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日本はエシカル消費先進国になるのか?

はじめに

エシカルな暮らしは「日本をエシカル消費先進国にする。」というビジョンに挑戦しています。
このビジョンに対して、言われる言葉ナンバー1が「そもそもエシカル消費の市場はあるのか?」です。 特に刺さったアドバイスは「〜にする。」の動詞ではなく「〜になる。」の状態の説明が大事だというものです。スタートアップのリソースは限られるため、自ら時代をつくるのではなく、時代の大波が来たときに乗りこなし、沖にいられることを説明できることが大切です。
今回は「日本はエシカル消費先進国になるのか?」に対する持論を書いてみようと思います。

そもそもエシカルとは?

「エシカル」は日本語に直訳すると「倫理」となります。倫理は道徳との違いを知ると理解しやすいです。道徳は「個人的な正しさ」なのに対し、倫理は「社会的な正しさ」を表します。
「社会的な正しさ」は時代ごとに変化するため、100年前の倫理観と現代の倫理観は異なります。「エシカル(倫理)= 時代ごとに人類が合意したルール」なのです。
現代の倫理観は、気候変動やゴミ問題、貧困格差等の「社会課題」が顕著になり、「人類の持続可能性」を軸に形成されています。「SDGs」は、現代の倫理観をわかりやすく17のアイコンで表した概念と言えます。
この前提を踏まえて、エシカル消費を普及させるために大切なことは何か、考えていきます。

エシカル消費の検討順序について

弊社は国内最大級のエシカルショップ「エシカルな暮らしLAB」を2年以上運営しています。有楽町マルイ6階に常設店舗を構えつつ、オンラインストアでも販売を行っています。
累計3万人以上にご購入いただいている当ショップの運営を通して得られたインサイトを分析すると、消費者がエシカル消費をする際は、その多くが以下の順序で検討されます。
①モノ共感(デザイン性→機能性)
②コト共感(裏側の透明性(信憑性)→社会課題解決性→ユニーク性→ストーリー性)
③ヒト共感(人柄(推し対象))

この大項目3つ小項目7つから、日本でエシカルブランドが成功するために必要な要素を探ってみましょう。

本物のエシカルブランドであるために

「エシカル」や「SDGs」といった言葉の認知が広まるにつれ、うわべだけの環境活動「グリーンウォッシュ」が問題になっています。これからの時代で勝ち抜くには、本物のエシカルブランドとうわべだけのエシカルブランドの違いを理解しておかなければなりません。
冒頭で述べたように、現代の倫理観は人類の持続可能性を軸に形成されているため、本物のエシカルブランドであるためには、②の「社会課題解決性」が必須です。
また消費者視点で考えると、エシカルブランドとして市場に受け入れられるためには、見せかけではなく本当に社会課題を解決しているという信憑性が必要なため、②の「裏側の透明性」もなくてはなりません。
「リサイクル」「無添加」「オーガニック」「天然由来」といった要素だけでエシカルを謳うブランドが増えていますが、社会課題解決性と裏側の透明性が明確でなければ、本物のエシカルブランドとは言えないのです。

エシカルブランドの成功に必要な要素とは?

真のエシカル消費とその他の消費を分ける要素として特に重要なのが、②の社会課題解決性と裏側の透明性という話をしました。
しかし、ブランドの売上をつくっていく観点からすると、②のエシカル要素だけで売れることはなく、①はすべての物販において必要不可欠です。いくらエシカルでも、デザインがダサく、使い勝手が悪ければ、購入を検討する段階にすら入りません。①をクリアしてはじめて、②③に興味を持ってもらえるのです。
そのうえで②③は、デザイン性・機能性が優れた大手ブランドと異なる要素をつくり、そのブランドを選ぶ理由をつくるための大切な要素と言えます。

本物のエシカルブランドの中での差別化戦略

本物のエシカルブランドがあふれたときに、重要度が増すのが②のユニーク性とストーリー性です。
②のユニーク性は、ブランドとして解決に取り組んでいる社会課題の稀少性やそれに対する解決策の斬新さ等ではかられます。市場がコモディティ化していく中で強力な差別化要素となります。
②のストーリー性も大切です。裏側の透明性、社会課題解決性、ユニーク性のこだわり(付加価値)が大衆に広がっていくためには、すべての人が映像化できて、人に話せるストーリーが必要不可欠です。素晴らしい取り組みでもストーリーが弱いと売れないので、ブランディング・マーケティングのフェーズで徹底的につくり込む必要があります。

エシカル消費の本質は「ハートフル体験」

①を大前提とし、なぜ②、③まで徹底すると大手ブランドよりも選ばれるブランドになれるのかまとめていきます。
まず、②の要素がわかりやすく伝わるブランドは、お客さまが「貢献感」を実感でき、幸せな気持ちになれます。②の徹底を通じて生産者(ブランド)のこだわりが見える化され、1つのモノづくりに対して途方もない苦労をしながら消費者目線も忘れずに考え抜いている「プロセス」が、人の心を動かすと考えています。
裏側の透明性を担保することによる副次効果として「ハートフル体験(こだわりの見える化)」が生まれ、ほかの商品よりも価格が高くても選ぶ理由になるわけです。
また、エシカル商品の価格がエシカルでない商品と比べて高くなってしまう正当な理由も、裏側の透明性を担保することで確実に伝えることができます。逆に言えば、価格が高くて裏側が説明できないエシカルブランドは、納得感に欠けるため、選ばれないと考えています。

