見出し画像

“伝道”URC未発表発掘ライヴ集

2017年にキャンペーン特典として制作されたCDが2020年に市販されたもの。スリムケースなのが特典盤の名残なのかな?正直まだ出てくるかーとすら思っちゃうURCの発掘音源。


メインは1971年4月14日に大手町サンケイホールで行われた加橋かつみコンサートの音源。とは言えこのCDに加橋かつみの演奏は含まれず。当日出演していたはっぴいえんどのパートは1986年には発掘され「GREATEST LIVE! ON STAGE」に収録されているので、他の出演者の音源があるのは不思議ではないけどこの時代まで出てこなかったのは何故だろうとも思う。


今回のCDで初音盤となるノーブル・ベガーズの2曲からスタート。作家の島田荘司氏が作った曲を演奏しているけど島田氏はメンバーにはいない。所謂URC系で想像されるような音ではなく、カレッジフォーク調とも言えるハーモニーを重視した作風。上手いとは思うけどこのCDに収録された他の演者に比べてしまうとやはりアマチュアっぽさが目立つ。


続いて単独作も出ている都会の村人が3曲。こちらもハーモニー系だけど軽快さがあってお客さんの受けも良い雰囲気が録音されてる。休みの国「旅するおばさん」を取り上げていて、休みの国版にある怪しげなムードとは違う明るさがあって良い。一部サイトで当日の出演者としてアテンション・プリーズと書いてあるのは、メンバーの太田ぼう氏が被っていることを考えるとこのグループのことなのかも。


高田渡も3曲。メジャーデビューアルバム「ごあいさつ」録音直後くらいになるのかな。「ごあいさつ」にも入ってる「アイスクリーム」では曲の構成をミスったのか歌が少し中途半端になった箇所あり。翌年の「系図」収録の「69」では曲前のMCで客席の加橋かつみファンの少女たちに対して「わからないだろ」と毒づく様子も。もう一曲は「ごあいさつ」収録の「年輪・歯車」。特に「年輪・歯車」で顕著なんだけど、声も艶っぽくてギターも実に良い音で録音されていると感じる。当然なんだけど声の感じはアルバム「ごあいさつ」に近い。高田渡はこの前後で声が結構変わるように思う。独特の艶っぽさはこの時期の特徴じゃないかな。


加川良はこちらも録音直後のアルバム「教訓」から3曲収録。と言うか「ごあいさつ」と「教訓」って同じ日に発売されているのがビビる。「教訓Ⅰ」ではバンジョーで岩井宏が入っている。このCDの宣伝文句として「教訓Ⅰの最も初期(古い)の音源」とあるけど、70年12月の「岡林信康コンサート」にゲスト出演した際の録音が実況録音盤に入ってるから、その記述は間違ってるんじゃないかな。アルバム「教訓」では共にはっぴいえんどによる伴奏がついていた「ゼニの効用力について」「伝道」も弾き語りで聴ける。アルバムではやや過剰にドラマチックなアレンジが施されてた「伝道」が淡々と静かに歌われてるのがとても良いです。このCDのタイトルにもなってるのも理解できる名演だと思います。


高田渡、加川良、岩井宏の三人が揃って「生活の柄」。手慣れた演奏で三人の絡みもばっちり。コーラスと言うかハーモニーらしき形ではあるけど、この三人だとどうしても武骨な雰囲気が出るのが良い。年を経るごとに演奏が早くなっていったことで知られる曲ですが、ここではまだまだゆったりとした演奏。


最後に西岡たかしとORBによる74年の録音2曲が収録。ORBは「オリジナル・レッド・バルーン」の略とのことだけど、五つの赤い風船を初期に脱退した中川イサトと長年メンバーだった長野隆に加えて都会の村人にも参加していた金森幸介の4人なので五つの赤い風船のオリジナルメンバーってわけではない。翌年には長野隆に代わり永井ようが参加して五つの赤い風船’75となる。西岡たかしという人は近年サウンド面での再評価が高いけれども、今回聴いて本当に良い曲を作る人だなと改めて思った。特に「ジャンジャン町ぶるうす」はこんなに良い曲だったんだなとハッとさせられた。


この手のCDって「いつか買おう」思ってたら既に手に入らなくなってたりするし、特にこれは最初から限定盤と明記されているので早めに買っておいた方が良さそうだと思われます。特に高田渡と加川良が好きな人は。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?