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03 しっくい浅原

京都の左官建築家・森田一弥さんが、トウキョウの建築家・塚本由晴さんを案内する『京都土壁案内』(学芸出版社)。
歴史や様式だけじゃない、多様な表情をみせる土壁の魅力が満載です!
2日にわたる、京都での取材の模様をレポートします。

訪れる人

塚本由晴さん
建築家。アトリエ・ワン主宰
東京工業大学大学院准教授(当時)

案内する人

森田一弥さん
建築家+左官職人
森田一弥建築設計事務所主宰

前回のようす

「しっくい浅原」は、森田さんが弟子入りされていた左官屋さん。
京都をはじめ、日本全国で活躍されています。
親方の浅原雄三さんにお話を伺いました。

色々な壁の塗り見本と、採集されている色土のサンプルを見せていただきました。あこや貝のピンクの壁がとっても綺麗! キラキラしてます。

壁の塗り見本。あこや貝は手前右から2つ目。

色土のサンプルです。ぜんぶ天然の色!

浅原さんは、解体現場や山から、いろんな土を収集されています。どこに行っても土に目を光らせてらっしゃるそうです。
京都だけでも場所によって全然違った土が採れ、宇治上神社の山の土は紫色だそう。
これ以上は秘密ですが、みなさんも山に行って土を掘ってみては?

次に、漆喰の原料になる生石灰に水を加えて消石灰にする様子を見せていただきました。
「ボウルに入れた小麦粉みたい。まさに料理だね」とは塚本さん。
みるみるうちに煙を出して発熱し、化学反応がおこります。こうやって性質が変わるんですね!
昔の人は、経験によって、なんでもよく知ってたんだなー。

生石灰に水を加えてしばらくすると…

 ぶくぶく発熱して消石灰に変わります。

工房内部では、職人さんが壁塗りの練習をされていました。森田さんもかつてここでたくさん練習されていたのですね。親方から弟子へ…目で見て自分で技を磨く職人さんの素晴しさを感じました。
コストや工期の問題で安易な材料や施工に流れるのではなく、彼らの技術を活かせる場がもっと増えなければ、日本の土壁もやがて危機に陥るのではないかと思います。

職人さんはみなさんそうだと思いますが、浅原さんは、とってもモノを大事にされます。
一見ゴミのように扱われてしまうものも、別の使い方を見出したり、形を変えることでより合理的なものをつくったりされています。
そもそも土は再生可能な素材で、何度も作り直すことができて、ゴミにはなりません。
いまの時代こそ見直されるべき素材だと思います。

しっくい磨き仕上げの釜を見せていただきました。持ち運び可能で、東北の被災地域にも届けられたそうです。燃やす木があれば、電気がなくても米が炊けます。そしてこの釜で焚くご飯は美味しいに違いない!

釜と一緒に。左から森田さん、塚本さん、浅原さん、番頭の矢野さん

(第4回へ続く)

京都土壁案内

塚本由晴・森田一弥 著

寺社や茶室はもとより、お茶屋や洋館、蔵や土塀まで、時を経て町に滲み出た土壁の魅力を紐解き、巡る、今日の京都の建築・街歩きガイド。京都の若手建築家で左官職人でもある森田一弥の案内は初心者にも優しく、塚本由晴(アトリエ・ワン)の撮り下ろし写真は町の日常に潜む土壁の迫力を見事に切り取った。素人も愛好家も必見。

詳細|https://goo.gl/eK3Z3S
Amazon|https://goo.gl/CdWmmU

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