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北の旅人 2022春 小幌駅探訪記

GWの5/3に初めて訪れた「日本一の秘境駅」こと小幌駅。
地元民なので特急や鈍行で何度も通過していますが降りるのは今回が初めてでした。
1ヶ月ほどの時差投稿ですが、詳しく綴ってみようと思います。

豊浦駅出発

今回はいつもお世話になっている地元の先輩と2人。豊浦駅で待ち合わせをして、豊浦14:48発長万部行の普通列車に乗り込みました。上り下り合わせて1日6本の普通列車のみ停車する小幌駅。今回はその6本のうち、最も滞在時間が短い初心者向けのダイヤでした。

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JR通学をしていた高校時代が懐かしい…
当時お世話になっていた国鉄時代からのキハ40系はすでに引退。
2020年3月からはディーゼルエンジンが発電する電力で走行する一般型気動車H100形「DECMO」(デクモ)が運行されています。
走行音は静かだし、電光掲示板だし、トイレは綺麗だし、
つい数年前とはいえ自分の高校時代とは隔世の感があります笑笑
GWということもあり車内はけっこう混んでいました。

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豊浦を出発し大岸、礼文と海岸沿いの漁師町を通過すると小幌駅。
30人ほどの乗客が一気に下車。
必ずしも鉄道マニアな人ばかりというわけでもなく、一般観光客の方々で賑わっていました。沿線の他の駅よりずっと賑わってる…笑笑笑

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トンネル同士の切れ目約80mほどの区間に二線のホームがあり、三方は崖に囲まれ、一方は海に通じている小幌駅。周辺に民家は一軒もありません。
駅のある谷の上には国道37号の橋脚が通っていますが、国道から降りるにはちょっとした登山道。ヒグマの危険や藪漕ぎなどが求められ、一般の人が歩く道ではなく…(詳しい方と近々歩いてみたいと思っている) 
まさに鉄道でしか行けない「秘境駅」なのです。

かつて室蘭本線が単線だった時代、列車行き違いのための信号場として開設されたのが小幌駅の始まりです。今ではコンピュータ制御で行われる列車への信号も当時は全て人力。多くの鉄道職員の方々が貨物の運搬に働いていたそうです。
そもそも噴火湾沿いの虻田~豊浦~長万部間は海沿いに断崖が続く交通の難所。かつては「礼文華山道」なる険しい山道を越えなくてはならなかったらしい。(礼文華山道についても興味があるので、詳しい地元の方々と歩いてみたい)

自ずとトンネルをたくさん掘る必要があったため、伊達から長万部に抜ける海沿いルート(長万部町静狩~伊達紋別)が開通したのは1928年(昭和3年)と北海道の鉄道としてはかなり遅いことが分かります。このルートが開通したことで札幌~函館を結ぶ鉄路の主役は函館本線の通称山線区間(小樽~倶知安~長万部)から室蘭本線へとシフトしていくことになるのです。
その後、複線化工事の完了、信号場の無人化を経て駅に昇格。

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室蘭方向にある3つのトンネルのうち真ん中は開業当初の単線トンネル。
トンネルの中で上り線と下り線が交差する形になっていましたが、複線化工事の完了により不要となりました。室蘭方向に3つ、長万部方向に2つというアンバランスなトンネルの数が信号場として建設されたことを示しているそうです。

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今回は40分の滞在時間。まずは駅を降りて海岸へ向かいます。
駅の保線区詰所兼倉庫から西側のルートをしばらく進むと、「美利加浜」が見えてきます。ロープを使って降りていく心細い道のため、今回は浜を見下ろす高台でストップ。

文太郎浜

再び駅に戻り、200mほど坂を下ると海に出ます。
この浜が「文太郎浜」。かつてこの浜に漁場を構えていた漁師の名をとってそう呼ばれています。かつての小幌の浜は豊饒の海であったらしく、信号場時代は鉄道に乗って釣り客も多く訪れ、釣り客相手の民宿まであったらしい。
浜自体は砂浜というより丸い小石がゴロゴロ転がっていました。
おそらくかつての番屋や民宿だったと思われる基礎の跡も見られました。

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岩屋観音

駅からもう一つの小道を進むと、岩屋洞窟があり洞窟内には江戸時代に旅の僧「円空」が掘ったとされる観音像が安置されています。小幌を象徴する場所である、岩屋洞窟。
しかし今回の滞在時間は40分…。やむを得ず途中で引き返してきました。
国道からでも、JRでも、再び再訪したい!

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40分の滞在後、小幌駅15:50発東室蘭行の普通列車に乗り、小幌を後にしました。列車がトンネルの中から小幌駅に近づくと、トンネル内の空気が押し出され独特の音と雰囲気が小幌の谷に響き渡ります。
かつてのSLの時代なんかはどんな音がしたんだろう。

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16:09、豊浦駅到着。第1次小幌探検の終了です!
同行してくださった先輩、ありがとうございました!

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北の無人駅から

けっこう小幌駅について詳しく書いてきましたが、GWに訪れた時点ではここまで詳しかったわけではありません笑
歩けば歩くほど謎が深まったこともあり、個人的にいろいろ調べていると、とてもいい本に巡り会うことができたのです。
作者は「こんな夜更けにバナナかよ」の方です。

「小幌駅が載っている」というだけで最初は読み進めていましたが、
ただの鉄道マニア向けの本とは一線を画すクオリティの高さ。
室蘭本線の成り立ちから「文太郎さん」の生涯、信号場時代の小幌駅で働いていた元国鉄職員の方への聞き書き、さらには噴火湾におけるホタテ養殖の歴史…といった盛り沢山な内容。
小幌以外にも、道内各地の駅のエピソードを通して北海道の姿を描き出した秀逸なルポルタージュ。北海道でローカルに携わる方であれば、一度は読んで損のない作品だと思います。
「北の国から」好きな方であれば、間違いなく刺さるはず…笑

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掘れば掘るほど面白い小幌駅。
せっかく近隣に住んでいるので、再び訪れたい場所です。

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