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IVとVIとスマイルカーブ

とある出版社の編集長と飲んでいた時、
「何十年とやってきたが売れる本は今でも分からない。でも、売れない本は分かる」と言っていました。
彼の言葉を相場の世界に落とし込むと、
勝ち方は分からないけど、負け方は分かる
そんな感じでしょうか。
私はたくさん負けてきました。今も当然負けます。ただ馬鹿馬鹿しいような負け方を何度も経験し、最近はそんな負け方は減って来たように思います。

私は株から相場の世界に入りました。
私が始めた頃は、Y板全盛期の頃で、
「指値で買うな!成り買いしろ!」
みたいなことを偉そうに言う人がたくさんいました。
たしかに株や先物には高値を買っていったほうがいい場面があると思います。
ですが、オプションに関しては追いかけるような高値買いは私はあまりおすすめしません。
それはオプションには株や先物にはないIVとベガという要素があるからです。
そのIVとベガという要素によって、大勝ちすることありますし、大負けすることもあるのです。

オプションは、それぞれ権利行使価格毎に固有のIV(ボラ)を持っています。そのIVを平均したものがVIになります。IVが個別株としたらVIは日経平均みたいなものでしょうか。
そして、IVを並べてグラフにしたものをスマイルカーブと呼びます。

option戦略

ATMの縦線から左がプット、右がコールのIVを表しています。プットは株などの保険として利用されることもあり、コールよりも需要が高く、プレミアムが割高になるのが基本です。期近と期先を見比べてみればわかると思いますが、満期に近づくにつれて、スマイルカーブの両端は起きてきて、最終的にUの字のようになっていきます。
つまらないのでIVの数字の仕組みなどの細かい部分の説明は今回は省略します。
とりあえず、このカーブおよび構成するIVを利用して割高か割安か判断している、そのくらいの認識でいいと思います。

では、割安とされる水準はいくつなのか、割高とされる水準はいくつなのか、という疑問が湧くと思いますが、その実用的な数字を私は持ち合わせていません。
ネットで調べれば長期的な時間軸で割安割高とされる水準を発見することができるかもしれませんが、それはあくまでも長期的な視点から見たものであり、私が求める実用性はありません。
予想屋は、VIが16の時、何ヶ月でも「暴落、暴騰が起きる」と予言し続けることができますが、私はそうはいかないからです。
「相場は常に正しい」とするなら需給により決定したその値を、割高か割安かを最終的に判断するのもまた次の需給であるため、
割高割安をたとえば一週間という枠に嵌め込み判断するには、長期的な割高割安水準の物差しでは長く、その瞬間、その瞬間のIVを見て、日々の繋がりの中で自分の物差しで判断するしかない、と私は思っています。

月曜日は休日取引でした。
休日取引は現物がありませんので、みなさんもご存知の通り閑散としています。私は値動きが全くないか、上にも下にも行って来いの展開になるだろうと思っていました。

option戦略

月曜日の後場のスマイルカーブです。
午前に一度37070くらいまで安くなってから37270の前回高値に迫るジリ上げの展開でした。
通常、先物が穏やかに上昇するとプットサイドのIVも穏やかに上がります。
例えばP36000は当然権利が36000から動きませんので、先物が上昇すると距離が離れます。離れた分、割高になるのでIVが上がるという感じです。
この日はジリ上げの展開ですので通常であればプットサイドは前日を示す赤の点線よりも起きているのが普通なんですが下げていました。
つまり、急騰を演じた先週とは打って変わって、休日なので「今日はボラないっしょ」とみんな呑気に構えていたのだと思います。私もそう思っていましたし、なんなら遠くのCPを売ってやろうかとさえ思っていました。

option戦略

上の表はVIを日毎に並べたものです。
月曜日は2月12日ですので、VIは19.06。
1月はボラタイルな相場でしたので、1年とかの長期的な物差しで測ると軒並み高いです。教科書的にいうと、オプションをロングする機会は一度もありません。

月曜日はVIが19台、ATM IV が16台だったのですが、私はボラの上げ余地があると判断しました。先物は金曜現物引け36900くらいから300円近く値を上げ、静かでしたが高値を維持しています。
その日の米株の動向にもよりますが、私は火曜日の現物が始まった時に全体的にボラは上がると思いました。
思惑通りになればコールもプットも買い方であれば有利に働きます。
またボラ低下によるプレミアムの剥げも19台であれば許容できると判断しました。

