ガン友読書会

ステージ4のガン宣告を受け、ガンに関わる人たちの痛切な不安と悩みを少しでも軽くしようと…

ガン友読書会

ステージ4のガン宣告を受け、ガンに関わる人たちの痛切な不安と悩みを少しでも軽くしようと、本を通して少しでも心が触れ合える読書会を開催。読書会に参加した方の感想を綴っていきます。https://gantomo.hp.peraichi.com/

最近の記事

少年と老人

森鴎外の「妄想」を読む。10歳の少年がキリスト教関係のある記事にこんな思いを綴る「はじめまして。ぼくは小学3年生の男の子です。ぼくには疑問に思うことがあります。考えてもわからないので教えてください。一つ目は人間は生まれる前にはどこにいたのか。2つ目、人間は死んだらどこへ行くのか。3つ目、やりたいことをやっても、どうして死んでしまうのか。考えると暗い気持ちになります。よろしくお願いします」。そして明治の医者であり文学者でもあった森鴎外は明治43年50歳の時「妄想」で老人(自ら)

    • 2月27日ガン友読書会のお知らせ

      ★2つのヘーゲル研究に学ぶ 西研「ヘーゲル•大人のなり方」/NHK出版と山田有希子の「逆さまの世界ヘーゲル哲学」/東大博士論文から ①再読して見えてきたことはこの間の読書会で取り上げてきた椎名麟三、トルストイ、キルケゴール、カールバルトの各人がその著作を通して生涯追求してきた課題領域と彼らの立ち位置が、漸く見えてきた。彼らにとっての究極的課題、根本対象が如何なる他の世界(自然•他者•社会•歴史)にか関わるか、また関わらないのか。問いの立て方は其々異なる。各人の立つ偶然の場所

      • 1月27日ガン友読書会のお知らせ

        15時30分から17時まで zoomで開催 新年おめでとうございます。私事で恐縮ですが3回目の肝臓ガン摘出無事終え自宅にて静養中。年末にラジオ番組で写真家 杣田美野里(そまだみのり)さんを知りました。北海道最北の離島、礼文島に夫と移住、子供をもうけかの地の植物を撮り続けた。ガン(肺から脳にも転移)を抱えながらも、写真集の表題となる「キャンサーギフト」として受け入れ2021年10月までいのちを全うする。享年66歳。年末に予約し退院後に目を通す。短歌を愛し、若かりし時、恩師の1

        • ガン友読書会に

          今月はお休みです。 この間少数で読書会が出来てありがたいことでした。しかも何人かの方々からスキとかフォローまで頂きありがとうございます。余命いくばく、残された時を抱きしめながら 1日を過ごしています。前向きさと後ろ向きが交互に訪れます。清濁/自己肯定と否定が 形而上と形而下とが分かちがたく、自由と拘束、善と悪 が美と醜悪、そして永遠と有限個物が双面の様相を呈しているようです。またガンの再発で入院、摘出。つくづく 私の場合に限っての話しですが、「キャンサーギフト」をしみじみと味

          ガン友読書会のお知らせ

          11月29日(水)16時から17時30分/オンライン 指定図書/唯識とEHフロム「自由からの逃走」、椎名麟三の諸作品 私は岡野守也著「唯識心理学/トランスパーソナルサイコロジーで学んでいます。切り口はどこからでもOK。そのわけは唯識思想そのものが示してくれるでしょうから。 私の切り口はエーリッヒフロムの「自由からの逃走」と椎名麟三の文学の異同です。フロムはヒットラー政権下のフランクフルトでフロイトとマルクスを学ぶ。ユダヤ人迫害を逃れるためアメリカに亡命。その後マルクスと

          ガン友読書会のお知らせ

          10月26日読書会のお知らせ

          椎名麟三と反出生主義 10月26日午後3時から4時30までオンラインでの読書会。年配の方なら聞いたことある戦後文学者。すでに遠い記憶の一人の作家が今日の反出生主義と共振していることに気付く。とはいえ、現在と彼が生きた戦前•戦中•戦後の世界は100年近い時の断絶を感じる。暮らしの骨格と細部の暮らしの姿、風景を生む時の流れに驚かずにはいられない。日本近•現代史のエネルギー革命の変遷や軍国主義から大正デモクラシー、再び滅びに向かう世界と日本の政治。史上初の共産党政権の樹立後の革命

          10月26日読書会のお知らせ

          看取りのドォーラ

          愛する人に伝えたい。マイレガシー 豊富な事例。一人一人の人生のラストシーン、その死に方はこれまでの生き方が凝縮。各事例に立ち入り深く関わりたい衝動に担当ドォーラは駆られる。しかしケジメを付ける時を告げ、後は遺族に託す儀式が含まれており用意周到。 *特に印象に残る事例4つ。 ①カソリック教徒で犯した罪で悔い改め切れぬ信者 ②死の床に着いた時点で牧師にも関わらず神を見失い、誘導イメージで恩師牧師との再会を子供に戻り、夕暮れまでに告白し神はいつも心にある事を気付かされる牧師 ③

          看取りのドォーラ

          カフカ、「変身」

          「変身」のザムザ一家は孫たちにいかなるレガシーを残せるか ある日等身大の昆虫に変身したグレゴール、兄思いのグレーテル、そして両親。理由は不明。あたかもヨブを襲った悲劇のように。家族に救いを理解を求めるのだが、語れば語るほど、昆虫となった身体の音声も昆虫の声帯となってしまった。不気味な音をギシギシ、軋む異様な音を発するだけで、伝わらない。口から異様な体液が糸を引いて床に落ちる。もう人間ではないのだ。なぜ分からないのだと。兄の変身により生活が困窮。やれることはやった。父は銀行の

