Olivier Messiaen MTLの2番と7番の共通点についての考察

フランス生まれの20世紀を代表する作曲家、オルガニストのOlivier Messiaenが彼の著書、「音楽言語の技法」”technique de mon langage musical”(原語フランス語)で紹介している7つの旋法のうち、ジャズでもよく使われる第二旋法について第七旋法と繋がることを発見しました。既出でしたらすみません。

これらは移高の限られた旋法(MLT)”Modes of limited transpositions”という名前で、メジャースケールのように12キーに移調できるものではなく、何かしらのシンメトリー性を持っており、エンハーモニック的に完全に重なり、12回未満しか移調できないものが存在して、それをいくつか挙げて彼の曲の中で頻繁に使われている理論です。

第一旋法はWhole Toneで、いわゆる全音音階そのものですが、Debussy、ジャズならThelonious Monkサウンドだと思いますが、

Voiles - Claude Debussy
https://youtu.be/FVV0jkZC4jI

In Walked Bud - Thelonious Monk
https://youtu.be/2JIcZ0hDnXw

2番はいわゆるDiminished Half Wholeのスケールで、ジャズなどでもお馴染みのスケールそのものですが、(話が逸れてしまいますが、日本だとCombination of diminishedとよく言われていますが、海外だとその言い方は聞いたことがないような気がしてますが、発祥はどこなのでしょう…)

Diminished Half Whole (第二旋法) I ♭II ♭III (#II) III #IV V VI ♭VII

一般的にはDominant 7th ChordにDiminished Half Whole、Diminished 7th ChordにDiminished Whole HalfをAvailable Scaleとして当てはめると思います

このスケールの特異性はなんと言っても半音と全音を繰り返す、たったこれだけのルールで構成される圧倒的なシンメトリー(対称性)、

Diminished 7th Chordの構成音のうちどれか一つを半音下げるとDominant Chordになる、4 way crossroad (四つのDominant 7th Chordを繋ぐ十字路)として、4つのDiminished Chordが繋がる場所、もちろん1オクターブを4等分するとDiminishedになり、それを半音上または下に重ねることによってなんらかのDiminished Half Whole またはDiminished Whole Halfが完成するわけですが、

これは8音音階Octatonicなスケールで、もはやその有名さからかOctatonic Scaleと言われたらこれを指す場合もあるらしいです。

そして、いわゆる長短合成和音の考え方と結合するものだと思います。

これでいうとBerklee理論の#9について実は♭10thなのではという議論があると思います。

確かにBlues由来のMajorとMinorを行き来するサウンド、特にブルース系のシンガーはその中間あたりを意図して狙って歌う時は多いと思いますが、

Melodic Minorの第七モードのオルタードが7音音階であり、それを綺麗に理論としてまとめるならば、♭10のとして理論化するよりは#9として認識する方が理論のまとまりとしてよかったのかもしれません。

第二旋法はMajor keyとMinor Keyを繋ぎ、はたまた無調(Atonal)への架け橋となるサウンドでもあると思います。

Diminished half wholeは#9th 3rdの両方を含むので、いわゆる長短合成和音であったり、ジャズなどでおなじみのMajor Minorの両方を感じるBlues的サウンド、を含んでいると言えると思います。

Messiaenの曲の中でそれを顕著に使っている例を挙げてみたいと思います

La Colombe (Prelude) - Olivier Messiaen
 https://youtu.be/z2pwTP7g7xE

Vingt regards sur infant jesusの一曲目Regard Du PéreもまさにDiminished Half Wholeのサウンドですね
https://youtu.be/NyfWkWP86qs

Dimished Half Whole 第二旋法をさらなる無調サウンドへと変化させる方法として、ルート音を半音下として、第七旋法を使うと今まで使っていたDiminished Half Wholeの音はそのまま、2つの音が足され、さらなるAtonal、そして鳴らし方によってはCluster的サウンドへと変化することができると思います!

第七旋法
I ♭II II ♭III IV ♭V V ♭VI VI VII

半音下の第七旋法を元の度数からみたとき(第七旋法の第10モード)
I ♭II II ♭III III #IV V ♭VI VI ♭VII

Diminished Half Whole (第二旋法)
I ♭II ♭III (#II) III #IV V VI ♭VII

スペースの都合上、第二旋法をMLT2と表記しています。これが正しい表記かどうかは不明です…

上から3個目のB MLT7 10th modeの中にB Diminished half wholeの音が全て含まれているので、B Diminished half wholeに二つの音、C#とGを足してB MLT7 10th mode=C MLT7へと変化させ、さらなるAtonalな響きにすることができるというアイディアです。使用する場所が難しいですが…

なかなかジャズのコンテクストで使う事はないですが、いつかStan KentonのCity of glass的なビッグバンドの譜面書くときに使ってみたいです。
Thermopolae - Stan Kenton Orchestra
https://youtu.be/8PIpnd2V6MY

同じアルバムより個人的にすごく好きなEverything Happen To Meのアレンジです。
https://youtu.be/0u9UBVFrlKI

こちらもかなりキテレツなYou go to my headのアレンジhttps://youtu.be/tnVAxqSQ8Co

出典:”The Technique of my Musical Language” - Olivier Messiaen (Alphonse Leduc) Chapter XVI” Modes of Limited Transpositions 他


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