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椅子に座れる水風呂で得る浮揚感

風呂に入ると浮力があるから、体の力を抜くと腕がぷかぷか浮かんでくる。子どものころから、広い風呂に入ると、そうしてどこまで体の力を抜くことが出来るかを試している。

完全に脱力すると腕は水面に浮かぶのではないかと思い、ためしに水面近くで腕を浮かばせてみると、重力が感じられてかえって脱力しきらない。
地上で腕に力を入れずにだらんと垂らしたとしても、重力が腕を引っ張るのでそこまで楽な状態にはならないように、ただ自分の力を抜けばいいというわけではない。
また、力を入れない様に意識するとかえって力んでしまったりもするので難しい。

自分の力も外的な力も何も感じない、ストレスフリーな状態を目指していると言ってもいいかもしれない。

プールには久しく行っていないが、プールで脱力して浮かぶのもなんだか違う気がする。そもそもプールに行って泳がないわけにもいかないので実践できないけど、過去の記憶を思い返すと、何の支えもなく浮かぶのもそれなりに力がいることだったように思う。
鼻に水が入りそうになって不快だし。

椅子に座れる水風呂

何かに支えられながら、水に手足を浮かべる。
そういう体験ができるのが、名古屋市栄にあるサウナ「ウェルビー」だ。

私は昨今のサウナブームには乗っかっていないので詳しくないが、ウェルビーは東海圏のサウナとして有名らしい。
確かにすごく充実していて、普通の暑いサウナだけでなく、冷凍サウナ、アイスサウナなど、よくわからない設備もそろっている。なんなんだそれは。

水風呂は2つあり、そのうちの1つには、水風呂の底にエクステリアにあるような白い椅子が沈められている。
たぶん水深は80センチぐらいあり、この椅子に座ると、肘から下が浸かる感じになる。

ウェルビーTwitterより

この椅子に座って手足を適当に浮かべるのが、今までで一番脱力できる気がする。
身体を椅子で支え、脚は若干浮くぐらいに膝を曲げておくのが楽だ。
腕は肘が100°くらいに開いた状態にしておくのがいい。
スーパー銭湯によくある一人用の釜風呂の縁に足と首を載せて身体を浮かせるのも悪くないが、あれは支点となる足と首に若干の負荷がある。

外部から力が加えられないというのはこれほど楽な状態なのだな(実際は水が身体を押し上げる力が働いているんだが)。無重力状態ってこんな感じなんだろうか、そこまででないにしても、重力の小さい月面はこんな感じかもしれない。いかに普段自分の身体が重力に引っ張られていて、それに耐えているのかということがわかるような気がする。作用反作用だか知らんけどさあ、なんか力がかかってんでしょ?

よく考えたらこんなに深い風呂に入ること自体が珍しい気もする。
この水風呂はせいぜいプールぐらいの冷たさしかないので、じっくり浸かれるのもありがたい。
浮揚感に包まれながらしばらく脱力していると、指先がじんじんしてくる。冷たいからではなく、なんだか体内の血液循環に意識が向く感じ。末端はそういうの感じやすいんだろうか。
そして、もう自分では身体に力を入れることもできないような気がしてくる。寝起きのダルさにも似た感じ。「足ってどうやって動かすんだっけ」とばかりに、余計な力を加えるのが面倒になる。なんだかネガティブな書き方になっているが、でも実際あまり長くこういうことをしていると元に戻れなくなるような怖さはある。易きに流れた者の末路が見える。

ウェルビーは2時間で2000円かかる。入浴目当てだと高いけど、設備を思うとまあ妥当だし、この水風呂の浮揚体験は他では得難いので、たまに行きたくなる。

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