ネトウヨがなぜ安倍・岸田を襲撃したのか

昨年7月,日本における現代政治史上,類を見ないような事件が発生した.
安倍元首相の暗殺である.
安倍元首相は保守層からの圧倒的な支持を集めた一方,リベラル層からは憎まれ,多くの批判を集めたのも事実だ.そのため,犯行直後には犯人は左翼ではないのか,といった書き込みがネット上では多く散見された.しかし,犯行の動機が解明されると,大方の予想に反して犯人の山上徹也はいわゆる「ネトウヨ」であった.
また,安倍襲撃の模倣犯であり,岸田を襲撃した木村隆二も,自身のツイッターで排外主義的な投稿をしていて,自民党系市議の開いた市政報告会にも足を運んでいたという.
一体なぜ「ネトウヨ」であるはずの彼らが,自民党の政治家である安倍,そして岸田を襲撃したのだろうか.

木村隆二と山上徹也の共通点は「反権力でネトウヨ」であるということだ.反権力でリベラルならば,立憲や共産など,自らの意見を代弁する政党がいるため,そういった政党を応援し,支持することで自分の主張を政治に反映させることができる.

一方で,自民の利権政治には飽き飽きしているが,女性や外国人,障碍者などのマイノリティの権利は認めてほしくない,というように「反権力でネトウヨ」であるならば,その考えを代弁する政党は存在しない.そのため,民主主義を破壊する暴挙で自分の主張を政治に反映させようとしたのではないだろうか.

人は他人より優れた立場にいたいと思う生き物だ.
例えば,低学歴・低収入で社会的地位はないが,「男性である」などの社会的優位性を持っている場合,そういった人がマイノリティの権利を認めず,社会的優位性を維持しようとするのは当然のことだ.
「自民党の利権政治をよく思っていないが,マイノリティの権利を認めてほしくないので,消去法で自民党を支持している」というネトウヨ層も一定数いるだろう.
彼らの意見を政治に反映するという点においても,権力を切り崩すという観点からしてみても,反権力で右派の政党があってもよいのではないだろうか.

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