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切りたい寸胴

ただひたすら切っていたい。

そんなときは人参を切る。トン、トン、トン……。適度な堅さもよい。刃物を使う緊張感のせいか、無心に切っているうちに永遠かと思えるような静寂が頭のなかに広がってくる。蘇ってくる嫌な記憶も全部、繊切りの彼方に葬られてゆく。

こんなときは、細長い三角形の人参よりも寸胴のほうが扱いやすい。人参を切り尽くしたら、玉ねぎをちょっとだけみじん切りにする。レンジ加熱できる容器のなかで、人参の鮮やかなオレンジ色の上に透ける感じの玉ねぎの白を散らす。悶々として切っていただけなのに、瑞々しいコントラストが目の前にある。

これに、ツナ缶のオイルをかけて、食べるのにちょうどよいやわらかさになるまでレンジ加熱する。別にかたくてもやわらかすぎてもいい。美味しさは揺らぎのなかにだってある。

これで甘味と油は揃った。ツナ缶の身もいれて、あとは好みの塩味とか酸味とか香辛料を相性良さそうな感じでかけて混ぜ合わせる。

これが、私の好きな人参サラダ。

切りたい休日にやると、リフレッシュするかもしれません。

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