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パリーブレストーパリ出走③ タンテニアック354㎞地点

■フランスの水道水は美味しかったが
フランスでは水道水のお水がとても美味しかった。海外の水道水は飲むとお腹壊すと若いころ言われていたが、最近は少し事情が変わってきているようだ。こっちでロードレーサーとして頑張っている福田君から「水に困ったら普通に蛇口ひねったら美味しいお水が飲めますよ」と聞いて、パリの公園で試したら美味しかったし、ホテルの洗面所のお水も美味しかった。まるでエビアンのようで。とっても安心していたしPBPの最中にチェックポイントなどで普通に蛇口をひねって飲む水はとても楽しみだった。ただヴィレンヌで入れたお水は若干薬の味がした。お腹を壊すことはないだろうけれど地域によって水は違うんだろうなあと。暑い時期なので水はとっても大切なものなので、この薬の味になってしまったら「ちょっと残念だったな~」と思う事にしよう。

■2台のリカンベント
時刻は既に日付が変わってい時間であった。リスタートはやはり体が重たい。速度もある程度ゆっくりめにして、とにかく自転車を先に進めようとしていた。景色は全く分からず、ずっと暗闇の中の走行であったが、時折小さな街の中を通るのは少しホッとする。街から出ようとした時に、リカンベントの2人に抜かれる。リカンベントとは低い位置にあお向けに寝た状態で走る自転車の事を言う。リラックスした姿勢で走り、低い分空気抵抗は小さい。抜いて行った彼らの腕にはファッショナブルなのタトゥーが掘られていた。おそらく30代か40代ぐらいで参加者の中では若い方の方だ。私のゼッケンを見てどこの国籍か気にしていたようで、ジャポネと呼ばれる。暗い中とても目がいいなあと思った。「頑張ろうぜハッハッハ」と言ってグッドラックみたいなことを言われた。彼はおそらく挨拶のつもりで、フランス語で喋りかけようと思いながらも、国籍を見て英語に変えて話しかけてくれている。PBPではそんなシーンがよくあった。 リカンベントは登りは苦手そうな印象があったが、この二人は会話しながらすーっと一緒に登っていった。私はパワーが出ずに遅れていき赤いテールランプは少しずつ遠くへ行ってしまった。

■マルコさん
しばらくすると少しずつ私の足も回り始めてきていった。あとからそこそこ早い10人ぐらい集団が現れて乗せてもらえることが出来た。黄色の安全ベストとオレンジ色の安全ベストで現れていて。スタートの時にいたタキシードに蝶ネクタイジャージのダンディさんもいた。更にこの中のメンバーを見るとフラットバーロードバイクの白いイタリージャージを着たイタリア人がいる。おそらく歳は50代ぐらいで体毛が濃く筋肉質だった。スタートからこのおじさんは幾度となく現れ、ガンガンとペースを上げてくれていたのでよくわかった。ゼッケンプレートを見る余裕もなく名前は分からなかったが、彼にはよく会うので私の脳内では彼の名前は「マルコさん」と呼んでいた。マルコさんとは特に挨拶も会話もしていなかったが、横にいるジャポネにまた会ったかぐらいの認識はあったのだと思う。

■赤い星たち
真っ暗く街灯もない中、ずっと浮いた丘の影をを走っていたようだった。なんとなく上昇しているのが分っていて、途中等間隔の3つの赤い光が繋がって見える事があり、前方にも3人ブレストへ続く赤い星たちと思っていた。それはとても幻想的な風景に見えた。ただ、なかなか近づくこともできなかった。テールランプだと思って見えていたものは、遠くにある鉄塔などの赤い光であって、それらがいくつか重なって集団に見えたようだ。夜の走行は色々と想像ができ、またそれが楽しい。空気が更に冷んやりして、集団の中で聞こえる息遣いの中、少し感覚に気遣って上を眺めてみると、星空がとても綺麗だった。今は日本から遠く離れてきているということをなんとなく実感した。

■中世の街並みの雰囲気があるFOUGERS(フジェール)
293㎞地点であるFOUGERS(フジェール)に到着したのは3時半ぐらい。スタートして約11時間ぐらいの経過だ。日本に帰ってからフランスの地域圏を調べたが、今まではノルマンディー地方で、ここFOUGERS(フジェール)からはブリュターニュ地方に入ってくる。そしてブレストまでがその圏内だ。フジェールは中世の時代、花崗岩の上に築いた要塞だったらしく、街全体がその面影が残っている。昔は靴の産業を行っていたようだ。