セータは買い方であれば敵、売り方であれば味方になります。
ですがベガは伏せてあるカードみたいなもので、めくった時にはじめて敵か味方か判明します。

私は金曜のナイトに3C37500をロングしました。
そして月曜の日中に追加でロングをいれました。
平均460です。

option戦略

ギリシャはおおむねこんな感じでした。
リスク指標明細の「V」がベガです。+39.4ということは、IVが1%上がるとプレミアムを39押し上げます。デルタと比較すると1%あたり先物100円上昇程度の恩恵があることがわかります。

option戦略

休日取引を終え、米株が開始するときのIVです。
権利行使価格で割った左側がコールで中央から3C4Cと並んでいます。
私が持っている3C37500のIVは15.89。ここから盛り上がってくれば、ベガが味方してくれます。伏せられているカードをめくる瞬間です。

option戦略

米株開始から30分後です。ぴくぴくと反応してきています。
オプションたちは休日から目覚めようとしていたのですが、
私はここで力尽きて寝てしまいました。
そして、3時間後に謎に目が覚めてしまったのでIVを確認するとこのようになっていました。

option戦略

さらに赤が増えています。先物は37500でした。
このとき、現物がついてこれるのかと思いました。
東エレが金曜日の夜間取引で上げていたのは知っていたのですが、さすがに寄り天だろうと思いました。
私はここで寄り天対策のデルタ調整として37500Lと同枚数38500をショートしました。
このときプット買いを選択しなかったのが、私の失敗だと思います。
コールをロングした動機がボラの上昇であるのであれば、
コールを売る選択は一番はじめに排除するべきだからです。
このときやるべきヘッジはプット買い一択だと今になっては思います。
おそらくプットを持っていた人は翌日の相場でIV上昇の恩恵をかなり受けたと思います。

option戦略

火曜日、現物寄り付き前に私はさらに悪手の3C39500を売りました。
これは私に時間的価値の減少は必ず起こり続けるものであり、たとえ踏まれても時間が解決してくれるという認識の甘さがあるからです。
ポジションの上3つが私のポジションと思ってください。
下のプットは比較するためデルタのサイズをコール売りと揃えました。

option戦略

火曜日、現物取引が開始し20分が経ちました。
スマイルカーブは前日を示す赤い点線よりすべてが上がっています。
先物の値はナイトの2時台とはほぼ同じですが、私が持っている37500のATM IVは16.98に上昇しています。つまり、オプションの買い方にとっては有利、売り方にとっては不利な展開になっています。
その後、上昇の勢いは収まらず、ぶち上げで日中の取引を終えました。

option戦略

火曜日17時台のIVです。
20時間前とはもはや別世界になっていると言っても過言ではないくらいにIVは軒並み上昇しています。2%以上IVは上昇していますので、その分買い方は有利に売り方は不利に追い込まれています。

option戦略

火曜日の現物取引終了時の私のポジションです。
コール売りとプット買いに大きな差が生まれていることがわかると思います。ヘッジでコール売りを選択した私の伏せカードは天使と思いきや悪魔だったのです。

セータを優先し、ベガをおざなりにしたため、このようなことになりました。プットを持っていた人は、やられが少ないと感じたのではないでしょうか。ガンマによるデルタの減少とともにベガが損失を抑えてくれていたのです。

では、今後もIV18以上が続くのか。
それは相場に聞くしかありませんが、
オプションのショーターはベガを味方につける好機と思っているかもしれません。

option戦略

IVは18台。
私は趣味でメインポジに影響のないレベルで上のポジションを取りました。C39500Sと先物でデルタをヘッジしています。
デルタはヘッジされてますので-0.036です。100円動くと資産に3000円の影響を与えます。人によってはほとんど無視していいサイズだと思います。ですがガンマがありますので、動きすぎると先物を足し引きして0調整する必要があります。
オプション売りですのでセータは味方です。
IVが下がればベガが味方してくれます。
※注意ですがオプションの裸売りは初心者の方や自信のない方はしないでください。かならずデルタヘッジはしてください。

それから36時間後、朝の5時台の様子です。

option戦略

朝の5時台は正直、閑散としてますのでIVも正しい数値じゃないこともあるのですが、だいたい17台、つまり1%程度下げていました。
先物は夜間行って来いの展開で、損失が1600円出ています。
合計利益は42千円。
セータは36時間分の利益を生み、IVの低下によるベカからも利益が出ていることがわかると思います。
あなたがもし36時間前、C39500@250でロングしていたら、先物が戻ってきたのに大きく負けてしまっているということです。

IVは高くなったとしても、相場が落ち着けば元に戻ります。
その戻る瞬間を手慣れのショーターは虎視眈々と狙っていますし、私も狙います。
日々IVを確認し、ベガの性質を理解しておくことで思わぬ負けを減らせると私は考えています。

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