ガク カワサキ

1992年生。脚本家。立教大学映像身体学科卒業後、浦沢義雄氏に師事。2015年より劇団…

ガク カワサキ

1992年生。脚本家。立教大学映像身体学科卒業後、浦沢義雄氏に師事。2015年より劇団「無情報」に加入し、脚本を務める。2020年に「誰かが、見ている」(Amazon)にて三谷幸喜氏と2人で脚本共作しドラマデビュー。現在、演劇のみならず映画・バラエティ・アニメ等、幅広く活動中。

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なんで脚本家になったかっていう話。

小さい頃から「エッセイ」が好きだった。 僕の中学校には「朝の読書タイム」という物が存在した。毎朝の朝礼が終わり、1時間目が始まるまでの15分間に読書をするという謎の決まり事だ。15分とは言え、クラスの全員が黙々とそれぞれ違う本を読まされている時間は何とも異様で、当時の僕でも「なんやねんこれ」と思わざるを得なかった。そして多くの同級生が「ハリー・ポッター」やライトノベルでその時間をやり過ごす中、僕が決まって選んでいたのが、さくらももこのエッセイだったのだ。 理由はいくつかあ

    • 『君たちはどう生きるか』の話。(ネタバレアリ)

      ※本文には映画「君たちはどう生きるか」、及び宮崎駿監督作品のネタバレを含めた映画の内容考察を含みます。まだ観ていない方はご注意ください。 映画「君たちはどう生きるか」。 公開は2023.7/14。僕が観たのは7/16。六本木の映画館は、ポップコーンを求める観客でごった返していた。文字通りの超満員。混雑嫌いの僕としては珍しく初週での視聴であったのは、あまりイメージに無いかも知れないが、僕は大の宮崎駿好きだからである。最も尊敬するクリエイターであり、最も影響も受けている。御歳8

      • 7年目のACT HOUSEの話。

        ひょんな思いつきで始まったワークショップスクール 『ACT HOUSE』も、今年で遂に7期生となった。 昨年、6期生を迎えた時に『遂に小学校全学年揃ったのか』と感慨深かったが、今年で7期。月曜から日曜まで網羅できる。 だから何だ。 7年を振り返れば、毎年変わらない事もある。 例えば僕が講師としても参加している。卒業公演の脚本も書かせてもらっている。初舞台となる子も多く、あえてはっきり言うが『卵』である生徒達の『羽化』となる舞台だ。当然、書く側の帯も引き締まる。 こればかり

        • 2022年の話。

          30歳になった。 いかなる誕生日も「節目」と言えばそうなのだが、中でもやはりこの「キリ番」を迎えると、帯を締め直さねばという気持ちになる。 (キリ番を知らない世代はごめんなさい) 20代、脚本家を目指して大学で映画を学びながら、ひょんな事で演劇を始めたあの頃。正にあの頃には一切想像のつかなかった10年を過ごせたと思う。 恥ずかしげもなく自慢口調で語るとすれば、この10年で沢山の「媒体」を経験させてもらった。 演劇、ドラマ、アニメ、バラエティ、朗読劇や本読みのイベント。対戦

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        なんで脚本家になったかっていう話。

          オシの話。

          昔誰かが言っていた。 映画監督は「OK」「もう1回」。この2語さえ話せれば誰でも出来ると。 とんでもない。 人間まずは挨拶だろ。 今、初めて長編映画の監督をやらせて頂いている。 撮影の日々は、大学で主に映画を学んでいた自分からすると、どこか懐かしいさもあり、同時にそのレベルの変化にも驚く不思議な状態で毎日が楽しい。 言い換えれば、大人になってからもう一度制服を着て登校している気分だ。 よく「映画と演劇は何が違うんですか?」と聞かれる。その問いはあの三谷幸喜氏でさえ「解らな

          映画は誰の物?って話。

          季節が夏から秋に変わる時に明確な切れ目が無い様に、「コロナ渦」という物もなんとなく収束の季へと移ろいでいる。 だからこそ何でもオッケー、とはまだ言い難いが日常は戻りつつある。いや、戻ることは出来ない。次の段階へ進んだと言うべきか。 下北沢の片隅に、小さな串焼き屋がある。 モツ煮込みにラー油を混ぜた肴が妙に美味い。 そこに、今製作中の映画のスタッフと仕事終わりの食事がてら肩を並べた。 彼らとしっかり飲むのはそれが初めてだった。 にも関わらず、僕はとても「懐かしい」という気持

          映画は誰の物?って話。

          一人称の話。

          人に誇れる程とは思わないが、それなりに読書好きである。 特に電車移動での読書は欠かせない。 お陰で何度駅を乗り過ごしたか解らない。 作家たるもの文章を読め、とは言わないが勉強は裏切らない。今まで読んだ本で無駄になった物は一冊もないと断言できる。 意外と思われるかもしれないが、小説よりもいわゆる「新書」やエッセイを読む事が圧倒的に多い。参考までに言うと、今読んでいる本は脚本家・橋本忍氏著の『複眼の映像』。盟友とも言える巨匠・黒澤明との出会いから、映画『七人の侍』の執筆など、そ

          一人称の話。

          夢の話。

          夢の話をする人間は信用してはいけない。 夢とは、その人だけが観た映像であり、そのオリジナリティを正確に言語化出来る人間はかなり少ない。逆を言えばそれでも尚夢の話をする人間というのは「自分の見た映像と同じ映像を他人が想像出来るに決まってる」と少なからず思っているのだ。要注意である。 さて。 夢の話をしよう。 俳優界隈には、夢の話で古くから伝わる「あるある」の1つがある。 「台詞が一文字も入っていないのに舞台に立たされる夢」だ。 当然現実ではまずあり得ない。けれど、これは夢の