今まで通ってきた街に比べてフジェールはとても大きな街だ。夜でお店は閉まっているお店も沢山あった。街灯もボヤっと明るく石で作られた街をオレンジ色に照らしている。少しアップダウンを繰り返しながら走っていると、ボランティアのスタッフの方が「ボンジュールこっちだよ」と、拍手で迎えてくれた。

オランジーナとソーセージの入ったサンドイッチを食べる

■仮眠45分
フジェールではオランジーナとソーセージのサンドイッチの軽食をとった。途中の「眠くて眠くて気が付いたら寝ていた」というのを防ぐために、食後1時間の仮眠をしようと場所を探していたら、休憩スペースの空いたスペースに何人かの参加者寝ていたので、私も横になることにした。この会場ではゴムのマットが引かれており、ゴロンとすることは可能だ。私もPBPの名物オブジェになることを選んだ。少し体は興奮しておりアドレナリンが出ていたと思われる状況ではあったが、我慢して目を閉じて体のスイッチをオフにしているとほんの少しの睡眠をとることができた。

夜のフジェール名物だと思う
私も彼の近くで寝たので、後から来た人も名物だと思っただろう

ボランティアの方にメルシー、オウボアと言ってリスタートをした。
時間は5時を過ぎていた。夜明けまであと2時間。フランスは7時に陽が昇る。

■ビアンキに乗った日本人
しばらくのんびり走っていたら、ビアンキに乗った日本人の方が後方から現れたので「こんにちは」と挨拶をした。コース上では初めての日本人で半日ぶりに日本語で会話をした。彼もまだそんなに日本人とは会っていないとのことだった。「気を付けて走りましょう」とお互いの旅の無事を願った。その後素晴らしい速さで加速していき、テールランプもしばらくしたら見えなくなった。彼はあっという間にフィニッシュするんだろうなあ。

■夜が明けたTINTENIAC(タンテニアック)
夜明けはとても楽しみだった。夜通し走り続けているライダーにとって最高のご褒美である。明るくなる安心感と共に、暗さが褪せて思い出したような景色が広がっていく様は、色を取り戻した主人公のような気持ちになっていく。おそらく誰もがそうなのだろう。
朝もやで幻想的な雰囲気に包まれながら、アメリカ人のライダーたちと共に高原のような風景を進んでいった。空気中の水分がとてもひんやりとして心地かった。アームウォーマーにも沢山の水滴がついていて手で払ったら足についてということを繰り返していた。しばらくするとTINTENIAC(タンテニアック)の街が見えてきた。

朝もやを抜けてたどりついたタンテニアック
街を通る時は必ずと言っていいほど
教会に吸い込まれていく

■暖かくて美味しいコーヒー
走っている時はなんともなかったが、タンテニアックのチェックポイントでコントロールを受け、その後に食事をしていたら寒くなってきてしまった。エネルギーを燃やしてしまっていたから、止まった後のギャップは大きい。おそらく気温は10℃ほどであったため体がぐんぐんと冷えてきてしまって、気が付けばブルブルとふるえてきてしまった。
そういえばコーヒーがあったなと思い、もう一度買いにいくことにした。メニューを見ずに「カフェ」と眼鏡をかけたご婦人に注文をしたら、大きさを聞かれたので1ユーロのものと伝えてコップに入れたコーヒーをいただいた。後から気が付いたのだがボウルのものがあったらしい。寒くてそんな余裕も全くなかった。ご婦人から淹れてもらったコーヒーを飲んだら、暖かくて体にしみわたった。こんなに美味しい朝のコーヒーは久しぶりだな。

タンテニアックのメニュー カフェのサイズが書いてある
その上に書いてあるのはビール ビールが一番上に来るとは
朝なので人は多くない
ハムのサンドイッチとバナナとオアシスドリンク
フランスパンなのでどうしてもパンのかけらが机に落ちてしまう
ベロモービルサミット 彼らは平地爆速だった。
よく見るとジャポネと声をかけてくれた方のリカンベントもあるじゃないか

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