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閲微草堂筆記(193)あの世の富貴

巻九 あの世の富貴
 呉恵叔が言うことには、あるところに疫病で死んだがその後生き返った者がいた。彼は冥府の役所でたまたま旧友に出会ったのだが、友人は襤褸を着て枷を掛けられていた。互いに顔を合わせると、心中悲喜こもごも様々な感情が入り乱れたが、彼は思わず握手を交わし嘆息しながら言った。

「君は生涯、裕福だったはずだ。その富をここまで持ってくることはできなかったのかい?」

 彼は辛そうに眉間に皺を寄せて言った。

「富を全てこちらに持ってくることはできるんだ。ただ人々は持ってこようとしていないだけなんだよ。生前功徳のあった人は、ここに来ると必ず裕福になることができるんだけどさ。世間の人に早くこちらに富を持ってくる計画をたてておくように伝えるといいよ。」

 この話を聞いた李南澗は言った。

「いい話だなぁ!富がまったく無駄になると言われるよりましだというものだ。」

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