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気まぐれショートショート 戦国時代の自動操縦

男は壇上にあがるなりこう言った。
「戦国時代というものは我々の憧れが概念化したラジコンでしかない」

会場は啞然とした。
怒り出す歴史学者もいた。
しかし、男は平然と続けた。

「では聞くが、誰かこの目で信長を見たものは?
秀吉や家康は?
そうだ。我々は歴史史料から武将や戦を想起しているに過ぎない。
信長とはかくなる人物たれ。
かくして関ケ原は決着せり。
すべては、我々の戦国時代を想起することで生まれた歴史の自動操縦の産物なのだ」

会場はさらに野次がひどく飛んだ。

「そこまで言うなら証拠を見せよう。世界は5分前に誕生したのだと」
「ここに、未来人が我々の時代を記した最初の文献がある、それも原本を特別に譲り受けた。これを燃やして未来人の手に渡らないようにする。そうすれば未来人は我々に想いを馳せることはなくなり、この世界はたちまち崩壊するだろう」

怒号とどよめきが最高潮に達した。
男はなんのためらいもなく懐からライターを取り出しその火を文献に


(408文字)


このお題を見た時、
「もしやこれ、時代そのものを操作せにゃならんのか?」と妙に勘ぐった私は、いかにも世紀末の預言者的な男に証明をさせる結果となってしまった。

しかしながら、こんな横暴すぎる数学的帰納法で時代を創ったり壊されたりしたらたまったもんじゃないですね。
やはり空想は机上の上に限る。

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