Post-facto-metric-Ambiguityについて

今まで僕が音楽を聞いてきた中で、イントロの部分でドラムが入らず、メロディーのモチーフ、或いはリズミックなリフだけが鳴っていて、いざドラムが入ってきたと思ったら、思っていたところの拍からじゃない!!なるほど今まで聴いてたものは錯覚だったのか!と驚く瞬間があって、それは最初の数回のみで体感できる楽しい体験なのですが、それをPost-facto-metric-ambiguityというらしいです。
となると、ドラムやちゃんとしたコンテクストによってビートやパルスが確定するまではバックビートも存在し得ないのではと思ったりもしています。

Drive My Car - The Beatles
https://youtu.be/kfSQkZuIx84?si=5gmpMFf3ZJ5kSHFc
もはや説明不要の名曲なのですが、僕が人生の中で一番最初に出会ったその例はThe BeatlesのDrive My Carです。おそらく幼稚園生当時は4/4+5/8+2/4で解釈していたのですが、(なので当時必死にカウントしてた思い出がありますね…笑)最近Paul McCartneyのライヴ映像で4/4でカウントしているのを見て、
https://youtu.be/gFg13rHCF44?si=ntW-uME85Q8knUda

最初のAの音が実は小節の前に出ているいわゆる引っ掛けの音になっているのだと(これはクラシックのアウフタクトの概念とは拍の動きが違う)知りました。

最初に聴いた時は上の聴こえ方で、
実際には全部4/4でした。そして一回そう聴こえるともうずっとこれに聴こえますね

WELLLL- Jacob Collier
https://youtu.be/4lSqCdA2yAI?si=LA-pArSp4sVJTBjK
最近出たJacobの新作、WELLLLでもそんな現象があってワクワクしました。彼のBreakdownの動画でもそのように言っていました。個人的にはAC/DCのBack In Blackを意識したリフのリズムなのかなと想像しました。
おそらく、これが拍がズレて聴こえるのは、最初の譜例での2小節目の2拍目のEadd9のコード、what actually it isの譜面では2小節目の1拍目裏の音、のタイミングによって、特に、初めて聴いた時に1拍目裏からずっと引き延ばされるってことで認識する人は少ないような気もしてます。これも純正率か何かでチューニングしているのだと思いますが(凄い)

これはドラムのキメと一緒に入ってますが、ビートが提示されているわけでは無いので
このような面白いズレが生まれるのかなと思ったりしています。

Louis Cole - Weird Part Of The Night
https://youtu.be/glgPZmSwC4M?si=CiG0H26OO91mASHR
実は僕はこの曲についても最初意外なところでドラムが入ってきて驚いたと同時にワクワクした思い出があります。このリフは最初コードで打ち込んでいたものをLouis Coleが間違えてシンセの設定をPolyからSoloにしてしまって偶然生まれたと言っていました。この単独で聴いた時のWeirdさ、最初に聴いた時には謎だなと思っていたのですが、曲を通して繰り返されるたびにもうこれがキャラクターとして自然になっていると言う、常人にはできない彼ならではの魅力なのかなと思います。(there's a magic that only Louis Cole can make - Jacob Collier)
だんだんと自然に聴こえていくことについて、もちろん何回も同じ曲を聴いているとそれが自分の中で自然になり、「追熟」していくことも関係しているとは思いますが。(出典:take it lowさんが追熟という言葉を使っていました)

Post Facto Metric Ambiguity、すごく面白いテクニックで、特にドラムが入った時にバッチリ決まるとかなりスリリングでタイトな効果が得られるので、いつか自分の曲やアレンジなどで使いたいなって思いました!意識して使おうと思うと歪になっちゃうので、自然に出てくるまで待とうかなと思ったり…

Tigran Hamasyan のEntertain Me
https://youtu.be/k-GUNcSWSko?si=_IDJMRwY0a6Q1RQU&t=84

の1:24以降のセクションに於いての、実際計算してみると全部4/4になるという仕掛けにおいて、あれも一種、ピアノが明らかに4/4のフレーズを出す瞬間までのPost Facto Metric Ambiguityなのではと思ったりしています。
一番最後の3回繰り返す、インドの伝統音楽におけるTihai的なアプローチのところはどうなっているんでしょう…3拍5連なのでしょうか…有識者の方教えてください…

凄くカッコいいと同時に凄く難しくてなかなか苦戦しています…笑

追記 2023/10/30
Computers - Clowncore
https://youtu.be/6Gha9xrM10w?si=2Ap5q1Wg4cWej5JJ
この曲は最初に聴いた時はビートとなる情報が一切与えられていなかったのでドラムが入ってくるまではカオスなC#の連続で、ドラムが入ってきた瞬間に一気に引き締まってカッコよかったです。彼らはかなり5つ割りをよくやる印象です。一番すきな曲はGoogle Your Own Deathです。彼らの曲、Infinite Realm Of Incomprihensive Sufferingの一番最後のホワイトノイズをRXにかけてスペクトグラム解析してみたら本当にIT HAS BEGUNと言う文字とともに彼らの顔が浮き上がって面白かったです。是非日本のBlue Noteでやってもらいたいです…
「。」と言う動画ではWE ARE IN A TOILETという文字とともに彼らの顔が浮き上がって、ファンとしてはもはやノイズを聴いたらスペクトグラム解析せずにはいられませんね!

Boy - Charlie Puth
https://youtu.be/iILJvqrAQ_w?si=97wF5R4UPEkmEzri
これもまた完全に名曲ですね…最初のRhodesのリズムのモチーフが曲の切なさというか、空気感を作っていて、ただひたすらに洒落てます…カッコいい…
おそらくシンセとRhodesが同時に同じようなハーモニーを鳴らしていて、オクターブが少し曖昧です…ただ、譜面はこのような感じだと思います!途中のRhodesのソロもただひたすらにカッコ良すぎますね…ミニマルであり空気感が満ちているのがあまりにカッコよくて羨ましいです。

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