見出し画像

目に見えづらい仕事。

15年間、プロデュース・プランニング・デザインといった仕事をしてきて、そのプロセスの見えづらさ故に、適切に稼働を見られなかったり、安く見積もられたりすることが少なくなく、都度悔しい思いをしてきた(今もその戦いは続く)。

一方で、そのプロセスの可視化と稼働の説明努力を怠ってはいけないとも思っている。確かに、分かりづらいからだ。

遠野ふるさと商社のロゴ&タグラインをつくるプロセス。最終アウトプット以外、そのプロセスや仕事の様子が表に出ることはほぼない。



基本的には脳味噌の中で行われていて、かつ作業中の姿を見ても"ずっとパソコンを見てる人"という印象だと、どうしてもそうなるのも分かる(むしろ作業中は集中したいので人前に出たくなく、プロセスは尚更分からない)。

昨年までの様子。事務所の1Fにいたが、今は作業に集中したいため2Fにデスクを移動した



他の職業ではどうだろう。

例えば、料理人。出す料理のメニューを考え、買い出しに行き、仕込みをして材料を整え、空間をセッティングし、手際よく料理をして、サーブする。またその片付けもする。

例えば、建築。日々、資材が運び込まれ、人が動き、交通整理をする人もいたりして、日に日に建築物ができ上がっていく。その様子は可視化され、お金がかかってる感じも理解できる。

我々も同様なプロセスを経る。ただ、物理的な何かを扱ってる訳ではないため、すこぶる分かりづらい。


脳味噌の中では、経験や知識が詰まった引き出しから過去の材料を取り出し、並べ、今回用にアレンジする(材料費)→どんなものをつくるべきか考える(企画費)→競合商品も見る、体験する(リサーチ費)→試作品もたくさん作る(試作代)→それに何時間もかけつつも、締め切りを意識してスケジュール通りに進行する(進行管理費)。

そんな感じで細かく細分化でき、見えないかもしれないが、実費がかかっている。ましてや、脳味噌の中では、その仕事をしていない時でもゆるく稼働し考えているため、常に脳味噌の中は稼働している(サーバー代)。


瞬間的にアイディアが湧いてくるわけでも、降りてくるわけでもなく(そういう時もあるけど)、地味なプロセスを繰り返しながら、ゴールを目指している。


後ろ向きな話をしたいわけではない。こうした目には見えづらい仕事をしているのだという自覚を改めて持ち、そのプロセスを伝え、ただただお互いが気持ちよく適正なやり取りをしたいだけである。

※ほぼ多くの方々はリスペクトを持ってくださっており、気持ちのよいやり取りをしていただけている
※今に始まったことではなく、例えばデザイン業界では適正な金額設定とルールを業界をあげて何年も前から取り組んでいる


農家、料理人、画家、デザイナー、ライター、大工。何かを創ることができる人、生み出す技術を持つ人たちは本当にすごい。尊敬しかない。

そういった仕事に加えて、そもそも、どんなものを創ってほしいか、どう創るのがベストか、どう伝えたらより魅力が伝わるか、誰を巻き込んで進めていったら良いかなど、「考える、動かす」プロであるプロデューサーやプランナー、コーディネーターなどの仕事に対しても、同様に脳味噌という身体を動かし、専門的な技術を提供していることがもっと理解されるといい。

そのためには、見えづらい部分を可視化すること。プロセスを開示すること。できることからやっていく。


あ、あと、そもそも「見える」ものをつくることも大事だと思う。今年『本当にはじめての遠野物語』を出版できたことで、はじめて取材申し込みをいただいたメディアの方もいらっしゃった。「富川さんのこれまでの取り組みの中で、ようやくメディアとしても紹介しやすいものだと思いまして」。確かにそうかもしれない。

本は、その思考のプロセス自体が作品となる。これからも本を書いていく。


見えづらい仕事を適切に伝えるための試行錯誤はつづく。

許諾をいただき、こうした提案プロセスを実績として公表させていただくのもその第一歩。
クライアント:遠野ふるさと商社、CD/コピーライター:富川岳、デザイナー:阿部拓也

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?