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ももクロのミッション・ビジョンと組織文化

ミッション・ビジョンとは何か?

企業にとってミッション・ビジョンは重要なものとされています。

私が経営する、駐車場予約アプリ『akippa』の経営会議でも「戦略コンサルティング会社のStrategy&の調査結果によると、企業のミッションやビジョンなどの目的が明確に定義されている企業の90%以上が、業界平均以上の成長を遂げている」といった参考資料が紹介されるなど、ミッションビジョンへの関心は大きいです。

ではミッションとは何か?ChatGPTの回答も引用すると『ミッションは企業や組織が存在する目的やその活動の中心となる価値観。ミッションは組織の目的や役割を明確にし、所属する人が日々の業務を行う上で意識するもの』とされている。わかりやすく言えば『使命』というところです。

続いてビジョンとは何か?『ビジョンは企業や組織が将来どのような状態を達成したいと考えているかを示す長期的な展望。将来の方向性を示すもの』わかりやすく言うと『なりたい姿』といったところかと思います。

15周年を迎えるももクロ

ミッション・ビジョンはどんな組織においても大きな役割を果たすと思われます。

実際に私が好きな『ももいろクローバーZ』はミッション・ビジョンこそ明確な定義が公表されていないものの、メンバーはいつも共通した言葉で語っているように思います。

ももクロは2023年に結成15周年を迎える中で、メジャーデビュー以来追加メンバーなしで活動を続けています。ドームライブを行い続けられるほどのパワーの秘訣はどこにあるのかとても気になるので「勝手に」ももクロのミッション・ビジョンや、それを支える組織文化を考察してみたいと思いました。

あくまでも普段語られている言葉から考えているだけなので、お手柔らかに見ていただけたらと思います。

ももクロの方向性が示された日

ももクロは伝説のスピーチにより、方向性が明確化されたように思います。それが行われたのは2014年3月の国立競技場でのライブです。

ももクロはこの日、旧国立競技場の58年の歴史において、女性グループとして初めてライブを行いました。当時はAKB48の全盛期でもあったので、そのままアイドル界の天下を狙っていくのだと思いました。しかし、リーダーの百田夏菜子さんのライブ後のスピーチで、良い意味で予想を裏切られました。

「私たちは天下を取りに来ました。でもそれはアイドル界の天下でもなく、芸能界の天下でもありません。みんなに笑顔を届けるという部分で天下を獲りたい」

「国立でライブをするのも、国立でライブがしたいっていうだけじゃなくて、たくさんの人に私たちのライブを観て笑顔になってほしいっていう思い」

このスピーチは軽い気持ちで言ったわけではないと、その後の9年間の言動・行動を見ていてわかります。

百田夏菜子さんがこの考えに至る前兆はいくつかあったと思います。
例えば『ももクロ試練の七番勝負』での戦場カメラマン・渡部陽一さんとの対談です。

渡部さんは、戦地で歌を歌うアイドルの写真を紹介しました。百田夏菜子さんはその場で涙ぐみ、最後のコメントを話すことができませんでしたが、その翌日のブログで以下のように書きました。

「どの国にも必ずしもアイドルがいて、たくさんの人に笑顔と勇気を与えてる存在だと聞きました。」

「頑張ろ!!!!!!!!!!!!!!1人でも多くの方の役にたてるようにっ」

この対談では、メンバーの高城れにさんも「人に笑顔を届けることが大事」と語っていて、リーダーだけではなくメンバーにも共通の思いが芽生えていたようです。

このように多くの方々と話すことが、国立競技場での大方針を示すスピーチにつながったのだと思います。

ももクロのミッションを考えてみる

国立競技場でのスピーチや、その後の言動(そしてそれに伴う行動)から引用すると、ももクロのミッション(使命)は、以下のようなものではないかと推測されます。

ミッション:『多くの人々を、笑顔にする。』

目的は「笑顔の天下を獲ること」ではなく、あくまでも「人々に笑顔になってもらう」ことだと思いますので、目的であるミッションはこのような形で書いてみました。

国立競技場ライブから4年後にあたる、2018年の東京ドームでの10周年ライブでも、百田夏菜子さんは2014年の国立競技場でのスピーチに言及し「ちょっと良い人ぶると、みんなが笑顔になる理由は私たちじゃなくてもいいと本気で思うんです。でも、ちょっとだけ欲を言えば、その理由が私たちだったらいいな、と思います。みんなにもっと笑顔を届けられるように、みんなともっとたくさんの景色が見られるように、歩いていけたらと思います」あくまでも人々が笑顔でいることに拘りを持っているようなので、この言葉がぴったりなのではないかと考えました。

ももクロのビジョンを定義してみる

ではビジョン(なりたい姿)は何になるか?これはおそらく以下が当てはまりやすいのではないでしょうか。

ビジョン:『笑顔を届けるという部分で、天下を獲る』

これは国立競技場でのリーダーのスピーチからそのまま引用しました。ビジョンは、組織が将来どのような状態を達成したいと考えているかを示す長期的な展望なので、宣言通りで良いと考えました。

発言を整理しているだけでも、ももクロの考えは素晴らしいと改めて思わされますね。

ももクロの組織文化

企業や組織がミッション・ビジョンを実現する上で、バリュー(行動指針)やカルチャー(組織文化)も重要視されています。

組織文化はミッション・ビジョン実現に向けて、組織全体で育んでいく空気のようなものです。

ももクロは世の中を笑顔にするために、自然と組織文化も育まれているような気がしています。

最年少メンバーの佐々木彩夏さんは2022年のドキュメンタリーで「アイドルはステージで歌ったり踊ったりすること以外の、普段の立ち振る舞いも重要」と話しました。

またメンバーの高城れにさんは「カメラがオフの時も、人としての行動が大事」とコメントしていました。

このように、ももクロは"オン"の際に笑顔を届けるだけでなく、"オフ"の際でも常に笑顔にすることを心がけているように感じます。実際にメディアの方々も「ももクロは裏表がない」とおっしゃられることが多いので、言葉だけではなく行動も伴っているのだと思います。

