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ありがたい

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

全国を回っている当社の営業から「売れる書店はこうだ」が、書店を開くときに役立った、と言う書店さんのことを聞いた。僕の書いた書店の話に後押しされて店を始めたと言うのだが、そこそこ飯が食えているのならそれは嬉しいことである。売れる書店の話は書いたが儲かる書店の話は書いていなかったので、おそらく売上げは「それなり」というところだと思う。まぁそれでいいではないか。

元々書店というのはそんなに儲かる商売ではないのだし、一日の仕事が楽しく終わり、一杯飲みに行くか、くらいの金が残っていれば書店という商売は捨てたもんじゃないと思う。それどころか1日の仕事が楽しいとなれば、幸せなことである。

僕は、書店の仕事がすべての職業の中で最も楽しいものであると信じている。書棚には世界があり、それらを求めて来店する人達に「こんなんありまっせ」と無言でプレゼンテーションすることの楽しさはどんな商売にもない。それを実現させてくれるのは新商品の多さ、多様な内容の商品群、そして委託販売という制度のおかげだ。

その書店さんの日々は厳しく苦しいけれど、仕事の中に「楽しみ」を見つけたのだと思う。書店を開いていることに誇りがあるのだと思う。思ったほど利益は出ないが、利益以上に価値があるものを見つけたのだと思う。書店とはそんなものが見つかる場所である。

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