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製品の使用環境の違いによる変化点管理|トヨタ流開発ノウハウ 第12回

皆さま、唐突ではありますが、製品の使用環境についてどのように考えていますか?

私の前職では製品が自動車だったので、様々な使用環境を想定し、評価や確認を行っていました。さらに評価だけではなく、設計仕様に至るまで使用環境の変化により、内容を検討していく必要がありました。

例えば、日本とアメリカで同じ自動車を販売する事にします(法規制などはもちろん異なります)。

自動車で最も影響するのが道路事情です。

アメリカのロサンゼルスなどがある西海岸では、東海岸のニューヨークなどとは異なる、車線が多く、さらに信号間の距離が長いのが特徴です。

日本ではどうでしょう?

日本の場合はアメリカほど信号間の距離はなく、車線も少ない。これがどのように設計仕様に反映されるのでしょうか。

アクセルのレスポンスなどは、日本とアメリカで異なる場合があります。
アメリカの場合は、信号間の距離が長いため、アクセルを強く踏み、目標速度に達してから、アクセルを緩める傾向にあります。
そのような運転の仕方は、信号間の距離が長いために生まれた運転手法でしょう。 

同じような運転手法を日本で試したらどうなるでしょうか?
信号間の距離が短いため、アクセルを強く踏んでも、すぐに次の信号にひっかかってしまう。
結果、アクセルとブレーキ、ON-OFFが激しくなってしまい、同乗者に不快感を与えてしまう可能性があります。

このような違いから、アクセルを多少強く踏んでもあまりスピードが上昇しない(エンジン回転数があがらない)仕様と、その逆で、アクセルを強く踏むとすぐにスピードが上昇する(エンジン回転数があがる)仕様の2種類を検討しなければならないのです。

しかし、アクセルを強く踏むとスピードが上昇しやすくなってしまい、飛び出し感を感じてしまう可能性があるため、十分に注意が必要となります。

このように、製品が使用される環境で仕様の違いが発生する可能性があるため、設計者は製品がどのような環境で使用されるのかをしっかりと確認しなければならないのが現在の設計者に求められています。

製品の使用環境の違いにより、設計仕様を変更しなければならない理由は十分に理解していただいたところで、このような使用環境はいつのタイミングで検討しなければならないのでしょうか?
また、皆さまはどのタイミングで検討していますか?

商品企画の段階で販売する国など、種類はすでに立案できている前提でいきますと、基本設計の最初の段階で使用環境の違いを明確にしなければなりません。
このタイミングを逃してしまうと、基本設計に入ってしまうため、手戻りが発生してしまうでしょう。

まずは商品企画書を確認しながら、使用環境の違いを明確に抽出してください。
その違いを設計書(設計仕様書とも呼ばれます)に記載していきます。
記載していく中で、製品に求められる機能自体も異なる場合がでてくるでしょう。そうなるとコストも異なりますので、しっかりと変化点を抑えておく必要があります。

簡単に設計書の基本構成を紹介します。
 
①製品コンセプト(商品企画書から抜粋)
②機能系統図(製品に求められる機能のツリー図)
③設計方針(製品を設計するための大きなベクトル)
④設計するために必要な技術内容(求められる機能を満足するための技術的内容)
⑤製品仕様(スペックや目標性能、目標品質など)
⑥変化点管理
⑦影響マトリクス(各ユニットを変更すると影響されるユニットが何かを明確にするためのマトリクス表)
⑧設計スケジュール
 
⑥の変化点管理で使用環境の違いを明確にしていきます。その中で求められる機能を追加しなければならないときは②の機能系統図に戻って、再度検討します。
この設計書を中途半端な状態で基本設計に入ってしまうと、必ず手戻りが発生してしまいます。


皆さんいかがでしょうか?

使用環境の違いや見落としによる、手戻りは発生しがちです。
基本中の基本かもしれませんが、設計書作成の段階で使用環境を設計者が肌で感じ、確認するようにしてください。
その結果、フロントローディング開発スタイルのプロセスとなり、設計効率が向上するでしょう。

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