磯部一郎「生き急ぐ」書評
磯部一郎著「生き急ぐ」
著者自ら自己紹介、病歴の一部を語ってもらいましょう。
メメントモリという格言を想い起こします。
「人間は死ぬ。私は人間である。
故に私は死ぬ。」
でもまだ死んでいないし、当分大丈夫という仮定の上で日々過している。
他人はともかく、私は死なない、死にたくない。
やりたいこと、まだやりたいことが見つからなくても、人生これから!
と大方の人間は思う。
しかし、著者のようにガンに侵され
余命数ヶ月の宣告を受け、死が眼前に迫ると人はどんな生き方が可能なのか。何を選ぶのか。
死が予測されると心は錯乱のまま「死のトンネル」(著者の言葉)に吸い込まれて行くだけなのか。それなら自死を選ぶか。それとも現実を直視し、この今現成している幸いに目覚めその恵みを活かしてみるかどうか。この私の可能性が時間的にも、身体的にも一日一日と窄んでいく。
そして覚醒する。死ではなく、命を。
がんになる前の事業観と人生観は根本から見直される。後は自ら与えられた新たな人生の価値(意味)実現に向けて迷うことなく生き抜くこと。事業家として彼の資質が新たな事業計画とその実現に向け動き出す。それも驚くべきスピードを持って。その万感の思いと決意が本のタイトル、「生き急ぐ」に込めらている。
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