちはもうすぐリリースされる toneyhawkthegame デモにこれを積み込みました、君たちの中にはトリックの名前が変わっていることに気づく人もいるだろう。これは"Weddle Grab"だ。昔からの慣習や言い方を変えることはチャレンジングなことだけれど、僕はChrisにはその認識を受けるに値すると思う。聴覚障害者のアクションスポーツを代表しているderrick_delaoに感謝しています、彼はこの名前を変更するプロセスを強力に進めてくれました。僕は最近Chrisにこのことを話しました、すると彼は
「超嬉しいよ!」と言い、昨日お祝いにこの写真を送ってくれたんです。

自分たちで偏見や間違った慣習を打ち破る

これに倣ってFIS(世界スキー連盟)もこのグラブの名前を変えるようです。
※少しややこしいですが、オリンピックに関わるスノーボードの大会はスキー連盟の管轄なんですよね。これはまた別のお話です。

多様性や自由を重んじる横乗り文化の人々だからこそ、このような間違った認識や偏見を正すことをすんなりと受け入れることができるのでしょう。
いずれにせよ横乗りスポーツを楽しませてもらっている私たちは、この技のオリジナルであるChris Weddleの名誉のために、何十年にも渡って続いてきた慣習を変えようという動きがあること、その裏にあるストーリーを知っておくべきかもしれません。

それでは。

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