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無精子症でもママ・パパを諦めない

無精子症は100人に1人の割合で存在すると言われており、この場合、絶対的な不妊症となります。

女性に原因があろうとなかろうと、自然妊娠への期待はできないということです。

ただ、無精子症にもいくつかの種類があり、手術を行えば、妊娠にたどり着ける方も少なくありません。

そして、2022年4月から、この治療は保険で提供できるようになりました。
一部の医療機関では自費で行っているところもあり、それぞれに技術もうたっていますが、ここは患者さんの判断次第です。

そういった手術をTESEとかMESAとかM-TESEなどと呼ぶのですが、それらの成績をまとめたものがアメリカの学会誌で報告されていましたので共有したいと思います。


2022.12.30に公開されています。

この研究では、2008年から2017年までの間に顕微授精を行った方々を、精子の回収方法および凍結保存期間で分類して、妊娠率や出産率を解析しています。

対象となったのは、合計で214,649周期の顕微授精で、回収方法別としては、199,818 サイクルの射精精子、5,646 の精巣上体精子、9,185 の精巣精子となりました。
ICSI サイクルあたりの生児獲得率は、射精で 28.5%、精巣上体で 30.6%、精巣精子サイクルで 28.7% となりました。

精子は精巣上体で運動能を獲得するため、精巣内精子よりも精巣上体精子の方が運動精子の割合が高くなると言われています。
非運動精子よりも運動精子の方が顕微授精の成功率が高くなるため、できれば運動精子を回収することが期待されます。

その結果か、実際にこの研究でも精巣精子に比べ、精巣上体からの精子の方が、成績が良い傾向があることを報告しています。

これは、サブ解析をして、年齢を見ると、精巣上体から精子を回収したグループの方が、男女ともに平均年齢が高いにも関わらず、という点を強調しています。平均男性年齢 (42.5 対 40.6 歳) および女性年齢 (34.3 対 34.0 歳

また
着床率 (61.2% vs 58.0%、OR 1.086、95%CI 1.041–1.133)
臨床妊娠率 (34.3% vs 31.3%、OR 1.085、95%CI 1.039–1.132)

においても、精巣周期と比較して精巣上体からの回収した周期の方が高かったとしています。

結論として、
まずは少なくとも、射出精子と比べて、外科的に回収された精子であっても、顕微授精の結果得られる成績は遜色がないということが挙げられます。

ただ、前方視的試験ではないことや、多変量解析がかけられていないため、ここで結論づけることはできない、と注意書きがされています。

無精子症であるということは、大きなショックを伴います。
その結果、全ての方がお子様を授かれるわけでもありません。
ただ、中にはお子さんを授かれる可能性が十分に有る方もいます。

まずは、男性には精液検査を怖がらずに受けていただきたいと思いますし、
その結果、無精子症であっても諦めないでほしいと思います。

今でも無精子症であったことで、自身のお子さんを諦めてしまい、
アンダーグラウンドな精子提供に行ってしまう方などもおられます。
絶対に簡単に諦めないでほしいです。まずは相談しましょう。

そして、病院を選ぶ際には、しっかりと情報収集をすることです。
技術力の差は、手術なので当然出てきます。
高い方が良い、安い方が悪い、と見えることもあると思います。
もちろんその逆もあります。

しかし、不妊治療は、みなさんが思う以上に非常に複雑で、様々な要素が絡み合います。

保険診療でも十分な成果が得られる方もとても多いと思いますから、
焦る気持ちを抑え、地に足をつけて、情報収集しましょう。



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