          しろくまのうんち、の話。

          いつぶりの更新だろうか。 あまり自分を「忙しい」と評する人間は好きではない。スピリチュアルな信仰をしている訳ではないが、割と「言霊」は信じるタチなので、「忙しい」と口にするとその後予定されていた楽しい事まで逃げてしまう様な気がするからだ。が、今現在は紛うこと無く忙しい。 決して胸を張れるほど売れっ子でも無ければ、引っ張りだこの人気者でもないと自負している。ではこの多忙さは何故にやって来るのか。漠然と、自分の計画性の無さ、言い替えればスケジューリングの下手さがその原因だと思っ

          しろくまのうんち、の話。

          嶺上開花の話。

          これでもかと言うほど詰め込んで脚本を書いてみた。 「伝わらないだろうな」という細部にまで血を巡らせた。 そしたら、全てか、それ以上の何かが伝わった。 無情報 本公演 第7弾『嶺上開花』が6/26に無事終幕した。 無情報としては番外公演をあわせて10本目となる記念スべき本作は、メンバー始め座組全員の意欲作だった。だからこそ、今コレを読んでいる人も含め「ロス」に悩まされているのではないだろうか。 僕も正にその1人。だからこそ、ここに今、本作の想いを少し残しておこうと思う。脚本家

          嶺上開花の話。

          記憶より記録、の話。

          10年以上前ではあるが、沖縄の暑さは何とか思い出せる。 けれど、アノ時何で笑ったかは思い出せない。 その代わり、アノ時笑っている写真は持っている。 これは少しだけの自慢だが、僕は高校で誰よりも早くiPhoneにした男だ。いや、たまたま発売時期に機種変更の時期が来ただけなのだが。母が無類の新しい物好きで「買おうよ!!」と僕よりもはしゃいでいたからなのだが。いずれにせよ、僕は言わば長崎出島、裏原宿、ブロードウェイ。トレンドをいち早く取り入れたのだ。 当時ほんの1年ほどチヤホヤ

          記憶より記録、の話。

          なりたくない、の話。

          嘘くさいほどの春の陽気が身に纏わりつく。 キャンパスの中庭は、プラカードを持ち、奇妙奇天烈、魑魅魍魎な服装をした諸先輩方で溢れかえっている。妙に皆、笑っていた。 僕が大学に入った2011年は、あの大き過ぎる地震の騒ぎが冷めやらず、入学して最初の4月が丸々モラトリアムな時間になった。大学そのものが動いていないのだ。 特にやる事のない、人生を蔵の中で寝かせるしか無い様な時間だった。 その醸造が終わり、発酵した炭酸が溜まった頃、コルクを抜くと勢いよく中身が吹き出す。反動、とでも言

          なりたくない、の話。

          投稿しなかった話

          先に言っておくが、これは「出来なかった」のではない。 「しなかった」話である。 遡る事2ヶ月程前。 毎年の恒例の舞台公演を控えていた。 約3ヶ月のレッスンを経たメンバーが、卒業公演として舞台を行う。板の上に立つのは、演技を今一度学び直したいと勇んだ経験者から、人生で初めて「演技」をする者まで様々。そのバラバラな仲間が奇妙な事に集まり、その結果ここでしか作れない「同期」と言う仲間となる。 それが「ACT HOUSE」だ。 このワークショップで僕は毎年講師、そして卒業公演の脚

          投稿しなかった話

          ポイントカードが下手な話

          貯まらない。 堪らなく貯まらない。 僕の人生においてポイントカードを貯めた記憶が1度も無い。 いや、正確には「貯められた事が1度も無い」のだ。 例えば新しく見つけた好みの洋服屋であったり、或いは新装開店のラーメン屋だったり。「また来たいな」と思うお店の帰りしなに「ポイントカードお作りしますか?」と聞かれれば、断る理由はどこにもない。 なんでもポイントが1列貯まると煮玉子が貰えるらしい。 この店の煮玉子をとろけさせたい。 箸で割って、その中身を噴火させたい。 そんな野望を財

          ポイントカードが下手な話

          ワンカットドラマの話。

          カメラは走った。 妹の結婚式の為でも無いのに−−。 その日、昼間に一本の連絡が入った。 テレビ東京の林ディレクターからだ。 要約すると「若手映像グランプリ」という、テレビ東京社内のコンテストに15分のショートドラマで参戦したいという事、そして納品を考えると撮影まで残り1週間程度しか時間が無いという事を告げられた。盆と正月がいっぺんに、とはよく言うが天国と地獄がいっぺんに来る事は珍しい。ドラマが書ける喜びと、あまりの時間の無さとが混ざりやけに冷静だった。 林くん、もっと早く言

          ワンカットドラマの話。

          悩みの話。

          2022年の2月22日が来た。 1992年に生まれた僕から見ると、人生史上過去に類を見ない程の「割り切れる日」だ。 いや、別に「4月2日」だって「8月14日」だって割り切れるのだが、なんとなく「2」で揃っていると真っ二つに割り切れる、パピコみたいな画が頭に浮かぶ。なんとも微笑ましい。 こういうシンメトリーな場面はなんとも気持ちがいい。 ファミレスの壁紙を見た時、レンガ柄の壁紙が横幅ぴったりに完結しているとすごく気持ちが良い。一方で、一番端のレンガだけが7割位の横幅になってい