源ヒカリ

みなもとひかり   詩誌のらねこポスト主宰。 おもに詩について。

源ヒカリ

みなもとひかり   詩誌のらねこポスト主宰。 おもに詩について。

最近の記事

時代のはざまを掘り起こす

 杉本真維子さんが担当している詩の時評「詩はいま」が全国の地方紙に連載されています(共同通信の記事で、新聞に毎月載るかどうかは地域の新聞によって違うみたいです)。わたしは沖縄の新聞で読んでいます。  前回の記事で萩原朔太郎賞の話からそれて「詩はいま」について書いた流れもあって、こういうかんじのあれです。前回の記事は下(↓)でございます。  4月の初回、冒頭で尾花仙朔さんとの縁にふれて「詩の未来をつなぐ」ということについて書かれています。  このかん、天沢退二郎さんらの訃

    • 萩原朔太郎賞、杉本さんに贈呈

       第31回萩原朔太郎賞は杉本真維子さんの詩集「皆神山(みなかみやま)」でした。  贈呈式が10月28日、群馬県前橋市の前橋文学館で開かれたそうです。萩原朔太郎賞は優れた現代詩を顕彰する賞で、対象は詩集です。主催は前橋市、萩原朔太郎賞の会。  贈呈式の記事がでていました。  地元の上毛新聞の記事ですね。  一部を引用します。  杉本さんは長野県出身の詩人です。2008年に詩集「袖口の動物」で第58回H氏賞、2015年に詩集「裾花」で第45回高見順賞を受賞しています。  前橋

      • 虚飾を破る

        先日の記事に書きましたが、ことしの名桜文学賞の作品募集が締め切られました。沖縄の名桜大学が主催する学生、一般を対象とした文学賞で詩部門もあります。 こちら(↓)の記事の、だいぶ下のほうです。 本年度の作品募集が締め切られたタイミングではありますが、昨年度の入選作品について書きたいと思います。 最優秀賞は琴森戀(こともり・れん)さんの「而今(にこん)」という詩でした。結果はこちら。 最優秀賞の「而今」という作品も素敵な詩なのですが、ここでは奨励賞に選ばれた上原陽子さんの詩「

        • クロアチアの詩人

          古本屋で詩歌の棚を眺めていたら、素っ気ない白い装丁の詩集が目にとまりました。クロアチア出身の詩人ドラゴ・シュタンブクの詩集でした。 シュタンブクは医師・医学研究者で、各国でクロアチア大使を歴任し、駐日クロアチア全権大使も務めました。 そして詩人でもあり、戦乱に翻弄されたクロアチアの歴史を背景にした詩が日本語でも詩集として出版されています。 1995年、ニューデリーでこの詩は書かれたのだそうです。シュタンブクがインド駐在クロアチア大使を務めていた頃です。 そして1995年

        時代のはざまを掘り起こす

          白鳥省吾賞まもなく〆切

          第25回白鳥省吾賞の〆切が10月31日(当日消印有効)です。 ヒット曲「星影のワルツ」や反戦詩「殺戮の殿堂」で知られる民衆詩派の代表的詩人・白鳥省吾(しらとり・しょうご、しらとり・せいご)の出身地、宮城県栗原市などが主催する文学賞です。 「自然」「人間愛」のいずれかをテーマとした詩を募集しています。 一般の部の賞金は最優秀賞が15万円、優秀賞が10万円などです。 応募要項は賞のホームページでご確認ください。 詩集賞はいくつか著名なものがありますが、詩を選考対象としている全

          白鳥省吾賞まもなく〆切

          歴程賞は大木潤子さん

          第61回歴程賞が発表されたようです。 大木潤子さんの詩集『遠い庭』(思潮社)に決まったとのこと。 第34回歴程新鋭賞は該当作がなかったそうです。 2日前にでていた朝日新聞さんの記事はこちら。 ずいぶんそっけない記事ですが、詳細はきっと記事の有料になっている部分に書いてあるのでしょう(わたしはお金がないので読めません)。 ちなみに、歴程賞の正式名称は、藤村記念歴程賞(とうそんきねんれきていしょう)というそうです。詩誌「歴程」が主催し、島崎藤村を記念して創設された文学賞です。

          歴程賞は大木潤子さん

          富田砕花賞に文月悠光さん

           第34回富田砕花賞に、文月悠光(ふづき・ゆみ)さんの詩集『パラレルワールドのようなもの』(思潮社)が選ばれました。  選考評では「抽象語や観念語を排して、たえず具体的な書き方をして、今、自分が生きている世界(=世相)にもしっかり眼差しが注がれている」などと評価されました。  ことしの応募作は115編だったそうで、最終候補は5冊だったとのこと。10月4日に芦屋市が発表しています。  『パラレルワールドのようなもの』は文月さんの6年ぶりに発行された第4詩集です。文月さんは19

          富田砕花賞に文月悠光さん

          襤褸とのらねこ

          今年、生誕120年をむかえた詩人、山之口貘に野良猫が登場する詩がいくつかあります。その一つが「襤褸は寝てゐる」という作品です。 上京し、差別と貧困のただなかで詩を追い求めた貘の日々に野良猫もいました。というより、貘の日々が野良猫に近かったのかもしれません。 ぼろを着て横たわる貘が見上げる空には星々が輝いていたようですが、何光年も先から届く光の一つ一つが貘には米粒に見えたようです。 そのようなすさまじい餓えの中でなお、これほどまでにやさしい言葉で詩を紡ぐことができたのはなぜ

          襤褸とのらねこ

          貘TRIBUTE、詩を募集中!

