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教養科目の講師こそ誇りを持って挑む【若手研究者】

 noteとyoutubeを中心に教育学の解説をしている文系研究者Vtuberのがくまるいと申します。
 疑問こそ学びの原点なのに、学校の決まりや文化に関する「なぜ?」に、学校はほとんど答えてくれません。疑問や悩みに少しでも答えたい、そして疑問を大切にする人が増えてほしいと思い、発信しております。
 私の仕事のうち、原点といえるのが教養科目の非常勤講師です。他の研究者の方がどのような意欲で教養科目に臨んでいるかはわかりません。もしかしたら、研究に集中したいとか、意欲ある専門科目の学生の方がいい等モチベーションが低い人もいるかもしれません。
 しかし、私は教養科目の授業は講師側にとって大変価値があると思っています。研究者として、教養科目の講師こそ誇りを持って挑むことを心掛けています。

院生時代、衝撃だった同期の言葉「話すことがない」

 大学院博士課程在籍時、初めて非常勤講師として短大相当課程の教養科目の授業を担当することになりました。授業はざっくりと「教育学」、一応の教科書はありますが教養科目ということもあり、勤務校からは授業内容や評価は一任されました。前任の先輩の授業も参考にしつつ、少しでも今までの学校へのモヤモヤを解消したい、今後の学びの役に立ててほしい、そして学生から私が気づかなかった考えを得たいと思っていました。
 同期の院生には、それぞれ違う勤務校ですが、同じような教養科目の非常勤講師をする者が何名かいました。しかし、彼らと非常勤についての話をすると「やることがない」「話すことがない」と言います。「うまくできるかわからない」ならわかるのですが、整理できていないことも含めて伝えたいことが山ほどある自分にとっては、衝撃的な言葉でした。
 これは個人の価値観、動機づけの違いですから良い悪いではありません。研究や論文執筆、専門的な議論などに重きを置くのは少なくとも研究者キャリアとして正しいです。価値をそれほど感じていなくても、非常勤も手を抜かず役割を果たせば仕事として十分と言えるでしょう。
 ただ単純に、教養として学んでもらう学生にとっての意義も、専門外の人に伝え共に学ぶ授業者としての意義も強く意識していた私にとって、衝撃がありました。後に、こう考えられるのは自分が伸ばしていくべき長所かもしれないと思うようになりました。

1人でも多くの学生にとって意味ある教養科目にしたい

 実際現場に立つと、学生から期待以上の多くのことを学びました。初めての経験で本当にたどたどしい授業ながらも、多くの学生が毎回のコメント記入もしっかり行ってくれました。それに対する返答で授業時間が圧迫されるのは、うれしい誤算でもありました。限られた時間の中で、出来るだけわかりやすく、しかししっかりと伝えようと試行錯誤しました。
 大学院を出た現在も、教養科目の授業は私に多くの学びを与えてくれます。一つ疑問が解消できたとか、共感してもらって嬉しかったなどのコメントを頂くと、活力にもなります。
 もちろん、全員がしっかり取り組んでくれるわけではありません。専門の実習や資格試験の学習で疲弊する中、どうしても優先度は下がりますから、寝る学生もいます。あくまで一外部講師ですし、ハードな専門課程と理解もしていますから、基本咎めません。(この授業を学校全体の中でどう捉えているというこういった話も、教育学の一環として学生にも伝えています。)
 しかし、しっかり学んでくれる学生には応えられる充実した授業、学生が学びたいと思うような授業内容にしたいと試行錯誤しています。教養科目の多くは学校卒業後記憶から消え去りますが、そんな中で少しでもこんな授業あったなとか、あんな先生もいたなと意味が残る教養科目にしたいと思っています。
 そして、そんな授業をつくっていくことは、専門知識の全くない人にも広く伝える最高の実践機会でもあり、私が目指す「疑問を大切にする人が増えてほしい」という目標に近づくために重要です。
 現在、noteやyoutubeなど色々な媒体で伝えることに取り組んでいますが、まだまだ課題だらけです。しかし、原点である教養科目の授業での学びを活かしながら、発信もどんどん経験を積んで、広く学びを伝えられるようになりたいと思います。

専門である教育学を中心に、学びを深く・分かりやすく広めることを目指しています。ゲーム・アニメなど媒体を限らず、広く学びを大切にしています。 サポートは文献購入等、活動の充実に使わせて頂きます。 Youtube: https://www.youtube.com/@gakunoba