見出し画像

1月の花の俳句(季節を味わう#0042)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【水仙】

水仙に狐あそぶや宵月夜  与謝蕪村

水仙はヒガンバナ科の多年草です。海岸近くに群生するそうで、福井県の越前岬や静岡県伊豆の爪木崎が群生地として有名です。残念ながら私はその風景を見たことがありません。もっぱら切り花用に栽培された水仙を見るばかり。
細い葉の間から花茎が伸び、その先に白い花を数個つける水仙は独特の芳香を放つ水仙。凛として美しいと思います。
与謝蕪村のこの句は、寒月のもと、水仙の花にじゃれてあそぶ狐が描かれています。青白い月明かりの元、水仙の緑の細い葉と白い花、そして狐の毛の色。色彩と景色が目に浮かびます。
与謝蕪村が生きていたのは江戸中期。亡くなったのが1784年1月17日だそうですから、今から約240年前の人です。生活圏に狐がいてもおかしくない気もしますが、どこか微笑ましいこの光景は、与謝蕪村が実際に見たものなのか、もしくはフィクションなのか……。
私は狐が擬人化されているようなこの句から、新美南吉の『てぶくろを買いに』を連想しました。

一方西洋に目を向けると、水に映った自分自身に恋をして水辺で亡くなってしまったギリシャ神話の美少年ナルキッソス。彼が亡くなった場所に咲いていたということで、スイセンの学名は「ナルキッソス」と命名されたとか。同じ水仙の花でも、全く違う景色が生まれていて面白いですね。

ちなみに、水仙は冬の季語ですが、黄水仙や喇叭水仙などの大型の園芸種の花は春の季語です。

(2024年1月24日)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?