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紙上の自殺

【2022年の秋から冬にかけて制作した、進級制作作品についての文章です】


「私ですね、最近疲れちゃってまして。ええ、精神的に。で、進級制作入るって時も、なんも考えられなくて。ほんと、ポルノと自殺のことしか考えられないってくらい。はは……だから、もうそれで作るしかないと思って。でも、ほんとに死ぬわけにはいかないじゃないですか。それはわかるんで。まだ色々やることあるし。死ねないんですよ。だからせめて、紙の上で死んでやろうと思って。自分が死ぬって時のイメージはめっちゃするんですよ。命を絶つ前にどういう行動するかとか、すごい想像できる。イメトレしてるんですよ。そういうのとか、それ以外の……死にまつわる暗めの心象風景みたいなのを、とにかく断片的に描きました。ほんとに頭ん中ぐちゃぐちゃになってて、すっきりした1枚絵にまとめるの無理だったので。思いついたこととりあえず描きました。あ、リトグラフです。」

「そう、めっちゃデカくて大変だった。大変だったんですよ(笑)ほんとに。これ描いてる時、ちょっと間に合わないかもしれないっつって先生に、『これは家に持って帰ってやった方がいいかもね』って言われて。でも私本当に嫌だったんですよ。こういう……ファインの制作を生活空間に持ち込むの、本当に大嫌いで。トラウマもんなんです。でも間に合わないかもしれないってのはわかってたし、泣きながらでっかい板段ボール買って包んで持って帰ったんですよ。家帰ってからも無理すぎて、作業してなかった。正直。部屋のなるべく隅に放置して、ずーっと嫌だ嫌だって泣いてて、マジで1回も触らなかったな。そんで次の日また学校に持ってって。持ち帰った意味はなかった(笑)。でもなんとかやりましたよ、ここまで。」

「この絵……これについての判断がもうできないんです。なんで紙をグレーにしたのかもよくわかんない。なるべく見づらくしたかったんですけど、総合的に絵としてどうなん?ってのは思うし、でもそれもわかんないし。インクの色も知らないです。乾いた血みたいで良かったからこれにしました、多分。何かもう、いいんです。ほっといてほしい。」

「あー。確かにそれは思いました。何枚かね、何枚かに分けてパネルに貼って組作品みたいにするとか。いろんな素材組み合わせるとか、それは確かにしたかった。けど、んー。単純に気力がなかった。なかった……し、うーん。なんか……何だろう、何でしょうね、これが、物質化するのが怖い。怖くて。テーマがテーマだから、入り込みすぎるとほんとに、持ってかれちゃうんじゃないかって。」

「まだ死にたくないんですよ。まだ死ねないのはわかってるんです。色んな人に迷惑かけるし。」

「ていうか、どうせ自分は自殺しないってわかってるんです。ビビりだから。何だかんだで1回も死のうとしてないんですよ。結局生きたがるんですよね、私って。偉いですよね。」

「だからこれも、全部終わって……いろいろ終わって大丈夫になったら、簡単に捨てられるじゃないですか。ただの紙一枚ですから。薄っぺらい。破って捨てられるし、燃やしてもいい。そうだな、燃やしたいですね。そのうち。それでいいんじゃないですか。この作品は、それで終わりで」
















ありがとう。

おつかれさま。

さようなら。



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