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産直市で農産物を出荷して売れない理由


作る事のプロが販売のプロだとは限らない

本業がスーパーの店員なので、新規に産直コーナーに出荷しはじめた人から、「出しても残るんです」だとか、「売れないんです」といった相談を受ける事があります。
自分の職場と関係のない農家の方からもよく声をかけられます。
(農家の方を紹介するコミュニティFMラジオ番組をしている関係ですが)
そして、その方の農作物を見ると、それはそれは綺麗で、美味しそうで(実際食べたら美味しいことが多い)上手に作られているなあ・・と感心します。
ただ、売れ残ったり、売れなかったりしているので、作る事はプロフェッショナルでも、販売に関してはまだまだ伸びる余地が無限大なんだと思います。

そもそも農家の方の売りたいと消費者(購入者)の買いたいが違う

いいものは売れて当たり前なんですが、売れる!と確信した物が売れないということは買いたい!と思われていない理由があるはずですよね
(スーパーで働いていてもそのポイントを外すことがよくあります(;^_^A)
いくつかポイントがありますが、簡単なところを列記します。

量目


たくさん入っていると嬉しい場合と少量の方が嬉しい場合。
やみくもに大量に入れてお買い得感を出せばいいとは限りません。
農家の方で特に量目を多く入れているのが高齢の農家の方です。(全員がそうではありませんが)昔から自分たちが買う時は家族構成人数も多く、買いだめしていたので、大容量が好まれるであろうと思ってしまいがちなんです。
例えばキャベツや白菜といった大型野菜は1玉でも多すぎると思う消費者が多いのが現状です(スーパーではカットが主流で売れています)
このような野菜は1物3価といいますが、1つの物から3つ以上の価値を作る方法で提供するとよいと言われています。
キャベツや白菜を1玉売、1/2カット、1/4カット、刻み、といった具合に色々な形態に加工して販売する手法です。
この方法だと、消費者が選択できる幅が広がります。販売する側も、加工して販売する事で、売り切れている加工形態の商品を次から構成を増やすといったように売れ筋をつかんでいくことが出来ます。
カットする野菜だけでなく、じゃがいもなども1個売、4個入、大容量1Kg入りなど酒類を増やしていくことが重要です。
また、野菜によってはあえてサイズを小さく作る方が売れるケースがあります。大根やゴボウなどの根菜類は太く、大きいと敬遠される傾向にあります。作り手としては立派な野菜を出荷したい気もわかるのですが、家族構成平均が2人を切っていると考えると使い切れません。
あえて小さく状態で収穫したり、半分にしたりする方が売れるケースがあります。


商品の差別化

農家の方と話していると、どの農家の方にも丁寧に農業と向き合われていて、独自のこだわりがあります。
例えば、朝取りを出荷する。
減農薬や無農薬栽培の安心安全な農作物。
時期をずらして促成、抑制栽培をして他の人と出荷時期を合わせない
使用する肥料や道具へのこだわり
栽培方法のこだわり(高設栽培、水耕栽培、畝の立て方、蜂の交配など)

ただ、それが消費者に伝わっていない、アピールをしていない方が多いのが現状です。お話を直接聞いてみて、圃場の見学に行ってみて、こんなこだわりがあったんだ!と気づかされるのです。
どんなに手を入れていても、こだわっていても、伝えていなければ価値になりません。
産直市であれば限られたスペース、キャリー内などしかありませんが、農産物を入れている袋にシールを貼る、キャリーにこだわっている事をPOPにして貼りつけるなど、消費者に知ってもらう必要があります。
文字数も限られ、スペースも限られる中、最大限のキャッチコピーを考えるんです。
個人的なお薦めなPOPの文言は、感情を入れる、実体験を列記する、です。
「孫が喜んで食べるので、農薬や化学肥料がやれんのです。」
みたいな感じです。

ストーリーに人はひきつけられる

もしお店でお買い物をするなら、知っている人の店と知らない人の店のどちらをよく利用するでしょうか?
このように、産直市への出荷物の一番の強みは生産者の名前を入れている事なんです。
知らない生産者より、知っている生産者の野菜を消費者は選びます。
そもそも知らない方に知ってもらうにはどうすればよいのでしょうか?
正解はありませんが、私は相談されたら、「家族構成や、農家を始めたきっかけなどを含めた自己紹介を感情をこめてPOPで付けるといいですよ」と伝えています。
例えば(もっと上手な自己紹介POPを作る方は多いですが)
子どものアレルギーをきっかけに、仕事を辞め、家族でこちらに引っ越してきました。就農1年生ですがお日様と水の恵みに感謝しながら日々野菜作りに奮闘中です。子どもが食べて安心安全な野菜を作っています。お気に召されましたらぜひ手に取ってやってください。

みたいな感じです。
嘘を書くのはご法度ですが、応援したくなるようなエピソードがあるといいですね。
野菜の事は知らないけど、自己紹介を読んで、この生産者のことは覚えている・・となればリピートしてもらえる確率が上がると思います。
面白くなくても、誠実な内容を心掛ける事がポイントです。


価格競争はお薦めしない

売れないとき、値段をどんどん下げていく生産者の方がかなりいらっしゃいます。
野菜や果物の価格弾力性は(値段の上下によって売れ方の変化のぶれが大きい、小さい)ありますが、一定の値段を下回ると価格弾力性がなくなります。
例えばキャベツ1玉198円と100円では売れ方は大きく違いますが、100円と50円では大きく変わらないのです。
つまり、値段を下げ続けても売れる数は変化しなくなります。
最も大事なのは売り上げです。値段を下げればその分たくさん売らなければいけません。大量に収穫できてしまった場合は最大売り上げ金額を予測しましょう。販売数を増やして値段を下げても売り上げが下がる場合が多いのですから、そもそも出荷しないほうが得なのです。
残った野菜の為に、事前に販路を広げておくことが重要です。
産直市も今では増えてきました。近場になくても、普段出荷する産直市以外に、大量に収穫した際の販売先を登録しておくのがよいと思います。
他の生産者が50円で売っていても、自分が100円で売ればよいのです。100円で売っても売れるストーリーや差別化に日頃取り組んでいれば普段買ってくれている消費者は選んでくれます。

まとめ

この記事はずいぶん前になんとなくまとめた文章です。
もっと新しい内容にアップデートしないとなあ・・と思いながら綴りました。
ご年配の農家の方で産直市に出し始めた・・といった方に向けての記事なので上記のようなことが得意な生産者の方には恐らく響かないし、突っ込みどころ満載だろうなあ・・と思いながら読んでいただけると幸いです。

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