「地元の名士と若旦那」の豪遊と衰退−JC京都会議の思い出からの連想

 一年に一度、千年の古都の繁華街である祇園と木屋町に札束が降って来る時期がある。高級な背広を着て、胸には同じバッジを付けた大勢の生まれの良さそうな「青年」達が全国からこの街に集まっては、連れ立って夜の街を闊歩し、そこら中でタクシーを飛ばす。彼等は、公益社団法人日本青年会議所(公式略称JCI Japanだが、通例JCと呼ばれている)の会員であり、地方の中小企業の社長であったり、開業医であったり、自分で事務所を開業している士業系の人々であったりする。所謂「地元の名士」であったり、その子弟の「若旦那」であったりする。彼等は、毎年一月の第三週末の数日間に亘り、岩倉にある国立京都国際会館にて開催される「京都会議」に合わせてこの街に降り立つのである。


 JCと言えば、今年の2月10日にTwitter社と「メディア・リテラシー確立」のためにパートナーシップ提携を締結したことで話題である。Twitterに溜まる多くの人々からは、左派を中心に強い批判の声が寄せられている。2018年には「保守思想、趣味は筋トレ、好物は肉」というbioの「宇与くん」というマスコットキャラクターを通じて、正にTwitterにて共産党などの野党支持者や中韓への誹謗発言を行ったことで大炎上した一件は記憶に新しいだろう。「宇予くん」は日本青年会議所国家戦略グループ憲法改正推進委員会が憲法改正に向けてネットを使った工作活動の一環として、同委員会の黒川明委員長(当時)がランサーズのコンペ形式で発注して作成したことが明らかになっているのである。この一件では、日本青年会議所は公式に謝罪を表明するに至った。
 その日本青年会議所が今度のパートナーシップ提携に合わせて「情報を見極めよう!」などと言い始めているのだから、左派のネット民達は著名人や学者も含めて大騒ぎしている。保守的な政治志向を持つネット民であっても、所謂典型的なネトウヨでない限りはこれを良しとする人は少ないように見受けられる。彼等の中でもまた嘲笑気味に呆れている人は多いようである。


 リベラルな学者や知識人からネットに散在する有象無象の左派の論者達まで、一様にJCを「ネトウヨ」であると形容している。先に述べた「宇予くん」はまさにネトウヨ的な発言を繰り返していた訳だが、その適当極まりない名前からして彼等JC会員の多くが恐らく「ネトウヨ」とは何かを知らないことは明らかである(何となれば「ウヨ君」とはネット左派が用いる所のネトウヨに対する罵倒語の一つなのであるから)。もっと言えば、あのマスコットを動かしていた役員ですらそれだけの貧しい「メディア・リテラシー」しか持ち合わせていないのである。


 京都に住んで夜の仕事に身を窶していた期間が長い私にとって、JCというのは非常に印象的な組織である。とりわけ、今はなきとあるガールズバーのキャッチ兼ボーイの仕事をしていた或る年の一月の冬の思い出は、聊かの屈辱感と共に忘れ難いものである。そういう接客業の立場として、私はJCという組織の活動の実態は兎も角として、その会員がどのような人々であるかということが身に沁みてよく分かるのだ。そこで見たものを少しTwitterに書いてみたら、非常に大きな反響があったので、こちらの媒体でももう少し考察でも交えて綴ってみようと思い立ったのである。

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