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巨大化した深海生物の謎

巨大な生き物の多い深海生物。
例えば、ダイオウイカ、リュウグウノツカイ、シーラカンス、タカアシガニ、ダイオウグソクムシ etc.

ダイオウイカは世界最大級の無脊椎動物、タカアシガニは世界最大の節足動物、ダイオウグソクムシは世界最大の等脚類です。
世界最大級の硬骨魚であるマンボウは、主に水深200~800mの水域に生息しているのではないかと考えられています。

今年、ダイオウイカが生きた状態で発見されました。
ただ、かなり衰弱していますね...
深海生物はこういう状態で発見されることが多く、深海で元気に活動している状態で発見されることは滅多にありません。

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ウシマンボウ(Wikipedia)

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タカアシガニ : オスがハサミの部分を広げると、3~4mにもなる(Wikipedia)

では、なぜ深海生物には巨大化した種が多いのでしょうか?

① クライバーの法則
大きな生き物は代謝が少ないため、食事量も少ない、というのがクライバーの法則です。
生き物(食糧)の少ない深海で生き残るため、巨大化して代謝を少なくしたのかもしれません。

②ベルクマンの法則
体が大きいと、体重に対する体の表面積が小さくなります。
そうなると、体から逃げていく熱を減少させることが出来ます。
深海の水温は約2℃です。
冷たい深海で生きながらえるため、体内の熱を保つ必要があります。
そのため、巨大化して比表面積を小さくしたのではないか、という説があります。

しかし、深海生物には変温動物も多く、ベルクマンの法則は無関係ではないかとも言われています。

③ 外敵が少ない
深海にすむ生き物は少ないため、天敵も少なくなると考えられます。
餌は少ないが、ライバルも少ないので問題ない。
そのため、巨大化が可能だったのではないか?
そんな説もあります。

④ 水圧に耐えるため
深海の高い水圧にも耐えられるよう、巨大化したのではないか?
巨大化すれば耐えられるというわけでもありませんが、無いとは言えない説です。
一方で、深海には小さな生き物も存在します。

色々な説がありますが、今も確かなことは分かっていません。

そもそも、深海の調査自体が十分に進んでおらず、生態の分かっている深海生物は僅かです。
どのように繁殖しているのか、成長過程はどんなものなのか?
生息域も含め、深海生物は謎だらけです。
生きている化石として知られるシーラカンスも、繁殖などの詳しい生態については今も不明です。

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シーラカンスの標本(Wikipedia)

光の届かない高水圧の過酷な環境が、観測を困難にしています。
深海生物は個体数も少ないため、発見するだけでニュースになります。
それも、衰弱して海の表層に上がってきたものではなく、深海で活動している状態となると、余計に難しいです。
海底についても、どんな地形が広がっているのか、よく分かっていません。
地形の約95%が未だに不明です。そこまで調査できていないんですね。
深海域の海底の組成(どんな物質、鉱物が多いのか?)や、その地下に生息する微生物はどんなものなのでしょうか?

詳細な地形が明らかになっている月や火星の方が、深海よりもよく分かっていると言っても過言ではないと思います。

最近では、技術の発達や多くの知見が蓄積されたことにより、以前よりも深海の調査が進んでいます。
深海の状態や生き物の生態が明らかになることで、巨大化の謎も解ける日が来るのではないでしょうか。


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