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冬の季語「年の暮」(季節を味わう#0036)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。


【年の暮】

12月(冬)の季語です。
一年の終わり。街ではクリスマス商戦、歳末売り出しで賑わっています。
昔ほどではないにせよ、家庭では大掃除や新年を迎える用意で気忙しい毎日ではないでしょうか。
忙しく、活気に満ちた「年の暮」の句をご紹介します。

ともかくもあなた任せの年の暮  小林一茶

私はこの句を読んで、手を叩いて笑ってしまいました。
忙しすぎて、もう自分で何もかも決めるのはしんどい、ともかく全て"あなた任せ"にできたらどれほど楽でしょう、と思ったのです。小林一茶って意外とぐうたらだったのかも、などと考えてしまいました。
ところがですね、念の為調べてみたところ、一茶の言う「あなた任せ」とは「人任せ」「他人任せ」ではありませんでした。
小林一茶は浄土真宗の門徒の家に生まれました。本人も念仏者だったそうです。この句の「あなた」は人ではなく阿弥陀如来のことだったのです。
昔(江戸時代)の買い物は、その都度お金を払うのではなく、月末にまとめて支払っていたそうですね。12月末の支払いができないとなれば「年が越せない」わけですが、一茶は、豊かな人も貧しい人も、阿弥陀様にお任せしてありのままに、心おだやかに年を越していきましょうと言っているのです。
阿弥陀様にお任せすれば何も心配しなくていいのですよ、という意味でもあるのでしょうか。
不信心な上に、不勉強なため、てっきり人任せのぐうたらな句だと解釈した自分が恥ずかしいです。

(2023年12月13日)

※「季節を味わう」は 大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムで毎週水曜日に放送していますが、今月は特別企画があるため、放送はお休みですが、noteは休まず掲載します。

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