抱きしめたい一冊
就職活動の最中、
現実逃避の仲間としてたまたま手に取った作品が私の宝物になった。
数年前、正規職員じゃない自分は、鬱々とした気持ち、ムカムカとした気持ち、悔しい気持ち、メラメラとした気持ち、萎える気持ち、100種類くらいの気持ちをリュックに押し込んで熱心に図書館に通っていた。
「正直この勉強全部意味ないんじゃないか?」
「もっと死ぬほど勉強しないとダメなんじゃないか?」
なんて矛盾だらけの考えが頭の中に常に居座り、遊んでいる時の自分は悪だと思っていた。
今思い返すと本当に毎日情緒不安定ながらも健気に頑張っていたな、とつくづく思う。
昔から読書が好きだったので、図書館にいれば自然と本を読みたくなるわけで(勉強したくなかっただけかな?)、本棚の間をうろうろとしていたある日その本を手に取った。
「スロウハイツの神様」辻村深月
思い通りの自分になれない私の背中をそっとさすってくれるような本だった。
やってみたいこと、そこに真っ直ぐ食らいついていくことってどんなにツラいことだろう。時にそれがかっこ悪くて「ダサい」なんて思えることもあるけれど、どうしようもなく強く「カッコよく」思える時もある。
熱い情熱を抱えてずっと走り続けることはとても疲れるけれど、やらずにはいられない、やらなくてはいけないときもきっとある。
だけど、もし、全てを捧げて手に入れたものが、想像していたようには輝いていないありふれたものだったらどうすればいいだろう。
自分が欲しかったものはこんなものじゃなかった、
そんな風に思ってしまったら、その時、自分はどうするんだろう。
次はどこに向かってどうやって進めばいいんだろうか。
だから私は、そのことを考えることを避けていた。
とても怖かったから。
作中でこんなセリフがある。
その後にはこんな文章が続く
本を読んで泣いたのは初めてだった。
今頑張っていることが、全力を注いでいることが、すべてうまくいかなかったときのことを考えると怖くて眠れなかった。
自分の何がいけないのか、
あの子にはあってあたしにはないものはなんなのか、
そればかりが頭を占領して自信を失っていく日々だった。
でも、叶わないこともあるんだって、
そんな当たり前のことに、やっとその時気づいた。
それでもいいんだって思えた。
夢ってなんだろう。「やりたい」仕事ってなんだろう。
私もスロウハイツで自分の「武器」がなんなのか、必死になって探してみたい。
私の背中を押してくれた
スロウハイツの神様に、
そして辻村深月さんに、
あたたかなありがとう を込めて。