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金井雄二「動きはじめた小さな窓から」

この詩集は1993年6月に発行されたものであるから、今から27年前の作品集ということになる。
金井氏が若い頃の作品だ。
最近の作品より、ずっと尖っている。
そして、何か、作品の深いところに不協和音が流れていることが読み取れる。

その正体が何なのか、少し考えてみた。
そして気がついたのは、女性の描写が不協和音の原因だということだ。

金井氏の若い頃の「憧れの女性」と思われる人物が登場する。その描写は丹念に美しく描かれており、好意を感じていたことが素直に分かる。
だが、そこにこそ不協和音があるのだ。
その音の正体は、多分「赤ん坊の鳴き声」
赤ん坊の鳴き声は、不快だ。それは、不快でなければ大人たちが助けてくれないから当然だ。
ここには、女性に恋する金井氏だけではなく、母親から暖かさだけを求める金井氏の姿があるのではないか?

その赤ん坊が作品の中にいるから、この詩集は深いものになっているのではないだろうか。

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