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トヨタ自動車最強の秘訣|トヨタ流開発ノウハウ 第5回

トヨタ自動車の強さの秘密を探ってみましょう。

コロナ禍でありながら、第2四半期の決算説明会では、販売台数、売上、利益ともに上方修正を行い、他の自動車メーカーが苦しんでいる中、1人勝ちの様子を呈しています。
なぜこのように他の自動車メーカーとの違いが出ているのでしょうか。約10年間トヨタ自動車に在籍した筆者が内部での業務プロセス、組織風土などを考えながら、強さの秘密を探っていきたいと思います。

1.金太郎飴の人材
 先日、トヨタ自動車を退職し、他の会社に転職した方の講演があったので拝見していたところ、プレゼンの資料の作り方、トヨタ自動車への愛社精神、退職したからには世の中に貢献し、トヨタ自動車に恩返ししたいと思う気持ちが私とまったく同じであることに驚きました。特に体系的に物事を捉える部分はまったく同じ考えとなっていました。
 例えば、問題解決をするときにトヨタ自動車ではA3の用紙1枚で記載するルールがああります。

図1.問題解決フォーマット

トヨタ自動車に在籍していれば、必ずこの問題解決のフォーマットを使用する事となり、何万人の社員全員が同じフォーマットを使用します。
 また、「図○○」は下に記載し、「表△△」は上に記載するといった細かいルールも定められています。トヨタ自動車のすごいところは1回決めたルールは全員が守り、同じものを使用することだと考えます。
 例えば、会社の敷地内の横断歩道を渡るときの指差呼称。トヨタ自動車にいる全員が行います。一旦停止し、「右よし、左より、右よし」と声を出して確認してから横断します。階段を昇降するときは必ず手すりを持ちます。安全がすべてに優先されるということから上記のような安全のルールが決まっており、それを全員が必ず守っているのです。

初めてトヨタ自動車に来られる方は驚かれるかもしれません。
話が少し脱線してしまいましたので元に戻します。

同じフォーマットを使い続けると、社員全員が物事のとらえ方、考え方が同じになります。また、体系的に物事を捉えることについても、新人研修や職場で日々、「何のための業務なのか?」と聞かれたり、目的と手段の議論を日々会話することで体系的に物事を捉えることが出来るようになるようです。
 私だけがこのような状態であれば、トヨタ自動車とは関係ない場所で身に着けたノウハウかもしれませんが、他の退職された方も同じという事は、トヨタ自動車内で徹底的に鍛えられるという事を退職して初めて知ることが出来ました。

2.技術者は自由に設計することが出来ない
 「自分にしか分からない設計は設計者のエゴである。自分しか知らない、出来ないではなく、誰でも分かりやすい簡単な構造で設計せよ!!」と日々言われてきました。これもテクニカルセンターだけで言われているのかと思ったら、どうやら違うようで全社的に同じ考えになっているようです。
 誰でも分かりやすい資料、フォーマット、プロセスを考えることで同じ品質のアウトプットが出しやすくなるという考え方となります。
 ⇒何か問題が起きた時など、対処する事のみに注力してしまうと、その場しのぎの対応となってしまい、また同じ問題が発生してしまいます。技術職も事務職も同じであり、再発防止策を常に考えるのが仕事、と徹底的に叩きこまれます。

3.みんなで考える
 「1人の100歩より、100人が1歩ずつ」の意識は非常に高いと思います。たった1人の天才が優れたアイデアを出し、企業を大きくするケースもありますが、トヨタ自動車では、若手社員を育てる意味も含め、自分の考えているコンセプトを何回もチームメンバーと話し、メンバーのアイデアを聴いてコンセプトの修正を図っていきます。
⇒みんなで考え、知恵を出し合い、よりよいものを創造するのがトヨタ自動車の意識だと考えております。

まだまだ、風土やルールなど紹介したい部分はありますが、トヨタ自動車の強さの秘密の一部分を紹介させてもらいました。

それでも何十万人という社員がいるため、1人残らず全員が同じというわけではないかもしれませんが、ほぼすべての社員が同じ考えを持っていると考えていただいてもいいのではないでしょうか。

最後にまとめていきましょう。
最強の秘密は、「このような人材を育てていくと外部環境に変化があったときに大きく舵を取っても全社員が対応することが可能になる」ことだと考えています。
やはり「企業は人なり」と言うぐらいですから、その企業にいる人をどう育てるかが最も重要であり、昔から人財を育成してきたからこそ、今の最強のトヨタ自動車があると思います。

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