ヒト共感のメリットと注意点

①のモノ共感、②のコト共感に加えて、③のヒト共感も訴求できると、いわゆる”推し活”の対象となりファン化→LTVの最大化を促せます。ただ、俗人化はリスクでもあるため「特定の1人」ではなく「働いている中の人」が推しの対象となる見せ方が良いです。
エシカルブランドではありませんが、「働いている中の人」にファンをつけている成功事例としては、北欧、暮らしの道具店が挙げられます。スタッフがECブログやSNSで個人のエピソードや考えを発信し、熱狂的なリピーターを生み出しています。
①、②、③がすべて揃ったエシカルブランドは、初回購入、継続購入どちらも叶えることができるため、確実に事業成長していくと考えています。

「ハートフル体験」は今後の物販のメインストリーム

ハートフル体験で商品が売れていくことは、今後の物販のメインストリームなのではないかと考えています。
OEM対応工場が増加し、ノーコードでECがつくれるようになったことから、誰でも簡単にブランドをつくれる時代になりました。
①だけを満たす商品はすぐに陳腐化してしまうため、結果として資本力と技術力で過酷な競争に勝てる大手ブランドが選ばれる構造になっています。
一方で、近年のクラウドファンディングの市場規模の成長からわかるように、商品・ブランドの背景や込められた想いまで知る「ハートフル体験」を通じて購入される方が増えており、②・③の重要性が高まってきています。
②・③までこだわるには、「裏側の透明性の担保」の要素は欠かせず、裏側をすべて見せた際にエシカルではないプロセスが見えてしまうと、かえってデメリットに働くことから、ハートフル体験をつくりたいブランドは必然的にエシカルブランドになるのです。
その点、大手ブランドの「長くて複雑な大量供給のサプライチェーン」よりも中小規模ブランドの「短くてシンプルな少量供給のサプライチェーン」のほうが②・③にこだわりやすいため、エシカルブランドが小売のメインストリームとなり、これからの社会課題解決型の小売を実現する未来を担っていると考えています。
将来的にはエシカル消費市場と一般消費市場の境目が曖昧になっていくため、「そもそもエシカル消費市場はあるのか?」という問いがナンセンスになるのです。

なぜ日本がエシカル消費先進国「になる」のか?

最後に、なぜ日本に可能性があるのか?について説明します。
海外のエシカルブランドの担当者や海外在住の方と話す際に言われるのが、日本のモノづくりのレベルの高さです。日本人のモノづくりへの繊細さ丁寧さはカルチャーであり、他国では真似できない強みだと考えています。
海外だとデザインの奇抜さだけで売れますが、日本だと機能性、つくりの良さ等もシビアに見られるため、進出しにくいという意見も良く聞きます。
そんな中、日本で商品展開をしているエシカルブランドは日本人のシビアな目をクリアして選ばれるブランドなので、結果として高品質な商品になります。モノづくりの強みがあるからこそ、日本から世界的に選ばれるエシカルブランドが次々と生まれる未来を実現できます。
日本の中で技を磨き、結果として海外からも注目され、最終的にグローバルエシカルブランドの聖地となれば、日本がエシカル消費先進国になっている状態と言えます。
また、日本が島国であり、環境要因として社会課題を自分事化しづらいという点からも、②のコト共感・③のヒト共感よりも先に、①のモノ共感を重視することが大切だと考えています。海外では、友人やご近所さんに他国の人が居ることは当たり前ですが、日本だと日本人の友人やご近所さんに囲まれていることが多いです。友人やご近所さんが社会課題の当事者のバッググラウンドがあると自分ごと化しやすいため、環境要因的に自分事化が難しいことは仕方のないことだと言えます。
その点、①のモノ共感は全消費者・全人類の共通価値なので、①を磨くことが結果として日本がエシカル消費先進国になるために必要不可欠なのです。

エシカルな暮らしの役割と想い

来たる未来のため、エシカルブランドのオーナーの熱量がロスなく形になるお力添えのために、エシカルな暮らしは存在しています。そして、エシカルな暮らしとしても①②③をすべて満たした商品開発には積極的に取り組んでいきたいと考えています。
エシカル消費・ハートフル消費が当たり前となった社会においては、社会課題に加担してしてしまう現在の消費構造が抜本的に変わっているはずです。
これから挑戦をするすべてのエシカルブランドにチャンスがあり、流れとして、エシカルではない既存ブランドもエシカル化不可避の時代が到来することが明確である点、エシカルな暮らしはそんな未来において沖にいられるよう、フルベットしたいと考えています。
最後に、私の個人理念として「ありがとう量の最大化」を掲げています。
貢献感の追求が幸せの追求であると本気で信じているからです。 エシカル消費の普及によって、作り手、売り手、買い手、社会、未来に対しての貢献感を得られ、幸せの総量を最大化するサプライチェーン(プラットフォーム)を構築できると考えています。
そんな未来を皆様と一緒につくれましたら、本望です。 ぜひ2024年もよろしくお願いいたします。
エシカルな暮らし運営・株式会社Gab代表取締役CEO山内萌斗

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