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【悪役】帰ってきた素晴らしき悪役列伝第3回 「アロンゾ・ハリス刑事」

映画「トレーニングデイ」に登場。

本物のギャングが出てくるということで一部有名な本作だが、この映画の主人公であるアロンゾ・ハリス刑事もなかなか変わってる。

ロサンゼルスのとある郊外に白人のエリート若手警官ジェイクが配属された、大卒エリートな風貌漂う彼はすぐさまストリートを知り尽くしたベテランであるハリスと手を組むことになる。

ハリスは見た目からオラついており、到底刑事にはみえない。それでも若手のジェイクは何も言えずハリスの言動に振り回されるままトレーニングの1日がはじまった。

しかし、ハリスの言動は刑事のそれと明らかに違っていた。

押収した麻薬をジェイクにかがせたり、ギャングと明らかに癒着していたり、目の前で女性を強姦していた二人組から金を奪ったら即見逃して放置にしたり・・・・とまさにやりたい放題だった。

ここでジェイクは気が付いてしまう。

実はアロンゾこそがストリートのギャングや半グレたちを牛耳っているボスだったのだ。

ロサンゼルスの麻薬犯罪が横行する街を「ジャングル」と呼び、自分を狼とうそぶいていた。

ギャングがいれば警察の権力をちらつかせて恫喝し金を要求し、市民の助けにも耳を貸さない。

それどころか市民もギャングも表から裏からも支配する彼の姿はまさに暴君そのものだった。

ジェイクにできることは強姦された女性を救うぐらいのことしかできなかった。

やがて、アロンゾについていけなくなったジェイクは彼にかかってるある真実に気が付く。

アロンゾは実は昔ロシアンマフィアとかなりもめてしまったことがあり、それがきっかけで彼らに借金をしてその返済期日が迫ってきていたからだ。

アロンゾはギャングは恐れないが、マフィアはかなり恐れていた。規模が違ううえに情報収集力も高いからだ。

アロンゾはやがて情報屋のアジトに強襲をかけて、強盗殺人を行うほど暴走してしまう。

彼から得た金で借金をチャラにしてしまおうという考えだ。

そして、すべてを知ったジェイクもつぶそうとしたアロンゾはあえてギャングたちが集う集合地域の中にジェイクを置き去りにして去ってしまう。

ギャングたちに捕まり拷問を受けるジェイク、日々アロンゾや警官に虐げられている彼らの鬱憤は若いジェイクに向かおうとしていた。

だがそんな矢先だった。

ジェイクはギャングのリーダーの名前を知り、思わず叫んでしまう。

「お前の苗字知ってるぞ!さっきお前の従姉妹がレイプされてたんだ!俺は彼女を助けたんだ!」

リーダーの男は少し疑いつつも、電話で確認をして真実だと知るとジェイクを開放するのだった・・・。

すべてを仕組んでいたアロンゾに復讐をするべく、彼を追いかけていくこうして追うものから逆に追われるものに変わってしまったアロンゾはジェイクと交戦の末に彼に借金のかたにするはずだった金をすべて奪われてしまうのだった。

すべてを支配していたはずのアロンゾは無力感のあまり、叫ぶ。

「俺はキングコングなんだ!この街を支配している!そのおれにこんなことしてタダですむと思うのか!」

そして、なりふり構わず彼が支配するすべての人間に命令をかけるように雄たけびをあげる。

「だれか、あいつを殺せ!!!!」


だが、玉座がなくなった暴君を誰が恐れるのか。もはや彼の声に耳を貸す人間はいなくなっていた。

無力感に打ちひしがれるだけの孤独なアロンゾは誰も救うものがおらず、翌朝ロシアンマフィアの報復を受けてハチの巣になり絶命したのだった・・・。

確かにアロンゾは暴君だったが、若手のジェイクにはかなり真摯に彼の仕事を教えていた。

もしもジェイクがまじめで理想主義者な白人でなく、黒人であったり白人であってもある程度世俗慣れをした現実主義者だったのなら違う結果があったのではないか。

それどころか、もしかしたら最初は彼も理想に満ちてたはずだったのにどうあがいても消えない犯罪を消すために自分が悪の側にならざる終えなかったのかもしれない。

アレンゾを知り尽くした情報屋の男は「お前は若いころのアロンゾによく似ている」とジェイクに言っていた。

どんなに理想に燃えていても、いつかは現実を知り打ちひしがれる時が必ずくる。この世は理不尽なままで、悪は消えずに別の悪になるだけ・・・。

もしかしたらジェイクも、アロンゾのような悪徳刑事になってしまうのかもしれない。

さらにカットされてしまったが、未公開シーンでは若いころの情熱に満ちた自分を思い出すシーンがあった。

(なぜこれをカットしてしまったのだろうか、理解に苦しむ。)

彼に似た悪役でグリーンランタンのシネストロという男がいる。

シネストロもまた、荒れた惑星を守護する任務を受けていたが任務の最中に奥さんを失い混沌を支配するのは結局恐怖しかないという現実を知り相手から恐れられることで力を増す黄色のランタンとリングをみつけだした・・・という悲しいかつてのヒーローがあった。

また、作品は違うがトランスフォーマーに出てくる悪の破壊大帝メガトロンは「圧政を通じての平和」を掲げる悲しいカリスマだった。

結局、混沌とした地域を支配するには力がある程度必要なのかもしれない。

そういう意味で言えばこの世から犯罪は消えないのだろう。


ちなみに演じる役者はなんとあのデンゼル・ワシントンだ。

普段善人役のイメージがある彼だが、こんな悪役だって器用にできる俳優なのだ。

これとアメリカンギャングスターに出てくるデンゼル・ワシントンが何気にお気に入りだったりする。


陰湿性:A  (ほとんど悪意の塊にしかみえない悪質警官)

頭脳:A (だまし討ちや罠にハメるなど知能は高い)

強さ:A(銃撃戦も喧嘩もそこそこできる)

主張:S (俺が街のキングコングだ!)

人望:C (顔は広いが、彼のために戦う人間は皆無)

権力:A (狭い郊外だが、ロサンゼルスの一部地域を完全に表からも裏からも支配している)





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