そして何より、ももクロのメンバーだけでなくモノノフ(ももクロファン)の方々にもそのカルチャーが伝播されているように感じます。

実際に地方創生で行われた2019年の富山県黒部市のライブ前に行われた、警察関係のイベントにおいて佐々木彩夏さんは「モノノフさんはお行儀がいいので、ももクロっていいな、モノノフっていいなって思ってもらえるようなライブにする」と語っています。

ももクロの良い行動がモノノフに影響し、それをももクロのメンバーがアピールするという素晴らしい組織文化の育みが起きているように思います。

ミッション・ビジョンを実現するための戦略

企業にはミッションやビジョンを実現するための、戦略が存在します。(長くなるので、ここでは戦略の詳細説明は割愛します)

ももクロの場合は人々を笑顔にする上で、ライブを軸とした戦略があるように感じます。いくつかの事例を紹介します。

・事例1:『春の一大事』
ももクロは春・夏・冬と三大ライブがあります。春のライブは2017年以降『春の一大事〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜』と題して開催されています。

地域を活性化する・地域を笑顔にすることを目的としたこのライブでは、開催地を自治体向けに公募しています。

開催自治体はライブ会場となる場所(グラウンドなど)を準備し、ももクロ側は無償でステージ制作やイベント運営を行います。

これまでに埼玉県富士見市(2017)、滋賀県東近江市(2018)、富山県黒部市(2019)、福島県楢葉町・広野町・浪江町の三町合同(2022)と開催され、2023年は広島県福山市で開催予定です。

ももクロが事前に何度か市を訪れ観光し、そのスポットが聖地化します。ファンは聖地を巡礼し、ライブの理念に共感してその市や県でお金を使います。実際に人口4万人の市には、2日間で3万人が訪れました。

また、開催自治体同士で連携協定が行われるなど、まさに笑顔の連鎖が起きています。

・事例2:『ジャパンツアー 青春』
ももクロは2017年から2018年にかけて、47都道府県全てでライブをするツアーを実施しました。

会場は市民会館も多く、キャパの関係で47都道府県ライブの合計動員数は7万人弱でした。

同年の2017年に味の素スタジアムで開催された『ももクロ夏のバカ騒ぎ』では2日間で10万人以上を動員したので、47都道府県を周るツアーはビジネスとして効率は良くないはずです。

ただ、ももクロは人々を笑顔にする存在です。普段中々ライブに来れない人たちに自ら会いにいくツアーを実施したのはとても印象深かったです。

・事例3:新たな目標『新国立競技場でのライブ』
パンデミックに入る直前の2019年12月のライブで百田夏菜子さんは「どうしても見たい景色があるんです。いつか、新国立競技場のステージに4人で立てるように頑張りたい」と話しました。

2014年に旧国立競技場でライブをしたももクロが、2023年以降に新たな国立競技場でもライブを実施したら、笑顔だけでなく涙も止まらないと思います。


3つの事例をあげましたが、旧国立競技場ライブで百田夏菜子さんが「たくさんの人に私たちのライブを観て笑顔になってほしい」と言った通りに、自治体との興行や47都道府県ライブから大規模ライブまで、日本全国に向けてライブを軸に笑顔を届けていると思います。

ライブは不要不急か?必要不可欠か?

ライブを軸に活躍してきたももクロは、パンデミックの中でもオンラインライブを届けるなど、在宅を強いられる中で希望を見せてくれました。

ももクロもリアルでライブをして笑顔を届けたいが、世の中の状況に悩んでいたようです。

2年ぶりの大規模ライブとなった2021年12月の『ももいろクリスマス』で、メンバーの玉井詩織さんは「ライブというものが絶対に生活に必要かと言えば『今は行くべきじゃない』と考える人もいるだろうし、私たちも『今は開催する時じゃないかも』など沢山考えました。でも今日こうしてみんなに会って、やっぱりライブって絶対に必要なものだと思いました」と語りました。

会場からは、その日一番の拍手が鳴り響きました。ファンの拍手は『ライブは不要不急ではなく必要不可欠である』と応えた形になり、メンバーもファンも涙しました。

このように、リーダーだけでなくメンバーも『意義』を考えられることが、ももクロの強さなのかもしれません。

まとめ

これまで過去のメンバーの発言などをもとに、ミッション・ビジョンや組織文化について考察してきました。実際のところは関係者の方々にしかわからないことも多いので、いつか公式に定義されたものがアウトプットされると大変勉強になると思います。

いずれにしてもこれまでの言動や行動を見ていると、ももクロは唯一無二の存在となる可能性が高いと思います。

これからも、ももいろクローバーZの活動が楽しみです。(終わり)

(おまけ)

駐車場予約アプリ『akippa』はおかげさまで会員数が累計で300万人を突破しました。私はもちろんのこと、このアプリをつくるにあたって案を出した女性社員もモノノフさんです。

ももクロは15周年イヤーですが、akippa株式会社は創業14周年イヤーです。1年先を行く先輩の行いに沢山の大切なことを教えられています。

笑顔を届けるももクロに少しでも貢献できるよう、全国のスタジアムの駐車場を増やすことで、モノノフさんが会場に行く手助けをできれば幸いです。

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