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パリーブレストーパリ出走② ヴィレンヌ200㎞地点

モルターニュ・オ・ペルシュを出たのは日が21時少し前陽も陰ってきた頃だった。リスタートのタイミングは自由だ。自分のタイミングで決めればよい。PBPとは全てをセルフマネジメントで考えなくてはならない。

80㎞先のVILLAINES(ヴィレンヌ CONTROL POINT)までのお水をしっかりと補給し走りはじめる。まだ120㎞ 1割程度しか走っていない。あんなに暑かった気温は、太陽が沈み始めると共に涼しくなってきた。ここはフランス蒸し暑い日本とはやはり違う。においも本格的に田園の香りが鼻を抜けていく。

■反射ベストの着用
PBPではレギュレーション上 夜間走行時反射素材のついた安全ベストを着ることが義務付けられている。それはヨーロッパの基準を満たしたものでなくてはならない。反射素材と蛍光色の面積や、形状、本数などきちんとしたルールにのっとったものが必要である。PBP参加者全員に配られるリフレクターが付いた安全ベストはジレ(ベスト)のような形になっており、それらの基準を満たすものだ。視認性はとても良く夜間のライダーの命を守ってくれる大変大切なアイテムだ。もちろん基準を満たしたものであれば、自分で用意したものでも良い。ブルべをはじめる時にこのベストを着用することは抵抗感があったが、これはライダーにとっての「いのち綱」のようなものであり、極めて重要なアイテムと言える。

PBP参加者に配られる安全ベスト(表)
ちなみに写真は自宅 フランスではない
素材の生地は少し厚め 反射材の配置に意味があると思われる
PBPベストに光を当てる前
PBPベストに光を当てたらこれぐらい反射する

私は、自分では反射ベストを用意せずに、PBPの安全ベストを着用した。夜間の走行は10℃まで気温が下がるらしいので、この少し厚手の生地のベストはお腹を冷やすことには最適であり、これで体温のコントロールを考えた。

陽が沈んだ直後の田園風景
空気がひんやり

■リスタート
今まで集団で走っていたので人の呼吸を聴いていたが、リスタートしたら1人になってしまったので、割と風景を見る余裕ができた。空気はひんやりとして湿度もあまりなくまるで秋のような感じだった。田園の香りは沢山空気を吸いたくなるぐらい清々しく、草木のにおいがとても心地よい。PBPは思ったよりもアップダウンが多く下ったらも登っての繰り返しになる。リスタート後20分ぐらいはパワーがあまり出ないので、どんどん抜かれる。みんなよくこんな速さで走っているなあと思っていている

■PBP夜の部のはじまりはじまり
陽が完全に落ちて暗くなるとPBP夜の部だ。ここからが本番だ。本当のPBPが始まる。フランスはコミューンの間の道は街灯などなく、装備しているライトが頼りになる。キャットアイVOLT800NEOの灯りをローにして長時間の点灯が可能になるようにあまり明るすぎず、暗すぎずの調整をする。

真っ暗くなるころにはパワーは大分回復して少しずつパワーが出せるようになってきた。暗闇の中走っていると後方からの強い光が近くなり、そしてゴーッという音と共に1台、そしてまた1台と抜かれていっていたが、だんだんと巻き返せるようになり、先行している赤い点灯ライトが近くなることがだんだんと楽しくなりはじめてきた。途中のラウンドバウト(円形状の交差点)でLe-Manの看板を見て、いつかは24時間レースを観戦しに行きたいなあと思った。24時間レースってすごいなあと思っていたが、よく考えてみたら自分がやっていることは、もっと過酷なことをやっているんだと思い、フランス人が考えた耐久・長距離イベントは文化的なものがあるのかなと勝手に考え始めていた。

2時間ぐらい経過してようやく4人ぐらいで走る事になった。こうなってくると大分楽になってくる。時間の経過もあっという間スピードがぐぐっと上がる。ただ、暗いためどういう人かは全く分からないし、みんなPBPの安全ベストを着ているので蛍光イエローな人になっている。声を発さなければ国籍も性別も不明だ。それでも目的地は一緒。なんとなく力を合わせて目的へ向かって走る。そんなのがまたいいと心の中で感じていた。

■活気のあるコントロールポイント VILLAINES-LA-JUEL(ヴィレンヌ・ラ・ジュエル)
そんなこんなでVILLAINES-LA-JUHEL(ヴィレンヌ・ラ・ジュエル)に到着
時間は23時50分頃 スタートしてから7時間近く経過したことになる。
この街に入った瞬間に「おお!こりゃすごいとこに来たな」という気持ちになる。中心を通る道路にはバルーンゲートや横断幕はもちろんのこと、道端にはずらーーーーーっとならぶバイクラック。きっと500台以上は置けるはず。長い! そして何かお祭りでもやりそうな雰囲気。

ヴィレンヌ バイクラックがずらーーーーり
ここを通っていく
センターの道路を挟んで
コントロール、食事、仮眠、イベント広場
に分かれているらしい

ヴィレンヌ人口3000人程のコミューンでPBPのコントロールポイントとして往路も復路も通る。街全体をあげて毎回大きくもてなしてくれる。日本人参加者ばるさんの参加レポートでは、参加者がセンサーを通過するたびにMCの方がマイクで名前を呼び盛大に盛り上げてくれたそうだが、私が到着した時は日付が変わる時間帯だったため、拍手で迎えてくれた。

パリ ブレスト パリ |ヴィラン・ラ・ジュエル (sitevlj.fr)
ヴィレンヌ・ラ・ジュエルのホームページを見ると、街全体の活気的な雰囲気を感じる事ができる。自動車産業や包装材の産業があり、安定した雇用を生み出している。他にもLyrecoなどどこかで見た事のある事務用品もここにあるらしい。夜の到着で暗くて分からなかったが、明るい時間に到着してこの街の姿をしっかりと見たかった。

バイクラックにバイクを置いた後、ボランティアの方の案内でコントロールへ向かう。なんだかドキドキする。初のコントロールでボランティアのスタッフにスタンプと時間を記入してもらった。このオフィシャルな時間は身が引き締まる。ミスなどするはずはないが、1つでもスタンプが欠けると完走には認定されない。フランス語でちゃんと挨拶をしなければと、ボンジュール、メルシーと正しく発音できるように心がけている瞬間でもある。

コントロール後の食事
パンオショコラとプディングタルト(タルトdeフラン?)でエネルギー補給


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