蒲田健の収録後記:佐藤優さん
局所合理的なことを追求しすぎると、伸びしろがなくなる。
佐藤優さんの最新刊「十五の夏」
1975年、当時いわゆる共産圏であった東欧諸国を、当時高校一年生の
佐藤さんは夏休みを使って一人旅に出る。海外旅行が今ほど簡単では
なかった時代、しかも行く先は社会体制が全く異なる国々。
特別な伝手があるわけではない、資金が潤沢にあるわけではない、
外国語も流暢に話せるわけではない、ないないづくしの状況。
もちろん事前にできうる準備は可能な限りしておくが、決して十分とはいえない
前提のもとでしかし15歳の男は果敢に飛び出してゆく。
想定外なことが次々と起こる。その都度対応を迫られ、頭をフル回転させる。
しばしば周りの協力をあおぐ。時にSOSを発信する。
共産主義国の人々は冷淡であるというステレオタイプなイメージがある。
それは一面の真理であるかもしれない。
だが多くの人たちが彼のSOSに対し、親切にそして対等に接し導きを与える。
彼は単純にラッキーだったのだろうか。たまたま恵まれた状況にいたのだろうか。否、それは決して偶然ではないのだろう。一人で道を切り開いていこうという
人間へのリスペクトが、周りの人間をしてそうせしめているのだ。
それは理屈ではない。それが人間なのだ。
15歳にして人間の本質的な部分を肌感覚で理解することができた。
その後の人生に途轍もない影響を与える、というのは
もはや言うまでもないだろう。
真の教育、真の学びとは何か。子を持つ親ならずとも大いに刺激を受ける
旅行記である。
「飛び出して 感じて考えてゆけば
大きく伸びる 出るべし旅に」
P.S.メモは一切なく、頭の中の記憶だけでこの大作を書き上げたという
エピソード、知の巨人の巨人たるゆえんを見ました。一方でまだ幼いお子さんの
ことを語る目がとてつもなく優しく、その落差が非常に印象的でした。
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