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【しらなみのかげ】皆もすなる日記といふものも、私もしてみむとてするなり #25



今日は六月の一日である。更新するのは日付が変わって二日になるが、その様な厳密な時刻に関係無く、私は眠りに就いて起きた時に初めて日付が変わるという認識で生きている。大凡は、朝になり太陽が完全に上ってしまう時刻位まではその日の内であると見ている。抑も零時よりも前に寝ることなど千に一つ程で、後は勉強に勤しんだり一人酒を飲んだり酒場で歓談していたりするのだから、こうした認識の方が生活に合っている。だから、今はまだ六月一日である。
 
 
「毎日書く」と宣言していたこの「しらなみのかげ」を続けられていない。始めたのは二年前の令和二年の今頃であったが連続で書いたのがそもそも三日程、後はであった。そしてもう一度、一念発起して今年の元旦から毎日書き始めたものの、続いたのは二週間かそこらで、後は数本の記事を出して又中絶した。毎日同じ事を行うこともない滅茶苦茶な生活を営んでいるせいか、将又、単に私の懶惰な性分が出たせいか、愚かなことに二度も同じ事を繰り返している。全く以て慙愧の至りである。
 
 
然し近日、とある友人がTwitterのスペースで話した折に、是非共「しらなみのかげ」を楽しみに読んでいたので再開してくれないだろうか、と私に伝えてくれた。大変に有難い言葉である。そう言われては、何もしない訳にはいかない。思いを新たにして、再び毎日更新を目指して書き続けることにする。どこまで続けられるかは解らないが、兎に角やってみよう。後数日で、私も誕生日を迎えて三十二歳になる。恥ずかしながら人生行路も徐々に半ばに差し掛かる頃合で誠に遅きに失した決断であるが、人間己の志に向かって諦めないことが何よりも大事だと私は日々念じる者である。
 
 
これは先に述べた途絶から得た教訓なのだが、毎日書くものというのは、気負っては駄目である。読者諸賢に期待に応えるような良いものを書くぞと思った途端に、筆が進まなくなってしまう。そこで、これは昔別の盟友に言われた一言だと記憶しているが、何にせよ兎に角少しの分量でも良いから毎日更新だけは続けることが大事ではないか、という旨を肝に銘じてみたい。これも又、私の性分とも言えるものだが、ことに臨んでは意気込んで、様々な事を調べたり遠大な計画を練ったりするのだが、どうにも其方が不完全な気がしてならず、中々本番に取り掛かれないところがある。考え方を変えなければならない。往時に更新していた様な大部の分量を毎日仕上げるのは至難の技である。力を抜かなければならない。千字二千字、否、日によっては五百字でも良いから兎に角更新していく、という様に考えなければならない。
 
 
昔から日記というものを書くのが苦手である。小学生の頃等、課題の一つである夏休みの絵日記なり日記なりを毎日きちんと書いたことなど一度も無かった。最初は毎日書いていたのが三日纏めてになり、夏の盛りの頃には大体一週間纏めて書く様になり、晩夏に差し掛かれば十日か二週間纏めて書く態勢になり、その頃にはもう八月の終わりになって慌てて記憶を巡らせていた。来し方を振り返れば振り返るほど、毎日同じことを決めて行うのが性に合わないのかも知れないと思ってしまう。
 
 
三百六十五日本当に毎日、恐らく五千字程はあろう文量で「白饅頭note」の更新を続けている白饅頭こと御田寺圭氏の力行にはほとほと頭が下がる思いである。恐らく、あれ程の文量を書いている人はプロの書き手でも殆ど居ないだろう。本当に驚異的な事業であると思う。
 
 
そう言えば、福尾匠という批評家がこれも本当に毎日自身のブログに日記を付けていたものを出版した旨を少し前に知った。私もその日記を幾度も読んだことがあるが、生活上の感想を色々と書き連ねていて、短い随筆の様で面白かったものだ。私が読んだ限り、こちらは社会時評の性質を帯びた白饅頭氏のものと異なり、本当に「日記」である。きっと「毎日書く」ことそのものの意味というものがあるのだろう、と感じていた次第であった。
 
 
西欧でもアミエルの日記やユンガーの『パリ日記』の様な著名な日記文学の事例があり、『ヨーロッパの日記』というグスタフ・ルネ・ホッケによる浩瀚な研究がある様だが、それこそ日本以上に日記という文学ジャンルが栄えた国は無かろう。紀貫之の『土佐日記』、道綱母の『蜻蛉日記』、『和泉式部日記』、孝標女の『更級日記』、『讃岐典侍日記』、阿仏尼の『十六夜日記』等の著名な日記文学に止まらず、宇多天皇の『寛平御記』や花園天皇の宸記、藤原道長の『御堂関白記』、藤原行成の『権記』、藤原実資の『少右記』、九条兼実の『玉葉』、藤原定家の『明月記』等の歴史記録としての日記にも溢れているのが我が国の歴史である。というよりも、我が国の歴史の実相を後世の人々が知ることが出来るのは、正にこれらの日記の御蔭である。
 
 
私の書いているものが何になるのかはよく判らないが、兎に角、今後は「毎日書く」ことに注力していきたいと考えている。

 
 (この文章はここで終わりですが、皆様からの投げ銭を心よりお待ち申し上げております。)

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