闇鍋のルールを考察する
闇鍋をする際に問題になるのが、決めごとの多さである。入れたらいけない具材はあるのか?スープの味はどうするのか?どのようにして作るのか?あらかじめ入れる具材はあるのか?
これらを無視して闇鍋を開催してしまうと、参加者は各々の闇鍋観で具材を用意することになる。結果として、満足のいく闇鍋体験は得られないだろう。
私は大学院生時代に、研究室で闇鍋を開催するにあたって、これらの問題を回避するために、研究室の同期とともに闇鍋のルールを整備した。今回はそのルールを思い出しつつブラッシュアップし、闇鍋を嗜みたい全ての人に対して、一つの解決策を提示できればと思う。
1. ルールの概要
闇鍋のルールは共通ルールと難易度別のルール(以下レギュレーションと呼ぶ)によって構成される。共通ルールには主に闇鍋の進行に関するルールが定められており、これはどの難易度設定で闇鍋をする場合でも共通である。一方で、レギュレーションには食材に関するルールが定められており、ビギナー、スタンダード、エキスパート、アンリミテッドの4種類に分けられる。このうち、スタンダードとエキスパートはスープの味が事前に参加者に伝えられているかどうかでさらに二分される。伝える方をオープン、伝えない方をブラインドと呼ぶ。つまり、レギュレーションを難易度順に並べると以下のようになる。
易しい
ビギナー
スタンダード(オープン)
スタンダード(ブラインド)
エキスパート(オープン)
エキスパート(ブラインド)
アンリミテッド
難しい
闇鍋の主催者は、共通ルールとレギュレーションを参加者に周知するだけで、認識の共有を図ることが可能となる。共通ルールとレギュレーションの詳細については、2章及び3章で説明する。
余談だが、オープンとブラインドの命名については論文の査読方法(open reviewとblind review)に着想を得ており、これらのルールが大学の研究室で生まれたことを暗示している。
2. 共通ルール
2.1 闇鍋の参加者
闇鍋は具か食材の量と種類の観点から3〜5人で実施するのが望ましい。参加者の中から1人主催者を決める。主催者は鍋と鍋スープを用意する。
2.2 闇鍋の進行
主催者以外は部屋から退出する。
主催者は鍋をコンロにセットし、鍋スープを注ぐ。持ってきた食材を入れたら、コンロを点火する。その後部屋の電気を消して、部屋から退出する。
入れ替わりで参加者が1人入る。参加者は持ってきた食材を鍋に入れる。入れ終わったら部屋から退出する。
手順3を全ての参加者について実施する。この間、暇なので飲酒してもよい。
最後の参加者が食材を入れ終わったら、全員で部屋に入る。食材が十分に加熱されたらコンロの火を消す。
各々の器に盛り付けて食べる。この時、具材を当てながら食べる。
ある程度具材を当てたら、主催者は頃合いを見て電気つける。以降は普通に鍋を楽しむ。
2.3 注意事項
食材はあらかじめ切るなどしてジップロック等に入れ、後は鍋に投入するだけの状態にして持ち込むと大変スマートである。
どうしても途中で電気をつける必要がある場合は、鍋に蓋をしてから電気をつける。
食材が鍋から溢れるほど入れてはならない。そのため、持ち込む食材の量は多すぎてはいけない。例えば、4人の参加者が全員もやしを1袋ずつ持ち込んだ場合、鍋がもやしだけで埋まってしまうのは想像に難くないだろう。
暗い環境で食材に火が通ったか判断するのは難しいので、火を通し過ぎかな?と思うくらい加熱するのが安全である。加えて、十分に加熱すれば食材が鍋からあふれそうな場合でも食材は縮む。例えば、4人の参加者が全員もやしを1袋ずつ持ち込んだとて、十分に加熱すればかさは減って鍋に他の食材が入る余裕が生まれるだろう。
鍋の〆はやってもやらなくてもよい。〆をやる場合、主催者はあらかじめ周知してもよいし、しなくてもよい。
3. レギュレーション
3.1 ビギナー
闇鍋の雰囲気を味わいたい人向けの初心者ルール。
鍋にはあらかじめ白菜、鶏肉、ネギ、豆腐などの鍋に最低限必要な食材が入れられている。主催者は参加者に鍋スープとあらかじめ入っている具材を周知する。
持ち込み食材は1人につき1種類。
液状の食材やスープの味自体を変化させる食材の持ち込み禁止。
例: カレー粉、キムチ、ヨーグルト、マヨネーズなど〆の食材の持ち込み禁止。
例: ご飯、ラーメン、うどんなど
3.2 スタンダード
闇鍋を鍋として楽しむルール。基本的にはこのルールが最もおすすめ。
持ち込み食材は1人につき3種類まで。ただし、参加者が5人の場合は2種類までにするのが望ましい。
液状のものやスープの味自体を変化させるものは禁止。
例: カレー粉、キムチ、ヨーグルト、マヨネーズなど〆の食材の持ち込み禁止。
例: ご飯、ラーメン、うどんなど主催者はベースとなる鍋スープを決める。オープンルールにする場合は鍋スープを参加者に周知する。ブラインドルールにする場合は周知しない。
例:醤油味、鶏白湯味、キムチ味など
3.3 エキスパート
闇鍋を闇として楽しむルール。闇鍋に慣れて、より強いスリルを求めたくなった向け。スタンダードとの違いは食材に制約がないこと。
持ち込み食材は1人につき3種類まで。ただし、参加者が5人の場合は2種類までにするのが望ましい。
主催者はベースとなる鍋スープを決める。オープンルールにする場合は鍋スープを参加者に周知する。ブラインドルールにする場合は周知しない。
例:醤油味、鶏白湯味、キムチ味など
3.4 アンリミテッド
楽しめるかどうかすら怪しいルール。一応ルールとして用意してみたが、私もやったことがない。鍋スープを使わないルールなので、各々が調理する前提で食材を持ち込むことが求められる。
持ち込み食材の数の制限なし。
食べられるものならどんなものを持ち込んでもいい。
鍋スープは使わず、水を用いる。
食べられるものを目指すこと。
4. 闇鍋を楽しむために
闇鍋はエンターテイメントだが、同時に食事でもあるので、完成した闇鍋を食べることを念頭に置かなければならない。というのも、闇鍋は分量が多くなりがちなので、奇を衒った食材ばかり入れてしまうと食べきるのが難しくなってしまう。つまり、重要なのはバランスであり、普通の食材と変わった食材を両方用意することで安定感とスリルを両立し、もう一度闇鍋をしたいと思えるような闇鍋体験を生むことができる。
また、普通の食材にしかない面白さもある。例えば、参加者全員が豆腐を持ち込んだ場合、鍋というよりは湯豆腐になるだろう。豆腐が絹ごしと木綿と焼き豆腐の3種類入っていた場合は、暗闇の中それらの違いを当てる遊びも生まれる。闇鍋を幅広く楽しむためにも、是非普通の食材にも目を向けていただきたい。
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