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見たいものしか映さないスマホ

 スマホを使い始めて何年かして、高校生くらいの時に、知識や興味が偏ってきた実感があった事をよく覚えている。当時の私のスマホはバンドとキイロイトリと猫くらいしか映さなくなった。今でも気を抜くとアートかニュースか恋人の画像ばかり映し出してしまう。

 新聞、テレビ、ラジオ、携帯、スマホ。外の世界と繋がる上で色んなメディアがあるが、インタラクティブなものとしては携帯かスマホだろう。
そういう点においては、スマホは実に便利ではある。だがタイトルの通り、スマホは持ち主が映したいものしか映さない、「鏡よ鏡状態」である。

 テレビはメディアとして二次情報の塊、芸能人の忖度の塊、好感度おばけの住む場所、という感じでエンタメの枠を出ない。(NHKのEテレ、プロフェッショナル、は良いリソース)

 その点新聞はどうか?見たい記事は経済欄だけだったとしても、自然と他の記事も目に入ってくる。経済で起きた出来事と、地域で起きた事、様々な広告、チラシ、環境欄、科学欄、そしてその時誰が亡くなっているか、様々目に入ってくる。ニュースアプリも使いやすいけれど、意識しないと興味がある内容以外はタイトルの先に進まない事がある。そういった点で世の中で起きている全体像を掴むには新聞がいい。あと質量性も大事。読んでいないと嵩張る感じが、無駄にしてる感、読んでない感を引き立てて、勿体ないから読もうとする気持ちになる。だがコスパは悪い(購読料は勿論、運搬コスト、ゴミになり得る物質性)。

 ラジオはマルチタスク向き。オーディオブックが良い例だけれど、考えずに出来るような作業をやる上で良い時間の節約になる。

 携帯とスマホの違いは時間当たりの情報へのアクセス数だろうか。そして直感的に使えるという点で、1歳児でもメディアとして活用できる点がスマホの方が優秀だ。

 冒頭の話に戻るが、スマホは映したいものしか映しださない。
SNSでフォローする相手が自分と似たような嗜好の人ばかりだと世界は広がらないし、Amazonで買うものの類似品しか広告には出ない。音楽も好きな音楽の関連しか出てこないから、若者が演歌に触れることもない。Google検索は言うまでもなく。

 これは結構な欠点だなと思っていて、意識的に、全く違う分野の人をフォローしてみたり、偶々見聞きしたものを検索してみたり、ランダムに毎日国名を検索して関連ニュースを遡ったり、逆にTwitterトレンドを見てマスの感覚を掴んだり、色んなルーティンを組み込んで使っている。
 そうすると、自分が好きなアートにつながる情報が落ちていたり、新しい興味に出会えたりする。とはいえ、外を歩く他人を捕まえて、その人の身の上話を聞くときほどの発見はない。

 よく友人や同僚に会った時に「最近何に興味ある?」「最近面白かったことは?」「逆にイラっときたことは?」などと質問する。この時にすぐ返答できる友人はラボの相手くらいで、大体返ってこないか、うーんと考えて結局いつも同じ分野の話、という事が多い。それはそれで非難する気は無いが、どうせ話すなら、自分のスマホからは得られない新しい知識や興味を与えてくれる相手の方が会いたくはなる。(同じ分野の話ばかりでも専門性が高い、もしくは会うたびに高くなっている、相手は別)

 質問の答えが返ってこないのは、スマホのせいではないだろうか。
スマホは使い道によっては独りでなんでもできてしまう超優秀なツールでありメディアだ。唯、なんとなく使っていると思考停止した人間を量産していくディストピア感溢れるおもちゃでもある。

 サッカーを知らない子供はサッカー選手になる夢を持たないように、自分の見聞きした世界に収まっていると、夢も希望も増えにくい。もっと楽しい事が世の中には転がっている(だろう)のになと思うことが増えた。リモート生活はこのディストピア感を加速させる気がしているので、意識的にどうでもいい単語を調べたり、興味のない人をフォローしてみたりする事をおすすめしたい。

 見たいものしか映し出さないメディアを使う生活は楽だろうなと思いつつ、偶にインフルエンサーとかいう、社会からすると箸にも棒にも掛からないような広告だけの存在が価値を生み出しているような錯覚を覚えるのは悲しい側面だ。同時に、募金インフルエンサーとか生まれないかなと思ってもいる。

 今日は「アンパンマン」と検索したらおうち時間で作ったであろうアンパンマンパンがいっぱい出てきた。楽しそう。
 「煙突」と検索して煙突の値段の相場を知ったり、「ナイロビ デート」と検索して今のご時世しばらく行けないであろうケニアのデートスポットを知ったりした。
 偶々トレンドタグのTopで呟いた人の投稿を遡ったらやたらウルトラマンの絵が上手いアカウントだった。

これがいつか何かの役に立つのだろうか...笑


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