          詩誌「のらねこポスト」4号は2023年10月発行予定です。 今回はのらポス史上初の、特集を組みます。 テーマは今年、生誕120年を迎える山之口貘のTRIBUTE。 貧困のなかで豊かな詩語を紡ぎ「精神の貴族」と呼ばれた沖縄出身の詩人です。 Wikiはこちら。 貘へのオマージュ(敬意)を込めた作品を募集中です。 貘の詩のオリジナル解釈版リメイク、貘の詩や生き方から発想した詩、ご自身のフィルターを通して貘の姿を描いた詩、山之口貘に関連して感じたことや貘への思いを託した詩、などな

          貘TRIBUTE、詩を募集中!

          のらポス 02

          そして4月なのです。 詩誌「のらねこポスト」第2号を発行いたします。 発行日は4月15日を予定しています。 沖縄を拠点にした詩の雑誌です。 ・源ヒカリ ・キユナハルカ ・四之宮オイミャコン(myacchi) ・尚-nao の4人がメンバーです。 なんか見慣れない名前の人がいますね。 次回以降、ご説明いたします。 では第2号の表紙を見よ! のらポスの表紙は前回に引き続き、その辺をぶらついていたねこの皆さんにモデルになっていただいております。 今のところ、お断りされた

          のらポス 02

          現代詩手帖に載る

          ねえねえねえねえ!おい! のらポス、現代詩手帖に載っちゃいました。 載っちゃいましたよ! どーん!!! 詩誌月評(執筆は一方井亜稀さん)で評していただきました。 今月の詩誌月評は「とどまるもの、飛翔するもの」という題で、土地と言葉のかかわりについて論じられています。 と評していただいております。 のらポスとともに沖縄の古参詩誌「KANA」なども取り上げられております。 感謝!感激!!! ちなみにキユナハルカ「光」は次のような詩です。 この詩についても具体的に読み解き

          現代詩手帖に載る

          のらポス、解体に次ぐ解体。

          こんばんわ。 大間のマグロです。 解体といえばマグロですからね。 違うものを解体したら、事件になっちゃう(汗) まあそういうことですので、のらポスが絶賛発売中です。 詩誌です。 詩の雑誌ですが、いま焦点を当てているのは座談会です。 前回の続き、「のらポス」第1号掲載の、メンバー4人による座談会「ネガティブな極彩色」のご紹介です。 前回ご紹介したのは座談会の冒頭、ウクライナ情勢から本屋大賞(昨年の…)の話題についてでした。座談会の中盤以降は、詩に関する話題になります。なにせ

          のらポス、解体に次ぐ解体。

          のらポス、なおも解体。

          詩誌「のらねこポスト」第1号、絶賛発売中です。 少し間が開いてしまいましたが、解体を続けてまいります。 マグロのように。 大間の。 詩、散文をご紹介してきましたが、それらに加えてのらポスには座談会も掲載しています。 創刊号の座談会は「ネガティブな極彩色」というタイトルがついています。 のらポスメンバー4人が、ノーテーマで放談しております。 ロシアによるウクライナ侵攻から半年ほど経過した、昨年夏に開いた座談会でした。前半はウクライナ情勢に関する話題から入っています。 昨年の

          のらポス、なおも解体。

          月の瞳

          肌ふれあっても 温もりは無効化され 止まった鼓動 駆け巡る血 溢れる涙も 温かなものすべて 跡形もない 取り返しがつかない 昔話になった もはや信じる余地がない かつてひとつだったこと 自転と公転の狭間で 存在は無効化されて ただ透き通っていく 死体のわたし

          第3回名桜文学賞

          沖縄の冬は毎日のように曇り空が続きます。 そして強風が吹き続けます。 一番の冷え込みで10度を切る程度(今季は先日、国頭村奥で5度まで下がりました)ですが、つねにどばばばばと風がぶち当たってきますので、体感温度は実際より何度か低いようにも思えます。 ただ、時折日が差すと気温はうっかり25度を超え、夏日になったりします。 沖縄がいちばん冷え込むこの時期、万開を迎えるのがヒカンザクラです。 ソメイヨシノよりも色鮮やかなのが特徴です。 沖縄本島北部、名護市や今帰仁村に桜がたくさん

          第3回名桜文学賞

          天沢退二郎さんと沖縄

          天沢退二郎さんが1月25日、亡くなりました。 沖縄と天沢さんの関わりといえば、なんといっても沖縄在住者・出身者による詩集を対象とした山之口貘賞の選考委員を2003年から13年間、つとめたことでしょう。 その間に見いだされた受賞者は22人、作品は22詩集あります。この年代の山之口貘賞は、松永朋哉さん、瑶いろはさん、西原裕美さん、佐藤モニカさんら、20代から30代の若い世代に焦点が当たり始めた時期でした。 なかでも西原裕美さんの詩集『私でないもの』(私家版)が受賞した2013

          天沢退二郎さんと沖縄