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【映画レビュー】滅びゆく貴族たちと怪獣の戦いを描いた史劇「ジェヴォーダンの獣」について…


Twitterで「ジェヴォーダンの獣」が話題になっていた。

どうやらリマスター・完全版の劇場上映がされており、再び話題となっているようだ。

これは懐かしい映画だな…。

これは自分にとっても思い出深い映画の一つである。

「ジェヴォ―ダンの獣」の思い出

2002年、自分はまだ中学一年生だったのだが、深夜に唐突に本作の番宣が流れ少女が一瞬で怪獣に無惨に食い殺される衝撃的な映像は本気で衝撃を覚えトラウマを覚えた。

「なんなんだこれは…」と。

また、実際に起きた事件がモデルとなっている事にも恐怖を覚えた。

やがて、当時レンタルビデオ屋の店員と仲のよかった俺は本作を確保してもらった。

そして、本作のDVDを家に持ち帰り視聴したのだが、まあ驚いた。

めっちゃくちゃ面白いのだ。

本作は当時のフランスのエンターテイメントとして画期的な作品だったのだ。

「ジェヴォ―ダンの獣」のあらすじ

本作のあらすじは、18世紀フランスのジェヴォ―ダン地方に突如としてやってきた謎の怪獣による大量虐殺を突き止めるために考古学者一行が怪獣を追いかけるといった内容になっている。

この考古学者がチャラくプレイボーイで、貴族の娘といい仲になったりする。

しかし、この考古学者は次第にこの事件を追いかけていく内に…一つの衝撃的な真実にたどり着く。

それは…この怪獣による虐殺事件の背景には秘密組織が絡んでいたのだ。

果たして考古学者の男は、この怪獣と秘密組織による大量虐殺を食い止めることができるのか!!!

シナリオはヒジョーにシンプルだ。

しかし内容は非常に濃厚で秀逸、中学生男子の俺はあっさりと本作の魅力になってしまったのであった。

そして、本作は「ただの怪獣映画ではない要素」を複数もっているのだ。

「ジェヴォ―ダンの獣」は「ただの怪獣映画ではない」三つの要素

①濃厚な登場人物たち

本作には複数の登場人物が登場する。

まず主人公の考古学者なのだが、コイツはイケメンで博識、おまけに貴族主義・キリスト教主義の考えにこだわらず、多面的・科学的な見解から事件を追いかけるまさに21世紀的な人物だ。

‥‥のだがイマイチ影が薄い。

というのも本作の主人公には相棒・親友であるインディアンモホーク族の生き残りであるマニが登場する。

コイツの方が少しカッコよく印象に残ってしまうのだ。

ちなみに演じる俳優は現在でも多くのハリウッド映画で活躍するマーク・ダカスコスだ。

また本作は主人公と対立することとなる秘密組織の構成員で怪獣を裏で操る貴族が登場する。

これがまた面白い。

ハリウッド映画であれば、こういう役はあっさり怪獣の餌食になるが本作のこの男はある意味では怪獣すらも利用するという立ち位置にいる。

そして、その本性は本作のヒロインであり自身の妹である貴族の姫(考古学者と恋仲になる)を愛する本当の狂人であったのだ‥。

まさに「怪獣よりも恐ろしいのは人間である」という人間の暗部を象徴する人物だ。

演じるのはヴァンサン・カッセル。

現在のフランス映画界を代表するスターの一人である。

本作のラストでは主人公の考古学者とこの変態貴族兄貴との最終決戦が描かれる、もうそこに至っては怪獣がどうでもいい存在になってしまっているのだ。


だが、それがいい。

数多くある怪獣映画の一作にはこういう映画だってあってよいのではないかと個人的には思ったりしている。


②滅びゆくフランス貴族たちの最期の栄華と暗部

本作の特徴として、もう一つとしてあげられるのは滅びゆくフランスの貴族たちの最期の栄華、最期の繁栄を描いた部分だ。

頻繁に会食シーンが行われ、その優雅さとファッションのきれいさには怪獣映画が嫌いな女性にもおすすめの作品となっている。

本作の登場人物のほとんどはフランス貴族であり、一見彼らは優雅に見えるがその裏ではキリスト教と結託し、異教徒を差別し弾圧するという側面がある。

本作の黒幕ともいえる秘密組織のメンバーもそういった異教徒たちを殺すために怪獣を利用していたという側面もある。

③怪獣も人間も逆らえない時代という悲しさ

本作は先ほども述べたように主人公たちはフランスの貴族である。

彼らもまた時代に翻弄された犠牲者の一人なのではないか、後にフランス革命で行われる虐殺と暴虐と乱痴気をみていると安易に彼らもまた否定できなくなってしまうのだ。

そして、当然本作に登場する名も無き怪獣もまた犠牲者にしかみえないのだ。

結局、この怪獣の正体は何だったのか…それはわからない。

だが、俺はこの怪獣はもしかしたら古代から生き残った大型肉食哺乳類の生き残りでそれが人間に利用された姿ではないかと思っている。

もしも、この説が事実であるのならば、この怪獣も貴族たち同様時代に取り残され翻弄されてそして散っていった悲しい存在なのではないだろうかと思う。

怪獣と貴族、どちらも時代の犠牲者として消え去っていく。

そんな悲しい姿になぜか悲壮感を抱かざる負えないのだ。

そして、本作をふと思い出してきがついた。

本作を保管してくれていたレンタルビデオ屋。

あの当時はありふれた存在であった彼らも、時代に翻弄されてしまった存在なのではないだろうか。

今あの仲のよかった店員はどこへいったのだろう。

なんというか、本作の事を紹介しながら少し胸にくるものがあった。

今となれば、いい時代であったのではないだろうか。

時を巻き戻せばあの店員にありがとうと感謝の言葉を言いたいものだ…。

まとめ

いかがだっただろうか。

まさに史劇×怪獣映画×アクション映画の異色のキメラ的融合を果たした大傑作である本作。

時間があれば、ぜひ劇場で見ていただくことをお勧めする。

点数は95点!!!


怪獣を捕まえるシーンがあれば、もっと100点だったけどね個人的には…。



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