          カフカ、「変身」

          8月29日の読書会お知らせ

          午後7時30分から8時30予定。*多少延長の場合もあり。 人は「死」にます。でも死ぬのは人間だけかしら。人間は他の生き物と違って、生きながら死ぬことを意識して生きる不思議な生き物。そして厄介なことには、自分でどう死ぬか、最期を迎えるか、一人ひとり決めねばならない。面倒くさい存在。もう知らない、アンタに任せたと言うならそれはそれで自己放棄を選ばないといけない。本当に厄介な生き物。生まれる時も、死ぬ時も、誰かの世話にならねばいけない、他者との助けが必要なんですね。じゃあ、どうした

          8月29日の読書会お知らせ

          ガン友読書会報告

          7月14日/世界はなぜ美しいのか この日はライフワークに直接関わるテーマ。つづめていうと個と類の関係構造。そして有限と永遠の関係を探究する旅の一里塚でした。取り上げた作品は芥川龍之介の遺書に関わる彼のアフォリズム、後輩に当たる高見順の詩集「死の淵」と同じく詩人の長田弘の「世界はうつくしいと」、「奇跡/ミラクル」、「死者からの贈り物」です。世代的には大正を生きた芥川、昭和(戦前•戦中•戦後高度成長期まで生き、胃がんで病院のベッドで死ぬ高見順。そして長田は戦後の廃墟と化した傷口と

          ガン友読書会報告

          葬送の仕事師たち

          ⚪私は、ステージ4のガン患者となり、この1年で2回の手術を受けました。(大腸ガンと転移先の肝臓ガン摘出)。とはいえ私の場合他の患者さんと比べかなり楽。抗がん剤の副作用も脱毛以外目立った障害はなく、メンタルはいたってポジティブです。「生きている!生命力がフツフツと湧き起こってくる!」の衝動を強く感じます。生きている事のありがたさを感じてます。今出来ること、残された時を噛みしめています。しかし、時として、青年の頃のように、死ぬことがえらく先のように思えてくるのです。ここには生があ

          葬送の仕事師たち

          世界は美しい

          芥川、高見、長田が見た世界 芥川龍之介は、「或る旧友への手記」で「しかし僕のいつ敢然と自殺出来るかは疑問である。ただ自然はこういう僕にはいつよりも一層美しい。君は自然の美しいのを愛し、しかも自殺しようとする僕の矛盾を笑うであろう。けれども自然の美しいのは、僕の末期の目に映るからである」と。問題はその末期の目が世界と同時に見ている自己をどのように見ていたか、感受していたか。 芥川龍之介はその後自死した。高見順は世界が美しいと感受し、生きとし生けるものに愛情の眼差しと感謝を注ぐ時

          葉っぱのフレディ

          長田弘の詩 アメイジング・ツリー おおきな樹があった。樹は、 雨の子どもだ。父は日光だった。 樹は、葉をつけ、花をつけ、実をつけた。 樹上には空が、樹下には静かな影があった。 樹は、話すことができた。話せるのは 沈黙のことばだ。そのことばは、 太い幹と、春秋でできていて、 無数の小枝と、星霜でできていた。 樹はどこへもゆかない。どんな時代も そこにいる。そこに樹があれば、そこに 水があり、笑い声と、あたたかな間がある。 突風が走ってきて、去っていった。

          葉っぱのフレディ

          5月26日読書会のお知らせ

          ガン友読書会のお知らせ オンライン(Zoom):5月26日 18時〜19時30分 ガンでなくとも、興味ある方の参加をお待ちしています。 長田弘、高見順、芥川龍之介 詩人、文学者の末期の眼を通して「奇跡」や「美」について考えます。誰もが身近に同じような経験を持っていのではないでしょうか。 それぞれの作家についてはほんの少し、目を通した程度の知識しかありません。あるのは強く心に響いた箇所。そして皆さんと一緒に新たな気付きと発見が出来たらと願っています。 開催日の2,3日前

          5月26日読書会のお知らせ

          グリム童話から

          死神の使いと死神の名付け親の2篇 2つの物語の死神は人間臭くて、とんまなところがある。 けれど物語の最後では、死神の威厳をもって、人間をあちらの世界に引き渡す。 ⚪「死神の使い」:死神が大男に声をかけると、大男は死神を恐れず、大胆にも道で喧嘩する。あろうことか、死神をこてんぱにやっつけ道端に倒してしまう。死神は、「人間が死なずにこの世にのさばってしまったらどうなるのか」心配する。その姿を見た通りすがりの若者が気の毒に思って助けてあげる。お礼に若者に死ぬときは事前に使いをや

          グリム童話から

          磯部一郎「生き急ぐ」書評

          磯部一郎著「生き急ぐ」 著者自ら自己紹介、病歴の一部を語ってもらいましょう。 メメントモリという格言を想い起こします。 「人間は死ぬ。私は人間である。 故に私は死ぬ。」 でもまだ死んでいないし、当分大丈夫という仮定の上で日々過している。 他人はともかく、私は死なない、死にたくない。 やりたいこと、まだやりたいことが見つからなくても、人生これから! と大方の人間は思う。 しかし、著者のようにガンに侵され 余命数ヶ月の宣告を受け、死が眼前に迫ると人はどんな生き方が可能なの

          磯部一郎「生き急ぐ」書評